表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/67

第五章 ~枯れない・時~ 1

 時間は勝手に過ぎていく。何もしなくても、ただ淡々と。

 窓を見ると曇り空が漂っている。遅く、遅く、遅く。

 現在は二時間目。何の授業を受けているなんてのはもはや分かっていない。

 その前、朝のホームルーム前のこと。登校してきた霧が一言だけ、俺に言った言葉。

「昼休み、屋上で色々と話してやる」

 それ以降、授業と授業の間の休みも、霧は話しかけてこなかった。

 重い気分を背中に乗せて、俺は机の上にあるノートを眺めた後、その曇り空を横目で追っていた。




 そして、昼休みになった。霧は先に教室から出ていく。俺はその背中を見つめながら立ち上がって同じように教室を出た。

 階段を一段一段上がっていく。今にも雨が降りそうな屋上は、今日はほとんど行く人が見受けられない。

 そして、屋上につくと、案の定、そこには人が二人しかいなかった。

 一人は腰かけ場に座り足を組み、もう一人は柵によりかかり腕を組んでいる。雨地 雫と雨地 霧。二人は真剣な顔つきで、こちらを出迎えた。

「まあ、座れよ、カイト。別にお前を取って食おうってわけじゃないんだ。そんな強張った顔するなよ」

 霧が苦笑しながらそう言った。だが、それはどちらのことだと、言い返したいほど、今日の霧はどこかおかしかった。

 俺は地面に座り込み、胡坐をかく。そして雫と霧を見上げるようにして、手を前で組んだ。

 少しの沈黙が訪れる。生ぬるい風が、その場を吹きつける。そして、それに耐えられなくなった俺は、いよいよ口を開けた。

「それで、説明してもらおうか。霧と雫。二人がアンデッドバスターだった理由。そして、紅染をあれだけ毛嫌いしていた理由を」

 友人にそのようなことを言うのは少しだけ心が痛んだ。だけど聞きださなければ始まらない。俺は意を決して、そう言い放った。

「……まさか、お前が俺たちの正体を知っちまうとはな……。予想外だったよ」

 霧はそんなことを俺ではないどこかに言うように呟いた。そして、今度はちゃんと俺の目を見る。

「いいか、カイト。ここで俺たちが言うことを聞いて、変な感情移入するなよ。俺たちは、今までにあったことをお前に話してやる。ただ、これは俺たちの歩んできた道だというのを忘れるな」

 そう言って霧は少し深く息を吐き、雫を見る。それは次の言葉の合図だったのか、次は雫が話しだす。

「カイト、先に結論だけ言っておく。私が紅染リオンを殺そうとした理由。それはね、彼女がアンデッドだからよ」

 理由とも言えない理由を雫は言った。そして、どこか遠くを見るように、雫は、もう一言だけつけたした。

「私、アンデッドは全員嫌いだから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ