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ラーメンマン

皆さんは、ラーメンが好きだろうか?


とある休日、特にすることもなかったので、私は友人とドライブがてら有名なラーメンを食べに行くことにした。


友人から、常々オススメされていたラーメンであり、距離は遠いが行く価値があるといわれていた。


その名も『梅乃屋』と呼ばれる元祖竹岡式ラーメンである。


私は、竹岡式ラーメン自体を食べたことがなかったので、非常に興味が湧き、遠路はるばる向かうことにしたのであった。


道中に、私は事前知識がないため、どのようなラーメンか友人に質問した。


「ところで、どんなラーメンなの?」


「う~ん、説明が難しいな?」


友人は、眉間にしわを寄せ悩みながら答えた。


「まず、麺は業務用の乾麺を使用していて、スープはチャーシューの煮汁にお湯を加えたものだよ。」


「・・・・それだけ?」


「あとは、パートのおばちゃんによって濃さが変わるかな。」


衝撃の調理方法である。自分でも作れそうである。


私は、非常に帰りたいたい衝動に襲われるが、ある程度まで来てしまったため、渋々向かうのであった。




民家が立ち並ぶ漁村の一角にそのお店はあった。


私は、駐車場に車を止めると、さっそく店に向かった。


外観は、いかにも昭和のラーメン屋といった感じだ(昭和のラーメンは知らないが)。


そして、お昼を多少外した時間であるにも関わらず、行列ができていた。


このような、行列ができるとは、友人の事前知識にも関わらず期待をし始める自分がいた。


そして回転率が良いのか、そこまで待たずに、私たちは席に案内された。


店内は、狭く、外観同様昭和の香りがした。


私たちは、テーブルに座るとシンプルなメニュー表を眺めさっそく注文した。


そして注文後、期待に胸を膨らませていると隣のテーブルに土方の格好をしたおじさんたちが3人座った。


隣の人たちは、会話もあまりせずそれぞれが漫画本、携帯をいじっていた。しかし、一人だけそわそわしたおじさんがいるのに私は気が付いた。


おじさんは、他の二人に話しかけるように語りだした。


「やっとぉ~、また来れたよぉ~。ここのお店は本当にうまいからなぁ~。」


随分と間延びした喋り方のおじさんであった。


しかし、本当に好きなのだろうことが伺える。しかし、彼の言葉に同僚らしき二人は沈黙であった。それでも彼は語り続けた。


「本当は~、毎日でも来たいんだけどぉ~、それは難しいからなぁ~。」


相変わらず、同僚はシカトであった。聞いているのは、友人含む我々だけである。


すると、初めに友人の頼んだ『大チャーシューメン』がきた。


見た目は、丼ぶりからあふれんばかりの量に、凄く黒いスープで圧巻であった。


私が、驚いていると隣からま間延びした、しかし小声で語り掛けるような声が聞こえた。


「おい~、見ろよぉ~、大チャーシューだぞぉ~。凄い量だなぁ~、物凄くうまそうだよぉ~。」


もの凄く羨ましそうな声が聞こえてきた。私たちの注文がすべてそろい皆で食べ始めていても隣からは『早くぅ~、食いてぇよぉ~。』と聞こえてきた。


しかし相変わらず同僚は無視であった。ここまでくると、関係性が気になるのとこのラーメンには何か薬でも入ってるのでは疑ってしまった。


隣の濃さに興味がそそられながらも、とりあえずラーメンを食べてみた。


『チャーシューの煮汁にお湯、さらには乾麺』とくれば正直恐ろしかったが、何と食べてみると何故かわからないが癖になる味であった。


だが、これは『ラーメンであって、ラーメンじゃない』ような気がする(あくまで主観です。しかし美味しいです)。


よくよく周りをみると、乾麺の入ったダンボールが山積みにされているのを見ながら、材料にこだわらないが美味い謎のラーメンに感動するのであった。


ある程度、食べていると隣からおじさんのうれしそうな声が上がった。注文がきたのである。


「おぃおぃおぃ~、待ちくたびれたよぉ~。しかし~、本当にうまそうだなぁ~、久ぶりだよぉ~。」


本当にうれしそうなおじさんが居た。しかし相変わらず同僚は漫画、携帯をいじりながらの無視であった。


そして、おじさんはラーメンを食べると感想を語りだした。


「この味だよぉ~、本当に旨いなぁ~、毎日でも食べたいよぉ~。」


きっと彼にとっては、おふくろの味なのだろう。


そうして、美味しそうに食べていた、おじさん達と私たちは食べ終えると少し休憩をした。


満足感にあふれたおじさんは、ふと会計のためにメニュー表を眺めると驚愕していた。私は何を驚いているのか気になっているとおじさんは語りだした。


「おぃ~、見ろよぉ~、少し値上がりしてるぞぉ~。」


私は、初見なのでわからないがどうやら値上がりしていたそうだ。しかし、おじさんはがっかりした感じではなく少し誇らしげに語った。


「おぃおぃ~、マジかよぉ~。ラーメンに梅割りを頼んだらいい値段になるじゃねぇかよぉ~、これじゃぁ~、ちょっとした高級料理店じゃぁねぇかぁ~。」


値上がりしたことで『梅乃屋』は差別化がされどうやら大衆ラーメンから高級料理店にランクアップしたらしい。


しかし、相変わらず同僚は沈黙を保っていた。もはや不気味ですらあった。


後で、友人に話を聞くと、友人命名の通称『梅乃屋フリーク』なる熱狂的なファンが大勢いるらしいことが分かった。おじさんもその一人であり、もはや『梅乃屋』なしでは、生きられないのである。


しかし、確かにこの料理は、賛否両論が激しそうだが、ハマる人には中毒のようにハマりそうな感じであり、友人も『梅乃屋』連呼がうるさくもはや謎の薬である。


是非、皆さんも食べてみてほしいラーメンである。



余談だが、仕事の昼休憩中に、友人からラインが届いた。


なんだろうと、読み上げるとどうやら『梅乃屋』にいってるらしかった。しかし、残念なことにお店が休みであり、がっかりのスタンプが送られてきた。


まぁ、運が悪かったなぁ~と苦笑していると写真が送られてきた。


開いてみると、そこには縁石に座り込み、頭を抱え込みうずくまる謎のおじさんがいたのであった。


友人からは、『梅乃屋フリーク』が絶望に打ちひしがれていると書き込みがあり、『梅乃屋』の中毒性の恐ろしさを垣間見るのであった。

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