デュラハン
その後、リズ達と合流したユリカは一番最初に激しく突っ込みを入れられることになる。
『なんでそうなる!?』
『どうしたらそんな状況になるんだ!?』
二人ともこの状況を見たとたんという感じだったので、声が重なっていた。
いや、どうもこうもなんかこうなったんだわぁ……。
すっかりリズ達が来たことにより安心してしまった私は一応魔物と戦闘中であるというのに穏やかにゆっくりとそう思った。
それから鎧と馬の魔物に言われたとおりに頭を返してやると静かに立ち去って行った。
目的の黄色リンゴの葉も手に入れてあたりがオレンジがかってきた頃だったので、急いで村に帰った。
村に帰りギルドに向かうとそこではすでにアイリーンとジェドの姿があった。
「お帰り、どうだった初めてのクエストは?」
ギルドに着くころには時刻は夜に差し掛かっていたので昼間とは一転して、酒場として繁盛しておりかなりにぎわっていて声が伝えにくく、初めてのクエストで興奮していたというのもあるかもしれない。
ついつい普段よりも大きめの声で話してしまう。
「うん!無事終えることができました!途中で大きな魔物に襲われたり、リズさんたちと合流したのには驚いたけど。」
「は?魔物に遭遇したのか。」
私たちはそのまま流れるように机に付く。
「ああ、それがね。デュラハンだったんだよ。」
「え!?デュラハン!?大丈夫だったの?」
アイリーンは驚きを隠せないように立ち上がり口を覆うように両手で隠す。
「うん、大丈夫。なんかすでに頭取れてて、なんでかそれをユリカが持ってた。」
「「ええええ?!」」
「どういう状況だよそれ。」
「だよなぁ、やっぱそう思うよな。」
うん、やっぱりなんか変なことしちゃったみたいだな私。
それにしてもさっきの生首取れる系魔物はデュラハンという名前だったのか。
「ユリカ、前にさ妖精の話した。デュラハン、妖精の仲間。」
「え!あれが!?」
まさか、妖精だとは思わなんだ。
しかし妖精だとしたら不可解な点が一つあった。
「いきなり突進してきたんですけど、それ食らってたら私死んでましたよ?妖精って人間に好意的な魔物じゃないんですか?」
そう問うとタローは苦笑いした。
「たまにあるんだと、魔力の高い人間を好いた妖精が突撃してくること。それも物理的にな。」
「それって、デュラハンだと最悪じゃない…。大きな岩が突然突進してくるようなものでしょ?」
確かに、それってたまったもんじゃない。
「ああ、それでデュラハン困ってた。なんかおろおろ動きが鈍い。ちょっとかわいかった。」
それを聞いたジェドは苦虫をつぶした顔になる。
「お前…あんなんのどこがかわいいってんだよ。ガッシャガッシャうるさいうえに、馬なんて目がぎらぎらしていかにも襲いたいって気持ち表してるようなもんじゃん。」
「ジェドにはわからない、女の子はああいうの好き。」
「んー、どうだろ?まあ確かにそんな感じのデュラハンだったら少しはかわいいかもしれないなぁ…。」
ジェドは遠い目をして「女子ってそんなものなのか…!?」などとつぶやいている。
私は晩御飯を食べながら気になることを質問したくなった。
「デュラハンみたいに大きな妖精っているものなんですか?」
リズはごくごくとジョッキを飲み干して質問に答えてくれる。
「いる。でもデュラハン以外は上位妖精、めったにお目にかかれるものじゃない。まあデュラハンも一応中位妖精ではあるけど。」
中位妖精切っちゃったのか私。
道理でみんなが驚くわけだ。
魔物にも強さによってランクが分かれていて、細かい分け方のやつもあるらしいけど生活の中で使うのは下位、中位、上位の分け方らしい。
妖精も魔物なのでそれにあれはめてさっきのデュラハンは中位だったわけだ。
中位の魔物の強さは地球と呼ばれた前世では戦車くらいの強さだと思う。
現代科学というもので歴史上のものとは比べられないほど強くなった戦車だ。
上位までいくとたぶん本気になればミサイルくらいの攻撃ができるんじゃなかろうかというのが私の見解だった。
上位の魔物は弱い奴でも町一つ、強い奴だったら国一つ滅ぼすらしいからそいつは核爆弾と同じくらいやばい奴だ。
まぁ次元が違うわけで、もし見かけてしまったら逃げるのが普通だ。
この国も120年前にドラゴンに半壊にされたらしく、今でも復興にあったっているのだとか。
とにかくすごいのだ。
私はそんな戦車にいくら突進してきたからといっても切りかかってしまったわけで、そのまま怒りで殺されたっておかしくなかったということ。
考えてみたらゾクリとした。
なんだろう…、妖精に好かれていてよかったのか悪かったのか…。
そうやってぼやっとしているとみんな食べ終わったみたいでこのまま宿に戻って早く寝て明日に備えることになった。
なんだかんだ今日はいろいろとあって疲れてしまっていたのでぐっすりとねむることができた。
お休み世界、ぐうぅぅ………。
私はだいぶ慣れてきた固めのベッドについて数分もしないうちに深い眠りについてしまった。