表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

129/303

129 ケーテの証言

前話のあらすじ:ケーテが空き巣被害にあった。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。

 俺はそれなりに長い間、冒険者をしていた。

 そんな俺でも、魔装機械というのには遭遇したことはない。

 非常にレアなものだと考えていいだろう。


「ケーテ。その魔装機械っていうのが、大量にいたのか?」

「そうである」

「大量ってどのくらいだ?」

「確認しただけで三十機はいたのだ。きっとまだいるのだぞ」

「三十か……」


 三十は多いのか少ないのか、判断が付きにくい。

 一機の強さがどのくらいかによって脅威度が変わる。

 魔装機械はゴブリン並みなのか、ヴァンパイア並みなのか。


「で、その魔装機械っていうのは、どのくらい強いんだ?」

「三十機に囲まれて襲われたので、二十機壊したのだ」

「ほう? さすがケーテだな。だが、その状況で退いたのか?」


 ケーテは満身創痍には見えない。

 二十機を壊せたのなら、残り十機も壊せるのではないだろうか。

 そう思って聞いたのだが、ケーテはもじもじし始めた。


「……」

「どうした?」

「……すまぬ。我は嘘をついた。倒したのは一機である」

「なんでそんな嘘を?」

「……見栄を、我は見栄を張ってしまったのだ。すまぬ」

「……そうか。わかった」


 しょんぼりとしながら、白状するケーテを責める気にはなれなかった。

 だれでも見栄を張りたいときはある。

 だが、一機を二十機と言い張るのはさすがに盛りすぎである。

 二十機倒したと言いたいなら、せめて十五機ぐらいは倒していて欲しかった。

 ケーテは加減というものを知ってほしい。


「ケーテさんが一機しか倒せなかったというのは……。相当強いでありますね」

「その魔装機械っていうの一機で、Aランク冒険者のパーティーが必要かも知れないわね」


 シアとセルリスが深刻そうな表情でつぶやくように言う。

 シアとセルリス、そしてニアとガルヴはケーテと俺が戦っているのを見ていた。

 だから、ケーテの強さは知っているのだ。


「うむ。とてもやばい奴だったのだ」

「具体的にはどうやばいんだ?」

「とにかく硬くてな。我の火炎ブレスもあまり効いていなかったのだ。火炎ブレスを食らっても、ガシガシ動いていたぞ」


 ケーテの火炎ブレスは俺たちも食らった。相当な威力だった。

 大抵の魔物は耐えられまい。

 ヴァンパイアロードですら、無事では済まないだろう。


「……ガシガシ動いていたのか?」

「うむ。平気に見えたのだ」


 ケーテの火炎ブレスをうけても平気ということは、火炎耐性が異常に高いということだ。

 俺が戦うときも火炎は使わないことにしよう。


「ケーテの、爪と牙はどうだ?」

「一撃では倒せなかったのだぞ。数回も殴らねばならなかった」

「……それは本当に凄いな」


 ケーテは当然、力が強い。爪も牙も鋭い。

 一撃食らえば、大概の魔物は耐えられまい。


「魔装機械が恐ろしく頑丈なのはわかった。攻撃面はどうだ?」

「うむ。大きな音ともに小さい何かを飛ばしてきたのだ」

「小さい何か?」

「金属の小さい何かだ。ものすごく速くて目にもとまらぬほどだ」

「ふむ」

「めちゃくちゃ痛かったぞ」


 そして、ケーテはローブの袖をまくって左手を見せた。


「これを見るのだ」

「うん? 少し赤いな」

「腫れているのだ……。魔装機械の恐ろしい攻撃でこうなったのだ……」

「……それは、大変だったな」


 かすり傷というのも大げさなほどだ。蚊に刺されても、もう少し腫れる。

 まったくもって無事にしか見えない。

 ケーテは思いのほか痛みに弱いのかもしれない。

 絶対強者の竜種として生まれて、害されることなど全くなかったのだろう。


「魔装機械の攻撃が激しくて、異常に堅いうえに、ヴァンパイアハイロードが襲ってきたからやばいと思って逃げ出したのだ」

「なるほど。ヴァンパイアハイロードには魅了があるからやばいな」


 ケーテが操られたら、大きな被害が出るだろう。


「うむ。まあ、我はハイロードごときの魅了には抵抗できるがな!」

「そうか」


 ケーテは自信満々だ。

 見栄を張っている可能性もある。話半分に聞いておいた方がいいだろう。


「それにしても王都によく入れたな。衛兵にはなんていったんだ?」

「えいへい?」

「門のところにいただろう?」

「ああ、我は壁を登って越えてきたから、門は通っていないのだ」


 王都の城壁は非常に高い。高さも厚みも成人男性の身長の五倍ぐらいある。

 それを登るとは、やはり身体能力は異常に高いようだ。


「それで無銭飲食したのか?」

「いや、違うのだ。ロック。我の言い訳を聞いてくれ」

「聞こう」

「ロックの気配をたどって、ここに向かう途中にだな。ものすごくうまそうな匂いに気づいたのだ」

「それで?」

「何の匂いか気になるであろう? だから、その匂いの元に行って、じっと見つめていたのだ」


 恐らく屋台か何かだろう。


「見つめていたら、『お嬢ちゃん、どうだい? 食ってかねーかい? 絶品だぞ』って親切にも言ってくれたのでな、お言葉に甘えて食べまくったのだ」

「なるほど。ケーテ。言っておかねばならないことがある」

「なんだ?」

「今回のことでわかったと思うが、それはお金を払って買って食べていくかい? って意味だぞ」

「人族は言葉を省略しすぎる。恐ろしいことだ。一言もお金を払えと言ってなかったのだ」

「……それは災難だったな」


 ケーテに人族の生活について説明したほうがいいのかもしれない。

ケーテは金を払って物を買うという意識が低いようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ