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アダの聖域 ~塔の魔術師シリーズ~  作者: と〜や
ユレイオン、ラナリアに到着する
21/101

なごやかな夕食……?

 少し早かったが、夕食は穏やかに進んだ。街中の物価の高さに財布の紐を引き絞ったセインも、シャイレンドルの懇願に負けて酒を一瓶だけ許可した。

「いやぁ、うまい酒。これが人生やでぇ」

 嬉しげに酒盃をすするシャイレンドルに、セインが一応釘を刺す。

「人生はいいですけどね、お酒はそれだけですよ。もう足が出つつあるんですから。それから今日はくれぐれもこの宿でおとなしくしていてくださいね。花街を探しに出ようとか絶対やめてくださいよ。明日は早いんですから」

「後生やでぇ、せっかく町の中におるんやから、遊びもせんと何が楽しいんや」

「楽しくなくていいんです! 仕事なんですから」

 だだをこねる相手に頭を抱える。使命感などかけらもない人なのだ。そこまで思って、セインはもう一人の師匠がやけに静かなのに気がついた。普段ならシャイレンドルの台詞をたしなめるのは彼の役目だ。二人の言い争いはこの七日でたっぷり聞いたからもう聞きたいとは思わなかったが、あまり静かなのも気にかかる。

 見ると、黒ずくめの魔術師は酒瓶を抱え込んだまま、心ここにあらずといった風情で考え込んでいた。

「なんや、どしたんや? ぼーっとして。もうボケたんか?」

 シャイレンドルもひらひらと目の前で手を振ってみた。……が、反応がない。

「おーい、ユーリちゃーん? ……ダメだこりゃ」

 相棒はつまらなそうに上を向いた。

「ユリちゃんが遊んでくれへんと、なんや張り合いがないなぁ」

「……だからといって遊びに行かないでくださいねっ」

 援護射撃の期待できなくなったセインは仕方なく自分で念を押す。なんだかどっと疲れた。

 ファローンはと見れば、旅の疲れが出たのかそれとも気が緩んだのか、匙を握ったまま舟をこいでいた。シャイレンドルだけ人一倍元気である。

「えー」

「えー、じゃありません。明日の朝には迎えが来るんですから! その時にここにいて下さらないと困ります」

「迎えって何や?」

「迎えだと!」

 二人は同時にいった。

 会話の続きのシャイレンドルはともかく、今まで夢想の彼方を飛んでいたはずのユレイオンまでがこちらをきつい目でにらんでいる。セインは口を滑らせたとばかりに口を閉ざした。

「迎えとはどういうことだ、セイン。まだ東へ向かうのではないのか?」

「そういやわいら、あの爺ぃから詳しいこと何も聞かされてへんで。『詳しいことはセインに言ってあるからセインに聞け』っちゅうて。どこへ行けとも何も言わへんかった。……セイン、お前なんぞ聞いとるんとちゃうんか?」

 二人の迫力に押されて、セインは仕方なく口を開いた。

「実は……長様から口止めされていたんです。『この町に着くまで、目的地がどこなのか、誰に会うのか、絶対に喋ってはならん、悟られてもならん』と」

「何やそれ、わいらが目的地を知って困ることがあるっちゅうんかいな」

 憤慨するシャイレンドルの横で、ユレイオンは顔をこわばらせてつぶやいた。

「セイン、誰に会うというのだ?」

「地震の震源地はここより北の地方で、どうやらアダの聖地らしいんです。地震の被害は北方全域だそうですが、この町で情報提供者の方とお会いして、詳しいことをお聞きすることになっているんです」


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