シャイレンドルの闇 4
現れたのは何の変哲もない丘だった。緑にあふれた田舎の光景だ。点々と羊が草を食べている。のどかな昼下がり。羊の鳴き声さえ聞こえてくる。
緑の野に降り立って、ユレイオンは眉をひそめた。この光景に何の意味があるのだろう。ここが特別なのは確かだ。今までの記憶と違って、ここは音もにおいも、触感さえもある。草の一本まで手に取れるほどはっきりと形作られている。
だが、何が特別だというのだろう。この、穏やかな光景の……。
――!
突然、世界が赤く染まった。爆発した血のイメージ。目の前に朱の紗がかかる。
違う、ここじゃない。
丘の向こうに見える小屋に、体が引き寄せられる。そこではいくつかの光景が同時に展開していた。赤い血。野盗たち。絹を裂く悲鳴、金髪の子供。一瞬にして散る肉片……血の雨。
その光景が無限に繰り返し再生されていた。
そして、子供。
自分の力が引き起こしたことに呆然としている、金髪の子供。返り血を浴びて、小さな腕を抱きかかえて、呆然と座り込んでいる、子供。
まだ幼いのだろう。七、八歳か。発育の悪さを考慮に入れてもせいぜい十歳というところだ。だが、自分の引き起こしたことを記憶するには十分な年齢だ。
相棒の才能が群を抜いたものであるのは当然だ。何の訓練も受けていない状態で、これだけのことができたのだから。
だが、それは相棒にとって決して幸せなことではなかった。
取り巻く大人たちの顔。恐怖が引き金になった力の暴発は、いわば事故だ。この小人に責任はない。
だが、周りの人たちはそうは見なかった。恐怖と嫌悪の目。投げつけられる石つぶて。異端の容姿と金色の瞳が災いした。人目を避けて逃げて逃げて……どれほどそうして過ごしたのだろう。彼は。
いくつものイメージを連ねた回廊の中を落ちる。終わりのないだまし絵のように同じ光景が繰り返される。繰り返し、落ちて落ちて……気が付くとユレイオンは記憶の底にたどり着いていた。




