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138 遺跡保護委員会

前話のあらすじ:昏き者どもは竜の魔法技術を使っているらしい。


あと1話で三章は終わりの予定です。

 昏き者どもが使っているのは竜族の遺跡の装置だけでない可能性が出てきた。

 竜族の魔法技術も使っている恐れがある。


「まさかとは思うが……、竜族に昏き者どもに協力している奴らがいるってことか?」

「ロック、なにを言うのである。誇り高い竜族が、そんなことするわけないのであるぞ」


 ケーテはそういうが、同じ種族でも色々だ。

 中には昏き者どもに協力する奴がいるかもしれない。


 エリックも深刻な表情になる。


「考えたくもないことだが、人族にも昏き者どもに協力している奴がいるかもしれぬのだ」


 人族に昏き者どもに与しているものがいるかもしれない。

 それは我々の懸念事項だ。

 人族の中にいるどころではない。王国中枢に近いところにいる可能性が高い。

 今、エリック直属の枢密院が調べている真っ最中だ。


 エリックの言葉を聞いて、ケーテは驚いた。

 鼻息が荒くなって、部屋の中につむじ風が吹いた。


「まさか! 昏き者どもと人族は因縁の相手であろう?」

「そのとおりだ」

「なー? ロックもそう思うであろう? 昏き者どもの支配する世界では人族など食料になるだけであるぞ?」

「俺もそう思うんだがな……」

「そうであろう」

「だが、実際にいる可能性が高いから、困っている」

「……ほんとうであるか?」

「残念ながらな」

「そうなのか……」


 ケーテは信じられないという表情だ。

 素直なケーテには理解できないことなのだろう。

 正直、俺も昏き者どもに人族が協力する合理的な理由はわからない。


「だけどよ、人族より竜族の方が賢いんだろう? そんな竜族なんていないんじゃねーか?」

「そ、そう思うか? ゴラン」

「おお、それに人族より竜族の方がずっと少ないしな」

「数は関係ないであろう?」

「いや、大ありだぞ。数が多くなれば多くなるほど、おかしな奴も増えるってもんだ」

「そうなのか。いや、そういうものかも知れぬ」


 真面目な顔でそうつぶやくと、ケーテは樽からお茶をごくりと飲んだ。

 俺もケーテがいれてくれたお茶をどんぶりから飲む。

 やはり、ケーテのお茶はうまいと思う。


 すると、エリックが真面目な顔になり、居住まいをただした。


「ケーテ、いやケーテどの」

「ど、どうしたのだ、エリック。いやエリックどの」


 ケーテが慌てている。

 慌てたからと言って、エリックの言い方を真似することはないと思う。

 それを気にせずエリックは続ける。


「ラックの友、エリックではなく、メンディリバル王国の王エリック・メンディリバルとして申し上げる」

「お、おう。ならば、我もロックの友ケーテではなく、風竜王ケーテ・セレスティスとして聞くのである」

「ん? 風竜王?」


 ちょっと聞き流せないことをケーテが口走った。

 だが、エリックは平然と続ける。


「竜族と、メンディリバル王国との間で協力関係を築きたい。どうであろうか」

「ふむう。そうじゃのう。風竜以外に関しては、我の一存では何ともいえぬなー」

「風竜については、ケーテの一存で何とかなるのか……」


 俺がそうつぶやくと、ケーテは真面目な顔で言う。


「いや、風竜に関しても先代と先々代である父と祖父に一応言わねばならぬが……反対はせぬであろう」

「そうか、それは助かる。もし竜族と協力関係が築けなくとも、ケーテどのとは仲良くしていきたいと考えている」

「うむ。我もそう思うぞ!」


 ケーテは尻尾をビタンビタンと床に打ちつけた。

 いまのケーテは巨大な竜の姿だ。とても大きな音が鳴る。


 俺は念のために言う。


「協力することには賛成だが、公にしない方がいいんじゃないのか?」

「なぜだ?」

「さっきも話に出てきたが、王国中枢にも昏き者どもに通じている奴がいる可能性があるからな」

「なるほど。秘密の同盟の方が、相手は対処しにくいかもしれぬのう。どうじゃ、エリックよ」

「そうだな。その方がいいだろう」


 ケーテは真剣な表情で腕を組む。


「どうした?」

「いや、なに。同盟の名前を考えなければと思ってな」

「それは、別にいいんじゃないか?」

「何を言う、大事なことである」


 竜族にとっては大切なのかもしれない。それなら好きにしたらいいと思う。

 しばらく考えた後、ケーテはまた尻尾をバシンとする。


「よし、遺跡保護委員会でどうであろうか?」

「それで構わぬ」


 エリックが笑顔で即答した。

 名などどうでもいいと思っているのか、本当に気に入ったのかはわからない。


「よし、じゃあ、遺跡保護委員会で決まりである。組織表は後で作っておくのであるぞ!」

「頼む」


 そういうと、ケーテとエリックは握手をした。巨大な竜と人族の握手だ。

 握手というよりもエリックがケーテの指先を握るといった感じである。


 それでも、ケーテはものすごく嬉しそうだった。

 そんなケーテに尋ねる。


「ケーテは風竜王だったのか?」

「そうであるぞ?」

「なんで言ってくれないんだよ」

「聞かれなかったのでな」

「それでも……」

「聞かれもしないのに、我は王ぞ? なんて恥ずかしくて言えないのである」

「わかる」


 エリックが同意している。王とはそんなものらしい。


「別に恥ずかしいことではないだろう? 立派な仕事だ。民のために頑張っているんだからな」

「ロックだって、英雄ラックであることを隠していたではないか」

「いや、それは……」

「民のために頑張って、大賢者にして、我々の救世主、偉大なる最高魔導士になったのであろう? 恥ずかしくないはずである」


 そう言われたら言い返せない。


「いや、でも、俺は大公だから、ばれたら政治的な闘争に……」

「大公より王の方が巻き込まれるのだぞ?」

「……それは、そうかもしれないな」

「ふふん」


 ケーテはどや顔をする。


「ラック、一本取られたな」

 そういって、ゴランがガハハと笑った。

ケーテは王様でした。

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