後輩の指導について
昨年、中途採用で私に後輩ができた。
後輩は残念ながら男性であったが、それはそれで、会話でも弾む明るい子であればいいと考えていた。
後輩との初対面。彼こと吉浦(仮)は、中途採用であり年齢は私の1つ年下である。外見は、背がひょろ長く、猫背気味で何より・・・前頭部が少し後退していた。
まぁ、少し雰囲気が内気なイメージがあるが、きっと会話をすれば、アニメとかゲームで盛り上がるのではと考えていた。
外に出る機会があり、さっそく仕事を教えようと彼を誘ってドライブがてら出かけた。
まだ、そんなに会話もしてないので緊張しているだろうと私から声をかける配慮も忘れない。
「吉浦君は、出身はどこなの?」
「○○です。」
「あそこらへんなんだ~。普段は休みは何してんの?」
「家にいます。」
「ところで大学はどこでてんの?」
「○○大学です。」
「なんか学生のころサークル入ってた?」
「声楽部です。」
「声楽部って、凄いね!歌好きなの?」
「幽霊部員です。」
「・・・・。」
会話がまったく弾まない。質問しても一言ですべて終わってしまい、あとは沈黙のみである。
キャッチボールを使用にもボールが帰ってこないのである。
そんなわけで、30分も運転してれば、私の質問も底をつき、ただ沈黙が車内を支配した。
その日は、正直非常に運転が苦痛であった。ただ、新入社員であるし、きっとなれれば大丈夫と自分に言い聞かせるのであった。
それから、数か月たったが、会話は乏しいままであり、彼の今後が不安であった。
そんな、彼だが、少し饒舌に会話をしてくれるネタがあった。
彼の歓迎会を兼ねた忘年会での出来事である。
ちなみに、彼はお酒が飲めないらしく、ノンアルコールであるが、我々はお酒で酔っ払っていた。
そんなシラフ状態の彼に、後輩の女性が質問をした。
「吉浦君て彼女いたの?」
隣で聞いていた私は『ぶっこみすぎじゃね?』と思ったが、かなり気になったので耳を傾けた。
しかも、後輩の聞き方も、過去形で聞いており、完全に童貞と決めつけた感じであった。
すると、吉浦は
「はい、いましたよ。今は別れちゃいましたけど、大学時代に後輩と付き合ってましたね。」
「えぇ~~~~!うそぉ~~~!」
後輩の女性の失礼な驚きが響いた。正直私も驚いていた。なんと職場にいる童貞四天王よりもランクが上であった。
童貞四天王については、後々話したいと思う。
そして、童貞四天王のうち最弱を誇る山田が興奮したように話に入ってきた。
普段では、考えられない吉浦を中心とした会話が広がったのである。
話を、聞いていると、大学時代に後輩の子と1年ほど付き合っていたらしく、それ以外はないそうだ。
だが、童貞山田と比べれば、アドバンテージは高く、彼の会話は経験豊富な恋愛マスターのようであった。
私が会話の流れで「山田にアドバイスしてやれよ~。」というと
「山田さん、自分から行かないと、恋は実りませんよ。」
シラフの彼から真顔で、アドバイスがさく裂した。
さらに、みんなで好みのタイプの話にかわると、特に質問もしていないのに
「私は、年上が好きだと思ってたんですけど。付き合ってみたら年下だったんですよね。」
ドヤ顔で言われた。申し訳ないが、若干イラっとした。
普段は、まったく会話をしないが、何故が恋愛トークの時だけ必要以上にしゃべってくれるのであった。しかも、経験豊富な感じである。見た目でいえば、山田のほうが断然カッコイイのだが、世の中何があるかわからないものだ。
それ以降、山田は珍しく凹んだ状態で飲み会に臨んでいた。
ちなみに、余談ではあるが、私の親戚、友人にも前頭部が後退している人がいるが、総じて前髪を伸ばしている。
友人には、他の友達と『絶対短くした方がいいよ』としきりに言っているのだが、『わかってるけど、できないんだよ!』と返された。
しかし、数か月にはとうとう観念したのか短髪になった友人がおり、非常に似合っており、ハゲが多少わからなくなっていた。
はたして、後輩に頭髪の長さを言っていいものか迷う今日この頃である。