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第四章 ~会えない・声~ 6

 また、あの夢を見た。

 憎悪の声。悲哀の声。

 照らし出す太陽。なぜだ。今から俺は――というのに、こんなに明るい光を見せる……。

 動かない足と手。しかし意識はある。

 まるで標本に閉じ込められたかのよう。ならばそれはいったい誰に見せるものなのか。

 そんなの決まり切っている。俺は、この存在は、そのためにあるのだから。




――天へ結ぶ一本

 地と並ぶ一本

 交差するその場所で

 私のこの身は

 ただそれだけに捧げましょう

 誰もが無視してきた

 その重い鎖

 私が背負ってみせましょう

 だからどうか 

 どうか許してください――




 そう、俺のこの鎖は、絶対に解かれない――




 瞬間、俺は目を見開く。息づかい荒く、また身体は、汗でびしょ濡れだった。

 ここは俺の家。そして、俺の部屋。窓から入ってくる光は少なく、どうやら今日は曇りのようだ。

「……また、あの夢か……」

 顔を手で覆いながら、その夢に悪態をつく。煮えたぎるような痛みの中で、ただはっきりと自分は、その死を受け入れている。それがあまりにも気持ち悪過ぎて、吐き気がする。

 時計を見ると、七時ちょうど。昨日あんなことがあったのに身体は規則的に動くのだなと自分自身で感心してしまう。

 そう、昨日。次々と襲いかかってきた真実。アンデッドバスターだったクラスメート。そしてアンデッドだったクラスメート。

 あの後、紅染がその場から去ったその後だ。雫と霧は俺の体に外傷はないか見て、こう告げた。


「身体に異常はない。これなら一人で帰れるよね? もう夜も遅いし、私たちも後の片付けが残ってるから、早く帰って、寝ること。詳しい事情は明日話すから」


 そうして俺は家に帰ってきた。放心状態でベッドに横たわると、すぐに眠りにおちてしまった。最後に紅染の別れ際のヴィジョンを頭で再生しながら。

「やっぱり、紅染はもう、現れないのか……?」

 紅染はアンデッドだった。それを雫の口から初めて俺は知った。

 アンデッドでアンデッドバスター。紅染はなぜそのような、矛盾している道を選んでいるのか……。


 そして、笹江や、他の人を殺したのも、本当に紅染なのか……。


 俺は頭を振る。

「そんな訳がない。だって、あいつは……」

 思い出すのは一緒に話していたあの時の顔。一緒に歩いていたあの時の顔。

 

 そして思い出すのは、夕焼けに染まった教室で、血の匂いをさせていたあの時の姿。


「っつ――」

 いやなことを思い出してしまう。このままでは悪いことしか考えられない。

 俺はその嫌な考えを払拭するため、ベッドから起き、朝食を作ることにする。

 しかし、その作った朝食も、今日ばかりは食べる気が起きなかった。




 朝、学校、登校。

 そして、その席にいた彼女の姿は、一時間目になっても見ることはなかった。その声に会えることなく、今日は一日過ぎていくのかと、俺は、その時思っていた。

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