修行開始
こうしてユリカはリズとジェドからそれぞれ魔法と剣の修行をつけてもらうことになった。
朝には魔力操作訓練、昼は移動しながら魔法講座。
そして夜に剣の鍛練というかなりのハードスケジュールとなった。
朝も夜も一時間ほどしかおこわないにも関わらず、毎日ヘトヘトになって夜はぐっすりと眠れた。
そうこうしている合間に小さな村に着いて、そこで一同は1日滞在し、食糧などの調達、休息やクエストを行うことにした。
クエストとは貴族から一農民までいろいろな人物の依頼のことである。
冒険者ギルドでは主に魔物の討伐、護衛、物資の収集、家事などの生活支援などの仕事を行っている。
魔物の討伐、護衛は冒険者にしか行えないことではあるが、実際は後者の方がよっぽど人々の生活に役立ってたりする。
そんなわけで
「えっ、採取クエストに行く?私がですか?」
着いて唐突にジェドに言われた。
「うん、皆でね話し合ってたのよ。私たちに合わせるといきなり討伐クエストに行くはめになると思うのよ。」
「Aランクの冒険者もそう多くはなくてな、クエストが溜まりやすいんだ。だから街のギルドに着いたらすぐに討伐クエスト、しかもレベルの高い魔物の討伐を受けることになると思う。」
なるほど。
街に行く前にこの村で肩慣らしを行おうというわけか。
「最初は宿でお留守番にさせようかと思ってたんだけどなあ。なんせ最近魔物が少ないものだからか犯罪やらが多くてね。ぶっちゃけ、俺たちの側で一緒に魔物と戦った方が安全だよねってなったわけ。それに、ユリカはここしばらくの修行だけでもだいぶ強くなったからな。もう、レベルがそこまで高くなければ一緒に戦っても問題ない強さだと思うよ。頑張ったね。」
リズはうんうんと頷いている。
そうなのか?
確かに強くなった気はするが魔物となんて戦ったことなかったので、自分の強さを見に染みて実感したことはない。
でも、自分よりも遥かに経験者である彼らがそう思うのであれば、きっと自分は魔物と戦う力を既に持ち合わせているのだろう。
「わかりました。でもまだギルドに冒険者登録していないのに、クエストを受諾できるんですか?」
「それはね、仮登録をすることで出来るようになるわ。仮登録じゃ、討伐クエストは受けられないから結局、街で登録しないといけないんだけどね。」
仮登録…そんなものがあるのか。
でも確かに、そんなものがないと街から離れた場所に住む人たちは、冒険者登録するのも大変だし、わざわざ街から来る冒険者なんて数か少なすぎて対処が出来ないであろう。
「よし、じゃあ早速ユリカちゃんの道具、買いに行きますか。」
「えっ!?」
確かに私は防具を着けていない。
しかし、ジェドやリズからおさがりで武器はもらっていたし、アイリーンとタローからも袋やら水筒などの基本的なものは既に貰っていたので、買いに行くなんて思いもしない発言だった。
「その前に宿。荷物置かないと、動くものも動けない。」
「あら、それもそうね。」
買い物と聞いて男性陣は渋面になる。
「俺らはついてかないからな。村の討伐クエストやってくる。」
そういえば、女の買い物ってすごく大変なんだと父に聞かされたことがあった。
父はそれはもうどんなに大変だったかを熱弁した後、もう付き合わされたくないと言っていたが、イマイチわからないところも多かった。
大変な思いをしたのは目の前の男たちも同じらしい。
彼らが逃げたくなるような女性たちの買い物とは一体どういうものだろうか。
なんだかわくわくしてきた。
「残念、荷物持ち係がいないなんて。」
「だから嫌なんだ、買い物。お前らだけで勝手に行ってこい。」
「そうさせてもらいまーす。」
アイリーンは嬉々としている。
女性陣は軽い足取りで宿に向かっていく。
比べて男性陣はなんだかほっとしたようだった。
…そんなに大変なのかな?
この後、私は男性陣たちが何故あんなにもついていきたがらなかったのを思い知らされることとなる。