表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

加藤教習所①

仕事の移動では、社用車を使用することが多く、一人の時もあれば、複数の時もある。


相手が、後輩であれば運転は任せるが、先輩であれば、私が運転する。


しかし、人の運転とは、気になるもので、特に新人の場合は運転に慣れておらず、ついつい口をはさみたくなってしまう。


私も今でこそ、運転に多少の注意をしてしまうが、新入社員の時は、言われる立場であった。


しかし、何事も適度が大事だと思う。


私の新人のころのトレーナーである加藤先輩は、非常にうるさい奴であった。


私が、最初の支所に配属されて、社用車を運転させてもらえるようになったころ、加藤先輩はよく付き添ってくれていた。


先輩を助手席に乗せているため、多少の緊張感を保ちながら、注意して運転をしていたのだが、ところどころ指摘が入る。


直線道路で、前方に信号がみえると


「あぁ~!信号赤だから、ブレーキ踏んで!」


信号までだいぶ距離がある気がするのだが・・・。


『きっと、社用車の場合は世間の目も考えて安全運転なのだろうと』と気持ちを新たに運転である。


次の信号を右折しようとすると


「はぃ!ウイィンカーだしてぇ~。」


曲がるまで、だいぶ距離がある気がするのだが・・・。


『きっと、過去に急に曲がって後ろから追突があったのだろう』と気持ちを新たに運転である。


道の空いた直線道路、少しだけ速度が上がると


「あぁ~!危ない、もう少しスピードを落として!」


『そんなに、速度出してないよね?』若干のいらだちを覚える。


これは、私のミスなのだろう、少しブレーキを強く踏んでしまうと


「おぉ~っと!危ない、危ない!」(私の腹部分に右手をかざして)


『俺、シートベルトしてるんだから大丈夫なのだが・・・。そんな急ブレーキだったかな?』もはや、何が正しいのかわからない。


とにかく。すべてにおいて言葉が飛んできて、教習所より厳しいレベルである。


きっと『加藤教習所』は日本一安全なドライバー養成所である。


流石に、毎回言われると、私も疑問を覚え他の同僚にも確認すると


「あぁ~、加藤先輩ね?あの人いつもうるさいよ。」


また、加藤先輩よりも上の人も


「たまに、俺が運転するときもあんなもんだよ。」


先輩に対してまでであり、その熱血指導には驚愕である。


そんな加藤教官に毎回うるさく言われると当然のことながら、おざなりに対処するようになっていった。


「私さん!もうすぐカーブですよ!」


「そうですか~。」


先輩に対しても若干遠慮がなくなっていた。


そのような日々が続いたときである。


私と先輩がいつも通り車で営業をしているとき、道の細い住宅街に差し掛かった。


道が細く、曲がり道も多いため、慎重に運転していると


「私さん、そこを右にカーブですよ!もう少し大きく膨らんで!あぁっ、危ない、危ない。」


また、『いつも通りの光景だなと』と思いつつ無視を決め込んで、カーブすると


『ガリガリガリッ』


嫌な音が、車の側面から聞こえてきた。


「あぁ~!だから言ったのに~。」


車を止めて、加藤先輩と確認すると立派な傷跡がドアにできていた。


加藤先輩のいうことは正しかったのである・・・。


もはや言い訳のしようもなく、事務所に戻る道中に小言を言われるのであった。



事務所に着くと、もちろん上司への報告が待っている。


私は、トイレを済ませてから、事務所に入り、上司に報告するべく向かうと・・・すでに加藤がいた。


「もうしわけありませんが、車をこすってしまいまして。」


「大丈夫、ケガはなかった?」


「はい、○○地区で右折の際にぶつけてしまい。」


なぜか、先に上司に報告をしており、加藤がぶつけたみたいになってた。


しかし、さすがに不味いと思い、私も報告に加わった。


「申し訳ありませんでした、私が不注意でぶつけてしまいまして。」


すると『えっ?お前なの?』と疑問な様子で上司にみられた。


「あぁ~、私君だったのね。勘違いしてたよ。」


上司も私がぶつけたことを理解して話を進めた。しかし、私が詳しく説明しようとすると加藤が横から。


「私が付いていながら・・・、申し訳ありません。」


実際には、たいした傷ではなく、次回から気を付ければいいと上司が言っているのだが、加藤先輩は『私がついていながら~』を枕詞に弁明を繰り返すのであった。


その後は、特に問題もなく、処理が終わり、収束したのであった。




それからは、加藤先輩の運転中の助言は留まることを知らず、むしろ運転してほしいと願う1年であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ