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セイン、無事逃れる

 城門の衛士はセインを見るとすぐに門を開けてくれた。

 門の扉が閉まると、セインは気が抜けてその場にへたりこんだ。

「大丈夫か、君」

「はい、大丈夫、です。あの、ウェルノール様に、言伝を預かってきました」

 懐から手紙を出す。ユレイオンから預かったものだ。

「分かった。そこで待っていてくれ」

 ほどなく白亜宮の主は侍従を従えてやってきた。

「これは……大丈夫かい?」

 座ったままのセインを一目見るなりウェルノールはそういい、侍従に医者を呼ぶよう申し付けた。

「ええ、大丈夫です。落馬しただけで済みました。ウェルノール様、これをユレイオン様から預かってまいりました」

 差し出された手紙を受け取ると、ウェルノールは眉を寄せる。

「君――セイン君だったね。ともかく館に。話を聞かせてくれるかい?」

「はい」

 兵士の肩を借りて立ち上がる。一番近くの小部屋に通されたセインはやわらかな長椅子に体を沈めた。

 医師がやってきて、手際よく体のあちこちに薬を塗りこんでいく。

 自分でもあれこれ動かしてみたが、手足は骨折などしていないようだ。落ちた時に打った右肩と腰も多分大丈夫。したたかに打ったから右腕を動かすとかなり痛い。それよりは落ちた時のショックか、まだふらふらする。

 医師が去ると、ウェルノールは近くに椅子を引き寄せて座った。

「モントレーの館を出てからここまで、追手はなかったかい?」

「追手はありませんでしたが、主街道をはずれて館に向かった途中で襲われました。館の前の道を真っすぐ行って少し右に曲がったあたりです。見た限りでは弓兵が四名。伝令を待ち伏せていたようです」

「そうか……。モントレーの館に着いてからのことを話してもらえるかい? ああ、体に負担がかからない程度でかまわないよ」

「わかりました」

 セインは少し笑顔を忘れた館の主の顔を見つめて言った。常に典雅な笑顔を忘れない人だと思っていたけれど、やはり弟君――ユレイオン様に危機が迫っていると知って心配なさっておられるのだ。

 セインは記憶している限りに事細かに事の次第を話し始めた――。

新連載開始しています。

彼らの五年前を描いた「翠の瞳」

http://ncode.syosetu.com/n1809cs/

幼く初々しくお馬鹿な彼らもお楽しみくださいませ♪

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