表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

101/303

101 家庭教師について

前話のあらすじ:とりあえず、当面の間ニアとシアはラック邸に泊まることになった。



わたしのもう一つのシリーズ『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』2巻が10月12日前後に発売になります。

 その後、ミルカが作ってくれた夕ご飯を皆で食べた。

 ミルカがニアに嬉しそうに語りかける。


「ニアちゃんもここに住むのかい?」

「えっと、とりあえずは新しい家を借りるまでです」

「それは残念だぞ! なあ、ロックさん」

「そうだな。住んでくれたら寂しくなくていいんだけどな」

「がうがぅ」


 ガルヴもシアとニアには住んでほしそうだ。

 そんなことを話していると、ゴランがやってきた。


「ロック、遊びに来たぞ!」

「おう、よく来たな」

「ゴランさん、ご飯食べるかい?」

「おお、いいのか? 頼む」

「任せておくれ」


 ミルカが素早くゴランの分の料理を用意する。

 セルリスがくすくすと笑う。


「やっぱり、パパは今日も来たわね」

「セルリスこそ、当たり前のように来ているじゃねーか」

「それもそうね!」


 そして、親子は笑いあった。

 食事を終えると、セルリスは言う。


「ミルカちゃん、ニアちゃん! それにシア。一緒にお風呂入りましょう」

「あ、はい。お風呂いただきます」

「お風呂いただくのです!」


 シアとニアは尻尾をびゅんびゅんと振った。お風呂が好きなのだろう。

 だが、ミルカはゆるゆると首を振る。


「折角のセルリスねーさんのお誘いだけど、おれは後片付けがあるんだ」

「そうなのね……」

「お風呂はあとでいただくさ」

「じゃあ、私も後片付けを手伝うわね」

「いや、セルリスねーさんはお客さんだからな!」


 ミルカがセルリスに遠慮していた。

 そんなミルカたちに向けて俺は言う。


「ミルカもセルリスも、お風呂に入ってきなさい」

「え、だけど……後片付けが」

「後片付けは俺がやっておく」

「だけど、俺の仕事だしな」

「気にするな。風呂に入ってこい」

 ミルカたちをお風呂に送り込んだ後、俺は食器を洗う。


「がうがう」

「こっここ」


 俺が食器を洗っている後ろでは、ガルヴとゲルベルガさまがうろうろしていた。

 ゲルベルガさまはガルヴの背の上に乗っている。仲が良いようで素晴らしい。

 そこにルッチラが食器を持ってきてくれる。


「これで全部ですよー」

「おお、ありがとう」

「運び終わったので、ぼくも洗いますね」

「おお、助かる」


 ルッチラと二人で食器を洗った。

 ゴランも手伝うといったが、お客さんなので断った。


「ルッチラって、お風呂嫌いなのか?」

「えっと、そんなことはないですけど」

「そうか」


 ミルカがルッチラはお風呂が嫌いと言っていた。

 ずっと入っていなかったらしい。


「ルッチラは、いつから風呂に入っていなかったんだ?」

「えっと……」

「魔族の村を出てから、風呂に入ったことはあったのか?」

「……川で水浴びはしました」

「……なるほど」


 まるで冒険中の冒険者みたいな生活だ。

 お風呂嫌いというのは本当らしい。


「ゲルベルガさまは、水浴び好きそうだけどな」

「砂浴びも好きですよ」

「ここ!」


 ゲルベルガが元気に鳴いた。


「今度、綺麗な砂を手に入れて庭に砂場を作ろうか」

「コゥ!」


 ゲルベルガさまは嬉しそうに鳴いた。


「ルッチラ、ゲルベルガさまとガルヴも、ミルカたちが風呂を出たら一緒に入るか」

「い、いえ! 今日、ぼくはお風呂にもう入ったので!」 

「別に二回入ってもいいと思うぞ」

「いえ! 大丈夫です! 大丈夫なので!」

「そうか」


 ルッチラはよほど風呂が苦手らしい。

 一方、ガルヴは尻尾を振りまくっていた。ガルヴはお風呂に入りたいのだろう。


 食器の後片付けを終えて、居間に向かった。

 居間ではゴランが待っている。


「手伝わなくて、すまなかったな!」

「ゴランは客だからな。それよりしばらく、だれも相手できなくてすまなかったな」

「気にするな。好きに酒飲んでたからな」

「そうか」


 俺はゴランの盃に酒を注ぐ。


「ゴラン。セルリスの教育ってどうやったんだ?」

「……やはり、まずかったか? 迷惑かなりかけているか?」

 ゴランは、どういう教育しているんだという説教だと思ったのかもしれない。


「すまない。誤解させたな。まったくもってそうではないんだ」

「ふむ?」

「ミルカはものすごく頭がいいらしい。だが、教育を受けてないから活かしきれていないと思う」

「なるほど。家庭教師か」

「そういうことだ。俺の徒弟になったからには、きちんとした教育を受けさせないと俺の恥だからな」

「それもそうだな。セルリスは学者を数人呼んだな。行儀担当とか歴史文化担当とかな」

「ふむふむ。その人たち紹介してもらうことって出来るか?」

「高齢な先生方が多かったからな……。体を壊したり、亡くなった人もいるから、全員は難しいぞ」

「そうか。エリックにいい家庭教師がいないか聞いてみるか」


 ひざにゲルベルガさまを抱えて、大人しく聞いていたルッチラが言う。


「家庭教師ですか。確かにミルカには必要かもですね」

「何を他人事のように。ルッチラも勉強するんだぞ」

「えっ?」

「ルッチラも、まだ若いのだから当然だ」

「ありがとうございます」


 ルッチラに頭を下げられた。

 教育には金がかかる。だから、感謝したのだろう。


 ゴランが真面目な顔で言う。


「ニアちゃんも、徒弟にするもんだと思っていたが、しないのか?」

「俺としてはまったくもって構わないのだがな。本人が希望するかどうかだろ」

「なるほどな」


 ニアにとっても、徒弟になった方がいろいろと便利なのは確かだ。

 王都での保証人を手に入れるようなものでもある。

 だが、ニアには立派な保護者がいる。こちらから、なりませんかということでもない。


 そんなことを、話し合っているうちに夜は更けていった。

ラックさんはセルリスを教えた家庭教師を雇いたかったようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ミルカ健気だね [気になる点] 鳥類なら水浴びより砂浴びかな? [一言] ルッチラは女のコだヨね セクハラ反対!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ