世にも奇妙な物語
これは、私がとあるホテルで体験した話である。
私は、大学の友人の結婚式に招待された。
まず、ここで一つ問題が発生した。結婚相手が私の元カノだったのである。
もちろん、友人も周りの友達も含め周知の事実であるが、私は気まずいなぁと感じていた。
私の通っていた大学は県外であるため、もちろん友人の結婚式場は遠隔地である。早くホテルをとらねばならないのだが、気まずさから、直前まで予約をしていなかった。
そして、日数が差し迫り、さすがに不味いと思いホテルを探す。しかし、結婚式が3連休の日でありどこも予約でいっぱいであった。
しかし、根気よく探していると、一つだけホテルが見つかったのである。値段もリーズナブルであり、私は運がいいなと予約をするのであった。
そして、結婚式当日。その日は別に恐怖の友人代表挨拶もなかったので物凄いハイテンションで友人たちと談笑をしていた。
元カノとも、話してみると、普通に楽しく会話ができ、二人を心から祝福することができ、来てよかったと満足をしていた。
そして、楽しい気分のまま、結婚式は終了して、テンションの高いまま2次会に赴くのであった。
しかし、この2次会が恐怖の幕開けであった。
2次会でも、酒の力もありハイテンションのまま、楽しく談笑をしていた。
昔の話をして、当時を振り返っていると、ふと元カノに会うのが気まずかったことを思い出し、笑い話として話すのであった。
「元カノに会うのが気まずくてさぁ、直前までホテルをとり忘れてて焦ったよ。」
周りの友人たちも『そんなことで悩んでたのか。』と笑いながら返事をした。
そして、ふと気になったのか、こんな質問が投げかけられた。
「そういえば、確かに3連休でホテルどこも満室だったけど、よく空いてたね?どこのホテルにしたの?」
私は、直前でもホテルが見つかったことを威張るように
「結構値段も安くてラッキーだったよ。○○ホテルっていうんだけど。」
すると、突然周りの友人たちが静かになった。どうしたのか私は疑問を呈すると、先ほどの友人が答えた。
「お前、それ有名な幽霊のでるホテルじゃん。」
私は、言葉が出なかった。友人の発した言葉の意味は分かっていたが、理解したくなかった。
私は、高いところと、幽霊が本当に嫌いなのである。昔、家族が居間でホラー映画を見た日には、しばらくは、お風呂で頭を洗う時も、鏡に映る背後を気にして、常に目を見開いたままである。
一応、冗談ではと思い「お前、そういう冗談はやめろよ~。」と投げかけた。
すると、まじめに返答された。
「前から有名だったじゃん。お前、覚えてないの?ネットにも載ってるぞ。」
私は、冗談だろと、思いつつ最後の望みをかけて、携帯で検索をしてみるのであった。
『○○ホテル』で検索すると予測変換の項目に『○○ホテル 幽霊』と出てきた。
私の中で、何かが終わりを告げた。楽しかったテンションは全て砕けてしまった。
友人とは、薄情なものである。私の気持ちを差し置いて、ゲラゲラ笑いながら脅しをかけてきた。
私は最後の抵抗として、必死に『今夜は、カラオケで朝までかな?』と誘ったが結局、解散になった。
そして私は、一人で恐怖のホテルへと帰るのであった。
ちなみに、ホテルを検索してみると、姿は見えないが、何か気配を感じる類のものらしい。
私は、恐怖を押し殺して、部屋に入った。まず、薄暗い部屋に明かりを増やすため、テレビをつける。
部屋のベットの隙間を観察し、安全を確認すると、次に壁の絵画チェックである・・・これも大丈夫。
そして、今日は絶対風呂には入らないが、トイレには行きたいのでチェックしに行くと・・・壁に小さい穴が開いていた。
奥は暗く見えないが、物凄く嫌だった。後ろからはテレビの音だけが聞こえてくるのである。
ここで、私は耐えられなくなり、布団にもぐることにした。
しかし、どうしても気になって眠れず人肌が恋しい私は、思考をめぐらした。
『そうだ、デリヘルを呼べばいいんだ。』
素晴らしい考えである。あの時の私は自分を天才だと考えた。
そうして、私の電話ラッシュが始まった。
まずは、地域で人気の高い店・・・・・予約でいっぱいだった。
次は、金に糸目をつけない高級な店・・・・・予約でいっぱいだった。
確かに考えてみれば、時間帯も遅かったため店が見つからないのである。
そうして、少し怪しい外国の店まで電話したのだが、とうとう繋がらなかった。
私は、絶望した。まだ何かないかと探していると、前から目にはついてはいたが、見ないようにしていた店の名前が表示された。
『熟女専門』
・・・背に腹は代えられん。しかしできれば、ダメであってほしいな。もはや、幽霊など二の次である。
そして、コールが鳴り響き電話がつながった。
「すいません、○○ホテルなんですけど、今から大丈夫ですか?」
「ちょっと待ってくださいね・・・今なら一人行けますよ。」
なんと、呼べてしまった。
そうして、私は、震える声で「お願いします。」と告げるのであった。
私は心の底から『美魔女、美魔女、美魔女』と祈り美しい妙齢の女性を信じるのであった。
そうして、ある程度の時間がたつと、とうとう到着したのであった。
ドアをたたく音が聞こえると、私は颯爽と扉までむかい、息を整えてから開け放した。
目の前には、妙齢(50歳以上~)の魔女がいた。『美』が抜けている。
私は、幽霊よりも怖いものに遭遇してしまったのである。
しかし魔女は私の気持ちなどしらずに、部屋へと入るのであった。
「お客さん若いからビックリしたよ。珍しいね~。」
『うるせぇ、好きで頼んだんじゃねぇよ。』内心で毒を吐きつつベットにむかった。
そうして、会話もそこそこに、魔女は謎の儀式の準備を始めた。積極的な魔女である。
しかし、私は、儀式の生贄になるのはまっぴら御免である。魔女を押さえつけ適当な言い訳をしまくり話を長引かせる。
「いや~、お酒飲んじゃって全然だめですねぇ。」
「そうなのかい?でも私のテクニックは凄いよ。」
色気のある(?)流し目ととも床上手発言。何せなかなかお目にかからない大御所のベテランである。
しかし、絶対に死守するべく、調子が悪いと言い訳をして、なんとかマッサージをしてもらうことにした。
ベットにうつぶせになり、全身をくまなくマッサージしてもらった。
私の上にまたがり、丹念に体をほぐしてくれる。実に上手であり気持ちよかった。
しかし、背中、腰、まではよかったが、下半身に入ると、なぜか入念な手触りで私を責め立て始めた。
なぜか、魔女の鼻息も荒く感じるとともに、主に尻、太ももが執拗に攻められるのである。
『不味い!これはヤバい!』私は、素数を数えて応戦するのであった。
もはや、この魔女と過ごすよりも幽霊と過ごすほうがはるかにマシなのであった。
そのような苦行の中、なんとか私は時間いっぱいまで逃げることに成功したのである。
金を渡し、魔女を撃退することに成功すると、空は薄明りをともしていた。
そうして、多少明るくなるのと、隣の部屋の親父のくしゃみの音に安心するとひと眠りするのであった。
余談では、あるが私の滞在したホテルは新館と旧館に分かれている。
元カノと友人は新館に泊まり、私は恐怖の旧館である。
新婚初夜を楽しんでいる友人たちの近くの旧館で私はいったい何と戦っていたのだろうか?
ご祝儀貧乏に加えホテル代、さらにはデリヘル代まで払った旅の費用は考えたくもないのである。