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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

暗めな短編小説

ゆきつくゆきげしき

作者: なみのり

綺麗な雪景色だ。真っ白な雪は地平線まで続いている。木や建物も1つもない無い、何処までも続く完璧な白いキャンバスだ。私は空腹のお腹を少しさすった。雪でも食べようかな、なんて考えていた。本当に雪ならいくらでもあるのだ。歩いても歩いても雪だらけの雪まみれ。雪づくしの雪まつりだ。雪を踏み踏み歩いているうちに、私は無性に嬉しくなってきた。なんでかはよく分からない。別に分からなくてもよかったから考えなかった。


私たちは産まれたときからなにかから逃げて歩いていた。その時からなにから逃げているのか知っている仲間は居なかった。みんな死んだのだそうだ。私たちは生が有る限り逃げ続けた。ただ遠くへ遠くへ歩き続けた。私が大人になる頃には、他の仲間は皆消えた。一人は年を取り歩けなくなり、一人は凍傷が酷くなり。皆、私の仲間か、時には私が苦しまないように天国へ送った。死体は埋めるが、墓標は立てない。それが追っ手に気付かれないための習わしだった。だから私の仲間たちの痕跡は、私の記憶を除けば、もうどこにもない。


最後に送った仲間は私と同い年だった。私と彼女は凄く仲が良かった。いつでも一緒にいた。歩きながら互いを気遣い、共に遊び、時に喧嘩もした。彼女の口癖は「考えるより歩け」だった。そんなことを言いながら、彼女は仲間の誰よりも仲間想いで、仲間の誰よりも悩んでいたのを私は知っていた。彼女は死に際に私に一言だけ伝えた。

「私達はただ知らないなにかから逃げ続けて…その結果皆死んだ…。ねぇ…私の…私達の生きた意味ってなんだったのかなぁ…」

「…私が見つけるよ。だから安心して。」

私は鉈を彼女の首に振り落として、彼女を天国へ送った。周囲の雪が紅く染まった。軽く黙祷を済ませ、彼女の体を埋めて、私はまた歩き出した。食料も少ない。私は一刻も早く遠くへ歩かなければならなかった。涙は出なかった…はずだ。


私は倒れていた。お腹が空いて体に現実味がない。どうやら私はここまでのようだ。前も後ろも右も左も、どこもかしこも白ばかり。最後の時になにか少しだけわかることがあるんじゃないかと少し期待していたが、そんなことは無かった。もはや私を天国へ送る仲間も、埋めてくれる仲間も居ない。私達の長い長い旅の最後にかろうじて残ったのは、私の死体だけと言えるだろう。本当にこれが正解だったのだろうか…?逃げることを止めていればもっと別の結末があったかもしれない。もしかしたら彼女も私も死なずにすんだかもしれない。後悔の狭間で私は満足もしていた。遂に私達の旅は終わりを迎えたのだ。それが望まれた終わり方じゃなくても、意味のある終わり方じゃなくても、別にいいと思った。どんな終わりであっても、それが私達の出した答えなのだろうと確信した。凍りつく寒さが体に降りてくる。私は静かに目を閉じた。

お恥ずかしながら文章の仕事を目指しています。先はまだまだまだ遠いですが、一生懸命1歩ずつ頑張りたいと思います。アドバイス等をどしどし下さると助かります。

コメントも一言貰えるだけでモチベーションが凄く上がるので、お暇であればお気軽にお願いします。

毎日1話以上の投稿を目指していて、今日で7日目、今日1個目の投稿です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] これは、人生そのものかもしれないという思いで拝読しました。 期待や焦燥感、絶望、それすら超えたところに生まれる達観の景色は、確かにこのような冷たい雪景色なのか、と。 [一言] 活動報告をた…
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