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【web版】ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。  作者: えぞぎんぎつね
三章

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128 ケーテの用事

前話のあらすじ:ケーテは雌だった。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。

 どや顔のケーテは、嬉しそうに尻尾を地面にびたんびたんとさせる。

 結構大き目の音が鳴った。


「ケーテ、とりあえず、尻尾を落ち着かせてくれ」

「お、すまぬ」


 そういって、ケーテは自分の尻尾を前に持ってきて自分の両手で抱えた。

 尻尾は獣の尻尾ではなく、ドラゴンの尻尾だ。

 太くて長くて、鱗が生えている。


「立ち話も何だ。中に入ってくれ」

「お、よいのか?」

「外にいる方が目立って困る」


 俺はケーテを連れて屋敷に入る。


「ほほー。ここがロックの家であるかー」

「そうだぞ。家の中で尻尾をバシンバシンするなよ。床が壊れる」

「わかっているのだ」


 ケーテは興味があるのか、しきりにきょろきょろしていた。

 俺はケーテを居間へと連れていく。応接室もあるが、用意が何もないのだ。


 居間にはセルリスとシアがいた。


「あれ? ロックさんのお客さまかしら?」

「……いや、ケーテさんでは? 匂いがそうであります」


 セルリスは気付かなかったが、シアはすぐに気が付いた。


「シアもニアも鋭いのう! さすがである」

「獣人は嗅覚が鋭いでありますよ」

「がっはっは! すばらしいことだ!」


 ケーテは豪快に笑う。

 竜形態のぎゃっぎゃっぎゃという笑い声が、人型ではがっはっはになるのだろう。


「それに比べて、ロックは我を見ても気付かなかったのだぞ! 我は悲しい」

「いやいや、ほとんどの人族は視覚を重視するからな。それだけ姿が変わればわからなくて当然だ」

「ふむー。不便なものであるな」


 俺はミルカも呼んで、改めてケーテのことを紹介する。

 ルッチラとミルカ、フィリー、それにタマは、ケーテとは初対面だ。

 互いに自己紹介を済ませた後、ミルカが言う。


「本当にロックさんの知り合いだったんだな!」

「そうであるぞ」

「それは悪いことをしたな!」


 俺はミルカの頭を撫でる。


「いや、ミルカは正しい。あの対応で完璧だ」

「そうかい?」

「この屋敷にはゲルベルガさまがいるからな。知らない奴は入れたらだめだ」

「わかったぞ。これからもそうする!」

「頼んだ」


 俺の屋敷にはゲルベルガさまやフィリーがいる。

 それに錬金装置や秘密通路まで存在する。

 誰がいつ狙いに来るかわからない。


 今日はセルリスとシアがいたが、ミルカだけの時も多い。

 やはり、門は開けないのが正解だ。


 俺に頭を撫でられているミルカを見て、フィリーが言う。


「だがな、ミルカ。貴族の家の家人、徒弟としては、あの口調はよろしくないのだぞ」

「そうかい? そんな気もしてたんだけど、おれはこの話し方しかできないからなー」

「任せるがよい。明日からしっかり教えてやるのだ」

「本当かい? 頼んだよ、先生!」

 ミルカの先生に対する口調も、ふさわしいものではない。


「教えがいがありそうである」

 フィリーはやる気になっているようだった。


 それからニアとルッチラがお茶とお菓子を持ってきてくれた。

 徒弟としての仕事と判断したのだろう。


「おお、ありがとう!」


 ケーテはお菓子をパクパク食べる。

 三万ラック分飲み食いしたばかりだというのに、よく食べられるものだ。


「ケーテ。聞きたいことは山ほどあるのだが……」

「む?」


 ただのグレートドラゴンは、人型にはなれない。

 ケーテは一体何者か。とても知りたい。


 だが、今、一番知らなければならないのは、どうしてここに来たかだ。

 明日の昼に会う約束をしていたのに、急いできたということは何かあったのだろう。


「問題が起きたのか?」

「そうなのである」


 ケーテは説明する。

 あれからケーテは竜の遺跡を巡回して魔法をかけて回っていたのだという。


「おお、それは助かる」

「うむ。ロックに魔力結界だけでは不十分で、視覚もごまかした方がいいと教えてもらったからな」


 もともと視覚をごまかす魔法が、竜の遺跡にはかかっていた。

 だから人族の冒険者に発見されることがなかったのだ。それが今破られている。


 破られたのと同種の魔法を、改めてかけなおすことに意味があるかはわからない。

 だが、ケーテが巡回すること自体の効果は大きい。

 何か異常があればすぐ気づけるからだ。


 それにケーテが新たにかけている侵入者検知の魔法はとても助かる。


「また、昏き者どもに遺跡を荒らされたのか?」

「もっと大変なことが起こったのだ……」

「大変なこと? 遺跡荒らしよりもか」


 遺跡マニアのケーテが、遺跡荒らしより重大事と判断したのだ。

 本当におおごとらしい。

 その割には、無銭飲食する余裕があったようだ。優先順位が違うと思う。


「うむ。王都周辺の遺跡を回って、我が宮殿に戻ったら……。やばい奴がいっぱいいたのだ」


 宮殿という言葉も気になるが、やばい奴という言葉の方がより気になる。


「やばい奴ってなんだ? ヴァンパイアか?」

「うむ。あれは、多分ハイロードに率いられた集団である。配下に昏き者どもがいっぱいおったぞ」

「昏き者どもって、ゴブリンではないんだよな?」

「ゴブリンもおったが、それは我にかかれば造作もない」

「だろうな」

「問題は、昏竜イビルドラゴンや魔装機械などが大量にいたことである」

「昏竜?」

「昏き者どもの竜種である。竜種と言っても、我らの眷属ではないぞ?」

「そうなのか?」


 俺が尋ねると、ケーテは深くうなずいた。


「昏竜は、腹立たしいことに我らに姿が似ているのだ。だが、作った神がそもそも違う。昏き者どもの神がこの世に堕とした残滓のようなものだ」

「なるほど……」

「ロックが知らなくても仕方がないことだ。我も見たのは初めてであったからな」


 昏竜はとても珍しいらしい。


「で、魔装機械というのは?」

「文字通り魔力をまとい、魔力で動く機械だ。ものすごく強いが、魂がないゆえ昏き者どもではない」

「昏き者どもではないということは……」

「うむ。王都に張られている結界も反応せぬだろうな」


 危険なものが動き出しているようだった。

ケーテは遺跡を保護していたら、家を乗っ取られました。

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