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113 遺跡荒らしのゴブリン

前話のあらすじ:遺跡に向かうためにケーテに乗った。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売開始になりました。

どうかよろしくお願い申し上げます。

 少し飛んで、ケーテが言う。


「もう見えたのだぞ」

「飛ぶと速いな」

「当たり前である!」


 飛びはじめてから、ほとんど一瞬でついた。

 歩きで王都から向かえば、一時間ぐらいかかるだろう。

 さすがにドラゴンは速い。


 ケーテはふわりと地面に降りる。

 俺たちもケーテの背から地面へと降りた。


「あっちであるぞ」

「どれどれ?」


 ケーテは俺の後ろに立って、俺の顔に自分の顔を並べる。

 顔を並べると言っても、ケーテの顔は俺の身長ぐらいある。

 俺の横の地面に顎をつけているといった感じだ。


 ケーテは俺と視線をそろえてくれているのだろう。


「ロック、みえるか? あそこに洞窟っぽいのがあるであろう?」

「うむ。見えるぞ。あれがゴブリンに占拠された遺跡ってやつか?」

「そうなのである。なんと、ふてぶてしいゴブリンであろうか!」


 ケーテは鼻息が荒い。

 ケーテの顔は、俺の顔のすぐ近くなので風音がすごい。


 遺跡の入り口を観察すると、確かにゴブリンが二匹見えた。

 

「確かに、ゴブリンだな」

「であろう? 我もゴブリンだと思ったのだ。だが万一、人族だったら困るのである」


 ケーテは人族と、ゴブリンの見分け方に自信がないようだ。

 前回、俺たちのことをゴブリンと見間違えたくらいだ。


「それで、俺にも連絡してくれたのか?」

「そうなのである」


 ケーテはどや顔をしている。


「侵入者探知魔法に何者かが引っ掛かったので、見に来たのだ。そしたらゴブリンっぽいのがいたので焼き払おうと思ったのだが……」

「俺との約束を思い出してくれたと」

「まさに! まさにその通りであるぞ」

「約束を守ってくれてありがとう」

「ぎゃっぎゃっぎゃ! ケーテは義理堅いドラゴンなのである!」


 俺はニアとガルヴを呼び寄せる。

 ガルヴはだいぶ落ち着いたようだ。それでもまだプルプルしている。


「ガルヴ大丈夫か?」

「がう」


 どことなく声にも元気がない気がする。

 子供狼なので仕方がない。


「ニア。見えるか?」

「はい。見えます。二匹のゴブリンがいますね」


 ニアは落ち着いている。

 震えもしなければ、尻尾も股に挟んでいない。

 背中に乗ったことで慣れたのだろう。


 先程まで、巨大なケーテがそばに居るのに加えて、高所、高速という状況だった。

 それに比べれば、地面に足がつくこの状況は大したことがないともいえる。


「ニアは、あの遺跡にゴブリンは全部で何匹いると推測する?」

「そうですね……」


 ニアは真剣な表情で考え込む。

 俺はニアが答えを出すまでゆっくりと待った。

 その様子をケーテも面白そうに見守っている。


「遠すぎて、何とも言えないのですが……二匹は見張りに見えます」

「それで?」

「なので、見張りを置くということは、リーダーはホブゴブリンやゴブリンマジシャンの可能性もあるので……」

「ふむふむ」


 俺はニアの言葉に相槌をうって続きを促す。


「十匹、いや、二十匹ぐらいいるかもしれません」

「素晴らしい」

「あ、ありがとうございます」


 ニアは尻尾をゆっくりと振る。


「もちろん、群れ全体で五匹以下だったり、今見えている二匹がすべての可能性もある」

「はい」

「だが、それはただの希望的観測だ。ニアが考えたように、面倒な方向で考えるほうが冒険者としては正しい」


 俺は褒めてから、ニアの頭を優しく撫でた。

 ケーテは俺たちのやり取りを真面目な顔で見ていた。


「人族は色々考えるのだなぁ」

「人族は竜族に比べて弱いんだ。考えなければすぐ死んでしまう」

「ぎゃっぎゃっぎゃ! 我より強いロックがそれを言うのか」


 ケーテはご機嫌だ。俺の陰に隠れているガルヴと対照的だ。


「ゴブリンとわかったことだし、早速焼き払うのである」

「ちょっと待ってくれ」

「む? まだ何かあるのか?」

「中に人族がいる可能性もあるからな」

「ふむ? ゴブリンと手を組んだ人族ということであるか?」

「いや、ゴブリンに、捕まった人族ということだ」

「そういうのもあるのだな」


 ゴブリンは人を食べる。

 それゆえ、ゴブリンにさらわれた人族が生き残っている可能性は少ない。


「俺とニアとガルヴで遺跡を探索してくるから……」

「えっ?」


 ニアが驚いていた。


「む? 気が進まないなら、ケーテと外で待っていてもいいぞ?」

「いえ、驚いただけです。私も行かせていただきます」

「そうか」

「我も行きたいのだ」

「うーん。ケーテは大きいからな」

「竜族の遺跡だから遺跡も大きいのであるぞ?」

「それはそうだが……。ケーテは入り口の前で待機して、逃げて来たゴブリンを倒してほしいんだが」

「なるほど。それは大切な仕事であるな」


 ケーテは納得してくれたようだ。


「ガルヴはどうする? 外で待っていてもいいぞ」

「が、がう」


 ガルヴは小さく鳴くと、俺の手を両前足でひしっと挟む。

 ケーテと一緒にいるよりもゴブリン退治の方がいいのだろう。


「わかった。一緒に行こう」


 それから、俺はニアとガルヴと打ち合わせをする。

 遺跡に近づいたら会話は出来ない。だから事前に済ませるのだ。


 気づかれないように遺跡に近づき、ニアと俺で一匹ずつゴブリンを退治。

 その際、悲鳴を上げさせてはならない。

 それからは俺、ニア、ガルヴの順番で遺跡の中を進むことになった。


 今回はニアの隠密行動の訓練もかねている。

 一人前の冒険者になるには、たとえ戦士でも隠密行動は大切だ。

 ゴブリンごときに気取られるようでは話にならない。


 そういうことを説明してから、行動開始だ。

 静かに進み、充分に近づいてから、ニアは跳びかかる。ゴブリンの首を剣で突いた。

 そのころには俺の剣もゴブリンを絶命させている。


 俺はニアに向かって大きくうなずくと、遺跡の中へと足を踏み入れた。

結構大き目の群の可能性があります。


あとがきでも宣伝です! しつこくてすみません。

『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売開始になりました。

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