ランスフォール家の朝食
翌朝、朝食のために皆が揃ったのはもう昼も近い時間だった。
まだ何やら眠そうな顔をして、一同が食堂へと集まる。
館の主は一度得た教訓を忘れない性質と見えて、用意されたテーブルは昨夜とはいささか構成を異にしていた。縦に長いテーブルの一方の端に席が四つ、そして主の席と向かい合うようにしてもう片方の端に一つ、二人分はあろうという料理を盛り付けた席が用意されている。当然、シャイレンドルの席である。導かれるままにその席に着いたシャイレンドルは、向かい合った主の顔を見てひそかに舌を巻いた。
――うげげ、あんだけ呑んどいて、まださっぱりした顔しとる……。
昨夜、シャイレンドルと遅くまで酒を酌み交わしていたウェルノールは、そんなことをまるで感じさせない清雅な微笑で少年たちに話しかけている。シャイレンドル自身、かなりなウワバミの自信があったのだが、さすがに今朝は頭が重いような気がする。だが、それでも出された食事をきれいに平らげてしまうのが彼の彼たる所以でもあった。
席配分のおかげで朝食は平和裏に進んだ。ウェルノールは話し上手で、かつ聞き上手でもあったから、少年たちの緊張もじきに解けて、話題の中心は塔の日常生活に移っていった。それでもユレイオンたちの話に持っていかないのはセインの心遣いというものであろう。ユレイオンはその成り行きに感謝しつつ、夕べは味も分からなかった食事に専念した。
だが、食事が終わる頃になると再び緊張感が戻ってきた。ユレイオンはいつ問題の地アダの現地調査に行くことを切り出そうかと間合いを狙っていたし、兄の方はそれに感づいてか間合いをつぶしている。今回は傍観者を気取ったシャイレンドルは、その駆け引きの成り行きをテーブルの反対側から楽しく鑑賞していた。
「……兄上」
ついに弟が万全の勇気を奮い起こして話を持ち出そうとしたとき、侍従が入ってきた。
「お館様」
使用人らしく紺のお仕着せを身に着けた黒髪の青年は、ウェルノールの前まで来ると一礼して言った。
「……ユーフェミア様がお見えでございます」
「それはそれは……」
驚いたようにウェルノールは肩をすくめた。
「サロンにお通ししておいてくれ。すぐに行くから」
「兄上、お客様でしたら私どもはお邪魔でしょう」
これぞ好機、とユレイオンが勢い込む。
「私たちはこれからアダのほうへ現地調査に向かいますので、どうぞお気遣いなく……」
「ああ、ユレイオン、ちょうどよかった」
弟の台詞をさりげなく遮って、楽しそうに兄が言った。
「おまえにも紹介しておこうと思っていたんだよ。私の許婚だ」




