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第五章 ~枯れない・時~ 3

 放課後になった。生徒は各々、帰ったり、残ってなにかをしたりしている。

 霧は何も言わずに教室を去っていった。おそらく、またアンデッドを探しに行くのだろう。俺は本日、掃除当番になっていた。なのですぐには帰れない。とりあえず、とっと掃除を済ませて、一度俺も帰らなくてはならない。なにしろ、今日は父さんと母さんが帰ってくるのだ。少しばかり散らかっている居間などをしっかりと片づけておきたいのだ。

「その後は……どうするか」

 そして、思い浮かんだのは紅染のこと。おそらく、あいつはまだこの街にいるだろう。紅染の目的はこの街のアンデッドを倒すこと。つまりこの街にまだそのアンデッドがいるということは、紅染もここにいるはず。

「紅染の家に行こう。多分あいつはそこにいるだろう」

 何を話したいのかは分からない。どんな風に接していいか分からない。

 でも、会いたいという気持ちは本当だった。




 最後にゴミ捨てを行って終了、ようやく解放された。

ゴミ捨てはじゃんけんで一人が行かされ、運のついてるはずのない俺は、やはり一人でそのゴミをゴミ捨て場まで運びに行った。

 現在は五時で、かなりの時間がたっている。教室に戻ってきた時には、誰もいなかった。

「まぁいいけどさ」

 じゃんけんに負けた俺が悪いのだから。でも、やはり悲しい気分になった。

 太陽が日に日に高くなっている今の時期、まだ沈むには早過ぎる時刻。俺は鞄を取って、帰ろうとする。

 すると、誰かが教室に入ってきた。

「九重くん?」

 それは、白木 愛奈先生。ここ一週間では、教室付近で先生に会うのは二回目。この前は、紅染を学校で探している時に、教室前の廊下でだ。

 そして今回は教室。紅染のことを探していると、俺は先生によく会った。

「何してるんですか?」

 何も持っていない先生は、教室の前に設置されている教壇の所まで歩いてくる。

「いえ、ただの掃除ですよ。ゴミ捨てから帰ってきて、今下校しようとしていたところです」

「へぇ。見たところゴミ捨ては一人でやってたんですね。偉いです」

「ま、じゃんけんに負けただけですけどね」

 先生はにこやかに話しかけてくる。この前はかなり疲弊した顔をしていたが、今日は以前よりよい顔色をしている。何日かして、疲れが取れたのだろう。

「そういえば、九重くん。貴方、紅染さんのこと何か聞いてない? 家に連絡しても誰も出ないのよ」

 家にいても誰も出ない? 紅染は自宅にいないのか……。それとも居留守か。

「いえ、何も聞いてないですね」

 もし家にいないとしたらどこに行った……。まさかこの街から出て行ってしまったのか? いやでも、そんなはずは……

「じゃあ、紅染さんは貴方とも音信不通で、彼女がどうしてるか分からないのかしら?」

「ええ。そうですね」

 それでもこの後、紅染の家行く価値はある。何か手掛かりがあるかもしれない。どこかへ行ったか分かる何かがそこには……

「そう。なら、貴方に彼女の助けはないわね」

「……え?」

 あれやこれやと考えながら、先生の話を聞いていたため、内容は適当に空返事していたが、その発言には違和感を覚えた。

「どういうことですか、先生?」

 こんどは受け身的な返答ではなく、能動的な質問をする。

 それを聞くと、先生の、その顔は、歪で、気持ち悪い、ものに。

「だから、こういうことよ。九重 カイト君」

 指をパチンと鳴らす。そして一瞬で周りの世界が白くなる。

 いや、周りが変わったのではなく、俺自身の意識が変わったのだ。

「オヤスミ。紅染リオンの仲間。次に目を覚ます時は、地獄に近い場所よ」

 自身を保てない。俺が誰だか分からない。

 そして、俺は、その場で倒れこんでしまったのだ。


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