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139 王都への帰還

前話のあらすじ:遺跡保護委員会が発足した。


今回で三章は終わりです。

『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。



 相談を終えた後、ケーテが俺たちを送ってくれることになった。

 ケーテの家は王都からかなり遠い。


「ラックたちは、泊っていけばどうであろうか?」


 ケーテの家の近くに来た時点で夕暮れ時だった。

 そのあと、ヴァンパイアたちを退治して、後片付けもした。

 ドアの修理もして、相談もした。

 もう、真夜中、夜明けまで数時間といったところだろう。


「申し出はありがたいが……」

「そうだな。泊まって帰ったら、色々と心配をかけるからな」


 俺はともかく、エリックは国王でゴランはギルドのグランドマスターだ。

 伝言もせずに外で一泊しては大ごとになりかねない。


「そうか、残念である。我が送っていこうぞ」

「ケーテ助かる。ありがとう」

「気にするでない!」


 ケーテは機嫌よく羽をバタバタさせていた。

 俺たちがケーテの背に乗ると、すぐに飛び上がって一気に加速する。


「徒歩で三日。馬でも一日から二日ってところか」

「替え馬を用意できれば短縮できるが……」

「我なら三時間程度である」


 やはり、ケーテはとても速い。

 俺はケーテの背の上から話しかける。


「人に変化するのって難しいのか?」

「いや、そうでもないのである」

「そうか。これから王都に来るときは人の姿で頼むぞ」

「わかっておる」


 それを聞いていたエリックが言う。


「遺跡保護委員会も作ったことだし、臨時のものではなく正式な身分証明書を発行しよう」

「お、頼むのだぞ!」


 ケーテは嬉しそうだ。


「身分証があれば、いつでもロックの家に遊びに行けるのである」

「いつでも遊びに来ていいし、通話の腕輪を使っていつでも連絡してくれてもいい」

「うむうむ、わかったのである!」


 ケーテはご機嫌に飛び続け、あっという間に王都近くに到着する。

 王都の民が怯えないよう、少し離れた場所に降り立つ。


「さて……。人の姿になるとするか」


 俺たちがその背から降りると、ケーテは人型になる。

 当然、全裸だ。そして恥ずかしがることもなく、服を着ていく。


「折角だし、ロックの家に行こうではないか」

「それはいいが……。宮殿を空けておいていいのか?」

「かまわぬのだ。年単位で空けるのも普通であるぞ」

「そんなものか」


 竜族の時間感覚は人とはだいぶ違うようだ。

 ゴランを先頭に王都に入る。ゴランの従者というていで何とか衛兵は誤魔化した。


「あまりこういうのはよくないのだがな……」

「とはいえ、王であることを明かすわけにはいかないだろう」

「うむう。ケーテと同じく俺のための身分証も作っておくべきか……」


 エリックは少し考えこんでいた。


 東の空が少し赤くなり始めたころ、俺の屋敷に到着した。

 こんな時間だというのに、みんなが出迎えてくれる。


「何事もなかったか?」

「はい、平和でありました」


 少し眠そうなニアが笑顔でそう言った。

 その後、シアにセルリス、俺の徒弟たちとフィリーを連れて居間に行く。

 ゲルベルガさまとガルヴもついて来てくれた。


 俺は全員に経緯を説明する。説明を終えた後、魔法の鞄から装置を取り出す。


「フィリー、これを見てくれ」

「む?」

「例のゴミ箱だ」

「これは、見事な機械なのだ」

「この装置で魔装機械を作ることは可能か?」

「可能だろう。だが、材料をあつめるのが難しそうだ」

 魔装機械をこちら側の戦力としてそろえるのは難しいとのことだ。


「昏き者どもがこれ以上魔装機械を増やせないのならそれでいい」


 エリックは満足そうにうなずいた。

 ひとまず昏き者どもの戦力増強を防げたと判断していいだろう。


「問題は、昏竜イビルドラゴンであろう」

「それに至高の王も、無視できねーな」


 エリックとゴランの懸念はわかる。


「それも大事だが、王国内に入り込んでいる昏き者どもに通じている者に関する情報はないのか?」

「すまぬ。まだわからぬ」

「そうか」

「枢密院が総力を挙げて調べているのだがな……」

「冒険者ギルドの方でも、まだつかみ切れてねーな」


 それを聞いていたケーテは自分の尻尾を体の前に持ってくる。

 尻尾を両手で撫でながら言う。


「ふむぅ。人族は大変なのであるなー」

「そうなんだよ」

「だが、竜族はそんなに複雑ではないのである。頼りにしてくれてよいのである」

「それは助かる」


 ふふんとケーテはどや顔をした。

 そのとき、ミルカがぴょんと立ち上がる。


「そうだ、お茶を入れてくるぞ!」

「私も手伝います!」

「あ、ぼくも!」


 ミルカとニア、ルッチラが台所に走って行った。

 徒弟たちは、働き者だ。


「ここぅ」

 ゲルベルガさまは俺のひざの上に乗る。


「ゲルベルガさま。お疲れ様です」

 そういって、俺はゲルベルガさまを撫でまくった。


「可愛いのである」

 ケーテもゲルベルガさまが気に入ったらしい。

 俺の隣に来て撫で始めた。


 ガルヴはどうしているのだろう。

 ふと気になって、探してみると、部屋の隅っこにいた。


「ガルヴ。おいで」

「がうー」

「まだ、ケーテが怖いのか?」

「がう!」


 怖くないというかのように、俺とケーテの近くまで歩いてきた。

 俺はそんなガルヴを撫でてやった。


「ガルヴも可愛いのである!」


 ケーテもガルヴを撫で始めた。途端にガルヴは、びくりとした。

 やはり怖いのかもしれない。


「ガルヴ。ケーテは怖くないぞ」

「がう」

「そうである。我は怖くないのであるぞ」


 そういって、ケーテはガルヴを抱きかかえた。

 人型でも竜。力はものすごく強いらしい。


「がう!」


 ガルヴは驚いたようだ。

 ガルヴはまだ子狼だが、馬に近いぐらい大きい。

 抱きかかえられたことが滅多にないのだろう。


「ガルヴはモフモフであるなー」

「がうー」


 ガルヴは抱きかかえられたのが嬉しいようだ。

 尻尾を振っている。

 仲良くなれたようでよかった。


「ケーテ、とりあえず帰るにしても、一旦眠ってからにした方がいい」

「少し眠いから、助かるのだが……。よいのであるか?」

「いいぞ」

「嬉しいのである!」


 ケーテの背中からはえた小さな羽がパタパタ動いた。

 気にしていなかったが、ケーテは人型になっても羽があるらしい。

 ケーテの尻尾もひくひく動いている。

 本当はばしんばしんと床を叩きたいのだろう。人の家だから遠慮しているのだ。

 とても行儀のよい竜である。


「お茶を持ってきたぞー」

「お菓子も持ってきましたー」


 ミルカ、ニア、ルッチラがお茶とお菓子を持ってきてくれた。

 そのお茶とお菓子をケーテは飲んで食べた。


「うまいのである! さすがロックの屋敷であるな! 腹が減っては眠れないのである」


 ケーテは機嫌よくそう言った。

無事、三章を終えることができました!

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