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147 ドルゴの用事

前話のあらすじ:ドルゴにごみ箱の使い方を聞いた。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。

 俺たちはフィリーの研究室から居間に移動することにした。

 研究室は色々な物があってごちゃごちゃしている。

 だから、大勢で話しあうには向かないのだ。

 とはいえ応接室も、大勢での会談には向かない。


 居間に到着すると、

「お茶をいれてくるんだぜ!」

 ミルカが走っていった。

 それをニアとルッチラが追いかける。


 ドルゴは言う。


「ケーテから聞いておられるかと思いますが、詳細な報告をさせていただきたく」

「ふむ?」


 何の話だろうか。俺には思い当たるふしがない。

 横を見ると、エリックとゴランもわかっていなさそうだ。


「はて?」


 ケーテも首をかしげていた。

 それをちらりと見て、ドルゴが続ける。


「まずは遺跡保護委員会の結成、お慶び申し上げます」

「はい、ありがとうございます」


 エリックが頭を下げる。

 遺跡保護委員会については、ケーテが報告していたらしい。

 

「昏き者どもの動きが活発になっています。それにともない竜族と昏き者どもの争いが増えております」

「争いですか?」

「はい」


 ドルゴはうなずくと、机の上に地図を広げる。

 かなり詳細な地図だ。ところどころに赤い点が記されていた。


「ここ最近の竜族と昏き者どもとの間で戦闘が起こった場所を記してあります」

「結構ありますね」

「はい。全部で二十あります」


 多いのか少ないのか。判断するのが難しい。

 竜族の数が少ないことを考えれば、多いと言っていいかもしれない。


 その時、ミルカたちがお茶とお菓子を持ってきてくれた。


「ありがとう」

「いえいえ!」


 俺がお礼を言うと、ミルカたちは照れ臭そうにしていた。


「うまい!」


 ケーテはお茶を飲んで一言褒める。

 その様子を見て、ドルゴは一瞬注意しようとしたようだが、

「ありがとうだぞ!」

 ミルカがとても嬉しそうにしているからか、結局注意しなかった。


 ドルゴはかわりにミルカたち、俺の徒弟に頭を下げた。


「とても美味しいです。ありがとうございます」

「いえ、お粗末様です!」

 ニアが照れながら頭を下げた。


 それからドルゴは会話に戻る。


「昨日のことです。私は風竜王の宮殿を襲われた報復に昏き者どもを狩っていたのですが……」

「父ちゃん、そんなことしてたのか……」


 ケーテがつぶやくと、きっとドルゴは睨んだ。

 だが、何も言わずに続ける。


「その際、見逃せないものを見つけました」

 そして、ドルゴは鞄から謎の物体をとりだして机の上に置く。


「これは、まさか……」

 俺が驚くと、ドルゴは深くうなずいた。


「さすがラックどの。お気づきになられましたか。そう邪神の像です」

「フィリー。見覚えはあるか?」


 フィリーは父母を人質に取られて、邪神の像を作らされていた。

 その像を使って召喚された邪神の頭部は俺が討伐してある。


「わたくしが作った邪神の像は一つだけでございますれば……」

「なるほど」

「わたくしが作った像より精巧であると判断いたします」

 フィリーは風竜王の先王陛下とエリックの前なので、口調が丁寧だ。


「無理やり作らさせていたフィリーと違って、心を込めて作ったんだろう」

「わたくしもそう思います」

「この素材は愚者の石でいいのか?」

「はい」


 フィリーが断言するのだ。そうなのだろう。


「愚者の石の供給は滞っていないと考えたほうがいいだろうな」

 俺がそういうと、エリックもゴランもうなずいた。


「うむ。そう確定しても良いだろう」

「厄介なことになってきやがったな」


 ドルゴはさらに鞄に手を入れて何かを取り出す。


「その上こんなものまで……」

「がう!」


 ドルゴが机にそれを置くと同時に、ガルヴが吠えた。

 俺もそれには見覚えがあった。


「まさか、それは……ご禁制のハムでは?」

「……ハムですか?」


 ドルゴが怪訝そうな表情になる。

 ご禁制のハムというのは、メンディリバル王国での呼び名だ。


「我々の国の行政では、それをご禁制のハムと呼びならわしているのです」

「そうでしたか。ということは、用途もご存知ですよね?」


 俺はドルゴに、ご禁制のハムについて知っていることを話した。


 ご禁制のハムはミルカをさらおうとした悪党のカビーノの屋敷にあった呪具である。

 見た目はハムに似ているが、聖獣の肉に冒涜的な呪いをかけたものだ。

 王都を守る神の加護を破る材料になったり、邪神の召喚の際に用いられもする。


 メンディリバル王国では、所持しているだけで、死刑になりかねない。


「我々は、ご禁制のハムを非常に危険視しております」

「邪神の像とご禁制のハム。同時に所持していたということは……」

「邪神召喚を狙っていると考えていいだろ」


 それもかなり計画は進行していると考えなければなるまい。

 ドルゴが言う。


「邪神を召喚するには、さらに膨大な量の呪いが必要になります」

「それはそうでしょうね」


 昏き者どもによって、人族が襲われたりする可能性が増える。

 警戒しなければなるまい。


「そこで、昏き者どもは竜族に目を付けたようです」

「竜にですか?」

「はい。人族より力が強く、長命な竜を冒涜すれば、一頭でも相当な量の呪いを得られますからね」


 どうやら、竜族は昏き者どもに狙われる理由があるようだ。

竜族は狙われているようです。

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