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140 夕食前の団欒とキャラ紹介

前話のあらすじ:王都に帰ってきた。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。

 ケーテの宮殿を昏き者どもから取り戻した後、ケーテは俺たちを送って王都に来た。

 そのころにはすでに夜明けごろ。俺たちは、一晩中眠らなかったのだ。

 とりあえず、ケーテは俺の屋敷で仮眠してから帰ることになった。


 エリックは王宮に、ゴランは自分の屋敷に戻っていった。

 軽く寝て、すぐ仕事をするのだろう。頭が下がる。

 俺はガルヴと一緒に、昼まで寝ることにした。


 俺が目を覚ますと、夕方になっていた。予定より長く眠ってしまった。

 戦闘と移動で疲れていたのかもしれない。


 俺とガルヴが居間に行くと、みんながいた。

 俺より先に起きていた、ケーテが言う。


「人族の家にお泊りしたのは初めてなのである」

「それはよかったぞ。折角だし夜ご飯も食べて行くといい」

「よいのか?」

「もちろんだ」


 ケーテは嬉しそうだ。太い尻尾が上下に揺れる。


「ケーテさんは苦手な食べ物とかあるのかい?」

「苦手な食べ物……」


 俺の徒弟ミルカの問いに、ケーテは真剣な表情で考え込んだ。

 ミルカは料理担当の徒弟なのだ。


 俺の同居人にして、天才錬金術士のフィリーが真面目な顔で言う。


「フィリーの読んだ文献には……。竜族は肉が好きと書いてあったのだ」

「なるほどー。フィリー先生、勉強になるんだぜ!」


 ミルカはフィリーのことを先生と呼ぶのが嬉しいようだ。

 フィリーは錬金術だけでなく、あらゆる学問に精通している天才だ。

 それゆえ、俺の徒弟たち、ミルカ、ルッチラ、ニアの家庭教師をお願いしてある。


「ああ、肉はうまいものが多いのである」


 ケーテは初めて王都に来たとき、肉料理の屋台で無銭飲食していた。

 肉料理は好きなのだろう。


「我は肉食であるのは間違いないのだ。普段はそこらの魔獣を捕まえて食べているのだぞ」

 そんなことを言いながら、ケーテは狼のガルヴのお腹を撫でていた。


「くーん、きゅーん」

「ガルヴのことは食べないから安心するがよいぞ」


 ガルヴはお腹を見せてケーテに媚びている。

 馬ぐらい大きいが、ガルヴはまだ子狼なのだ。

 そして普通の魔獣よりはるかに格の高い霊獣である。


「ケーテさんは、肉以外には何が好きなんだい?」

「甘いお菓子も大好きであるぞ!」

「ケーテはたくさん食べるからな。相当多めに頼む」

「わかったんだぜ」


 台所に向かうミルカをニアとルッチラが追う。


「私もお手伝いします!」

「ぼくも手伝うよ」

「ありがたいんだぜ!」


 ルッチラが台所に行ったことで、ゲルベルガさまが残った。


「ココッ」

 一声鳴くと、トトトと走ってきて、俺のひざにぴょんと跳ぶ。


 ゲルベルガさまは、白い羽と赤いとさかを持つ普通のニワトリの外見をしている。

 だが、その正体は神鶏さまだ。

 霊獣などより格が高い。半神のようなものだ。

 ルッチラの一族の氏神様のような存在であり、鳴き声には特別な力がある。


「ゲルベルガさま、どうしたんだ?」

「ここ」


 ゲルベルガさまは甘えるように、俺に体を押し付ける。

 そんなゲルベルガさまを優しく撫でた。


「わふ」

「タマも撫でて欲しいのか?」

「わふぅ」


 フィリーの足元で寝ていたフィリーの愛犬、タマも俺のところに寄ってきた。

 俺はゲルベルガさまを左手で抱えながら、タマも撫でる。

 タマは大型犬だが、ガルヴに比べたらだいぶ小さい。

 そして、ガリガリに痩せている。


「タマも、少し太って来たか?」

「わふ」

「解放されたばかりに比べたら少し太ったのだが……まだまだやせているのだ」


 フィリーもタマを心配しているようだ。

 タマは忠犬だ。

 餌をもらえず、家族にも会えない中、一頭で屋敷にとどまった。

 それも昏き者どもが占拠している屋敷にだ。

 フィリーのことが心配で、ずっと雨ざらしの庭で助けを待っていたのだ。

 尊敬すべき犬と言えるだろう。


 俺がタマを撫でていると、ケーテが近づいてきた。

 ケーテは馬のように大きなガルヴを両手で抱いていた。

 相当な腕力だ。


「……きゅーん」


 ガルヴが助けを求めるような目でこっちを見ていた。

 そんなことは気にせず、ケーテは言う。


「ガルヴにタマと、ロックの家には犬がいっぱいおるのであるな」

「……犬科なのは間違いないな」

「ガルヴは狼でありますよー」

「へー?」


 ニアの姉にして狼の獣人族のシアの言葉にケーテは首を傾げた。

 ケーテにとっては、狼も犬も大した違いはないのだろう。


「ガルヴは霊獣の狼だから、我らの遠い遠い親戚のようなものであります」


 シアは十五歳の若さでBランク冒険者になった優秀なヴァンパイアハンターだ。


「ガルヴは大きいから、あまり抱えないほうがいいかも知れないでありますよ」

「そうなのであるな」


 ケーテはガルヴを降ろすと、タマを撫でる。


「成犬のガルヴも可愛いが、子犬のタマも可愛いのである」

「タマは子供ではないぞ?」


 俺がそういうと、ケーテは驚いたようだ。

 大きさの比率から言えば、ケーテの言うとおりだ。


「そうなのであるか?」

「うむ。ガルヴが子狼で、タマが成犬だ」

「不思議であるなー」


 そんなことを言いながら撫でている。


「その鳥もかわいいのである」

「ゲルベルガさまは、神鶏さまだぞ」

 ケーテにもゲルベルガさまの偉大さを教えておいた。


「ゲルベルガさまは、偉大なのであるな!」

「ここぅっ」


 ゲルベルガさまは、俺の肩の上に乗り羽をバタバタさせた。

 これはゲルベルガさまなりの照れ隠しである。


「ゲルベルガさまは、元気ね」

 ゴランの娘Fランク冒険者のセルリスが、ゲルベルガさまを抱きかかえる。

 セルリスは戦闘力はBランク相当だが、冒険者になりたてなのだ。


「こぅ」

 セルリスに抱きかかえられると、ゲルベルガさまは大人しくなった。


「夜ご飯の準備ができたぞー」

 そのとき、居間にミルカの声が届いた。

章の初めなので、キャラ紹介を兼ねています。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 犬なのにタマ…覚えにくい(笑) タマは、ドラゴン平気なんだね
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