表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アダの聖域 ~塔の魔術師シリーズ~  作者: と〜や
ランスフォールの館にて
28/101

ランスフォール家の朝食

 翌朝、朝食のために皆が揃ったのはもう昼も近い時間だった。

 まだ何やら眠そうな顔をして、一同が食堂へと集まる。

 館の主は一度得た教訓を忘れない性質と見えて、用意されたテーブルは昨夜とはいささか構成を異にしていた。縦に長いテーブルの一方の端に席が四つ、そして主の席と向かい合うようにしてもう片方の端に一つ、二人分はあろうという料理を盛り付けた席が用意されている。当然、シャイレンドルの席である。導かれるままにその席に着いたシャイレンドルは、向かい合った主の顔を見てひそかに舌を巻いた。

 ――うげげ、あんだけ呑んどいて、まださっぱりした顔しとる……。

 昨夜、シャイレンドルと遅くまで酒を酌み交わしていたウェルノールは、そんなことをまるで感じさせない清雅な微笑で少年たちに話しかけている。シャイレンドル自身、かなりなウワバミの自信があったのだが、さすがに今朝は頭が重いような気がする。だが、それでも出された食事をきれいに平らげてしまうのが彼の彼たる所以でもあった。

 席配分のおかげで朝食は平和裏に進んだ。ウェルノールは話し上手で、かつ聞き上手でもあったから、少年たちの緊張もじきに解けて、話題の中心は塔の日常生活に移っていった。それでもユレイオンたちの話に持っていかないのはセインの心遣いというものであろう。ユレイオンはその成り行きに感謝しつつ、夕べは味も分からなかった食事に専念した。

 だが、食事が終わる頃になると再び緊張感が戻ってきた。ユレイオンはいつ問題の地アダの現地調査に行くことを切り出そうかと間合いを狙っていたし、兄の方はそれに感づいてか間合いをつぶしている。今回は傍観者を気取ったシャイレンドルは、その駆け引きの成り行きをテーブルの反対側から楽しく鑑賞していた。

「……兄上」

 ついに弟が万全の勇気を奮い起こして話を持ち出そうとしたとき、侍従が入ってきた。

「お館様」

 使用人らしく紺のお仕着せを身に着けた黒髪の青年は、ウェルノールの前まで来ると一礼して言った。

「……ユーフェミア様がお見えでございます」

「それはそれは……」

 驚いたようにウェルノールは肩をすくめた。

「サロンにお通ししておいてくれ。すぐに行くから」

「兄上、お客様でしたら私どもはお邪魔でしょう」

 これぞ好機、とユレイオンが勢い込む。

「私たちはこれからアダのほうへ現地調査に向かいますので、どうぞお気遣いなく……」

「ああ、ユレイオン、ちょうどよかった」

 弟の台詞をさりげなく遮って、楽しそうに兄が言った。

「おまえにも紹介しておこうと思っていたんだよ。私の許婚だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ