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133 ケーテの家での戦い

前話のあらすじ:ケーテが魔装機械をふきとばした。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。

 俺は安心したようなことを言うエリックとゴランを見た。

 口調とはうらはらに、全く油断していない。

 鋭い目で周囲を警戒している。


 だが、ケーテは俺の横にドタドタ来ると嬉しそうに言う。


「魔装機械には、暴風ブレスが結構効くのだな!」

「ケーテの暴風ブレスの威力が高すぎただけだろう」

「ぎゃっぎゃっぎゃ! それほどでもあるかな? そうかもしれないのう」


 魔装機械は火炎、風に関わりなく、魔法防御力が高いのは確実だ。

 その魔法防御を一気に抜いて仕留めたのだから、申し分ない威力だ。


 それはともかく、ケーテは気を抜きすぎだ。


「ケーテ、安心するのはまだ早い。警戒を続けてくれ」

「ぎゃ? 大丈夫であろう?」

「まだ、ケーテの家の中には敵がいるだろう?」

「ロックの炎が焼き尽くしたのだ! 家具の心配はあるが……。敵はもう大丈夫であろう」


 生まれついての絶対的強者ゆえか、ケーテは楽観的なようだ。

 俺は周囲を警戒しながら、ケーテに言う。


「ゴブリンや下級ヴァンパイアどもならともかく、まだアークやロードだっているだろう」

「いや、ロック。さすがにアークやロードごときならば生き延びてはおるまいよ」

「そうだぞ。ケーテは楽観が過ぎるが、ロックは悲観的過ぎるんじゃねーか」


 エリックとゴランの言いたいことはわかる。

 だが、あの火炎を生き延びられないような奴は、そもそも敵ではない。

 片手間に倒すのもたやすいだろう。

 そして、どんな種であれ、あの炎を生き延びたのなら警戒する必要はある。


「ケーテ、忘れてないか? 昏竜イビルドラゴンってのがいたんだろう?」

「そうだったのだ。でも気配はないのだ」

「宮殿の奥で寝ているのかもしれない」

「いくら昏竜でもあの火炎で眠ったままというのはあり得ないと思うのである」


 起きたとしても出てくるとは限らない。

 息をひそめて待ち伏せしているかもしれないのだ。


「とりあえず、宮殿の中に入ろう。しんがりはケーテが頼む」

「わかったのである」

「ブレスは控えてくれ」

「わかっているのだ。爪と牙で、充分我は強いのである」


 俺たちは、宮殿の中を慎重に進んでいった。

 道幅が広いので、俺、エリック、ゴランは横三列で進んでいく。


「そこはトイレであるぞ!」

「そうか」

「そっちは台所である」

「わかった」


 ケーテは後ろから、丁寧に教えてくれる。

 だが、トイレだろうが台所だろうが、敵が潜んでいる可能性があるのだ。

 確認しないわけにはいかない。


「火炎の被害はあまりないな」

「さすがは竜の宮殿ということであろうな」

「お、メダルが落ちてるぞ。ヴァンパイアロードが焼けたんだな」


 たまに灰とメダルが落ちているが、それだけだ。

 動いている敵とはなかなか遭遇しない。


「やはり、敵は全部燃えたんじゃないかのう?」

「だといいんだがな。ケーテ、ゴミ箱があるのはどこだ?」


 天才錬金術士のフィリーが魔装機械の製造装置ではないかと推測したのがゴミ箱だ。


「ごみ箱なら、突き当りを右である」

「了解」


 足早に、だが慎重さを忘れないように進んでいく。


 突き当りを曲がろうとした瞬間、斬撃が俺の首を狙ってきた。

 思いっきりのけぞり、かろうじてかわす。


 ヴァンパイアハイロードだ。

 俺たち三人相手に、鋭い斬撃をふるってくる。

 その後方から、さらにロードらしきヴァンパイアが五体突っ込んでくる。


「あの火炎を生き延びたか!」


 エリックの声はどこか嬉しそうだ。

 邪神によって強化されたロードなのかもしれない。


「ロードでも油断するなよ!」

「わかってる!」


 エリックもゴランもヴァンパイア相手に油断なく剣をふるう。

 一人当たり二体のヴァンパイアを相手にしなければならない計算だ。

 それでも、エリックもゴランも圧倒している。


 俺も魔神王の剣で応戦した。

 パーティーでの戦いでは、あくまでも魔導士の役割は防御がメインになる。

 室内では特にそうだ。

 圧倒的火力で薙ぎ払える場面というのはそうはない。

 魔法の威力を抑えることは可能だ。

 だが、そんなことをするぐらいならエリックたちに任せた方が早い。


「わ、我は……」

「ケーテは後ろを警戒してくれ」

「わかったのである!」


 ケーテも、魔導士と同じく、室内では攻撃面で活躍しにくい。

 火力が高威力で、広範囲すぎるのだ。


 俺と剣をかわしていた、ヴァンパイアハイロードの目が怪しく光る。

 ヴァンパイアの種族特技、魅了だ。

 同時に、ロード五体の目も光った。

 力を合わせて、威力を高めているのだろう。


「六体がかりだろうが、魅了ごとき、効くわけねーだろうが」

「ふん。たかが魅了、恐るるに足らず!」

「一瞬、くらっと来たじゃねーか!」


 エリックも余裕のようだ。だが、ゴランが怖いことを言う。

 冗談だとわかっていても、怖いのでやめて欲しい。


「ゴラン、しっかりしろよ!」

「いや、大丈夫だ。安心しろ」


 高レベルだが、ゴランは戦士。俺たちの中では一番魔法耐性が低い。

 それでもハイロードとロード五体の力を合わせた魅了程度では大丈夫なはずだ。

 だが、ハイロードが複数いれば、ゴランとて万一ということはある。


「魔法耐性を上げるアイテムを用意すべきかもしれないな」


 俺が剣を交えながら、そんなことを言った瞬間。


 ――ゴゴゴオオオオオオオ


 暴風ブレスが、俺たちを襲った。

おっさんたちは暴風ブレスを食らってしまいました。

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