表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/67

第二章 〜見えない・闇〜 1

 ここはどこだろう。

 第一に沸いた疑問がそれだ。

 目の前には多くの人々……いや、民衆がその場を埋め尽くしている。

 そしてその眼は恐ろしいほどの憎悪、また中には悲哀を向けるものがいた。

 なぜ、俺はこんなところにいる?

 ある人は怒鳴りつける。どこの言葉かはわからないが、確かにそれは、俺を責めていた。

 ああ、痛い。主に両手首と足首だ。とてつもない刺激が俺を襲ってくる。

 なぜ、という言葉が浮かぶ。

 それは、この現状がじゃない。

 

 なぜ俺はこんなことをされても、心はとても満ちているのだろう。


 とてもまっすぐな意思。まるで剣のように鋭すぎる。

 この気持ちはいったい、どこから生まれてくるのか。

 なぜ俺はこんなにも満足なのか。

 そして俺は死を迎える。 

 自身が望んだ、希望を抱いて。


 そこでその夢は切れてしまった。




 目が覚めると、そこはいつもの部屋だった。机、ベッド、本棚。質素な家具が鎮座している、住みなれた場所。

「夢か……」

 久々に夢というものを見た。しかもとてもクリアで強烈な。

「なんでいきなりこんな夢を見たんだろう」

 夢というのは、ある程度の脳内の知識からアウトプットされるもの。しかし今の光景も、話していた言葉も、まったく分からなかった。

「何か気味悪いな」

 その夢に何か深い意味でもあるのだろうか? 何かの預言とかなのだろうか?

「ま。そんなん考えてもしかたないか」

 俺はそう自分の疑問を振り切って、とりあえずベッドから起き上がり、朝食を作ることにした。




 本日は親父と母さんが旅行に行ってから二日目。財政上の問題もまったくなく、俺は今のところ生き延びられそうな気がしている。

 今日の朝は軽めの食事。パンと目玉焼きという王道料理で済ませた。

 そして現在は学校の正門。ホームルーム十五分前の余裕登校だった。

「だけど、この時間でも結構人いるんだよな」

 辺りを見回すと何人もの生徒が昇降口へ向かっている。基本、この学校の生徒はまじめなので、時間にもしっかりしているのだろう。

 周りの流れに乗るように、俺も昇降口へと向かう。すると背後から何やら騒がしい声がしてくる。

「なんだ?」

 振り返ってその方向を見る。そこには登校してくる紅染 リオンの姿が。しかも大量の生徒たちを引き連れて。

「うわぁ……」

 思わずそんな言葉が出てしまう。優雅に登校してくる紅染。その周りをきゃーきゃーと群がっている主に女子生徒。もちろん男子も何人か集まっているが。

「紅染さん! 今日のお昼一緒にどうですか?」

「こっちが先です! 紅染先輩は私と一緒にお昼をとるんです!」

 ワイワイガヤガヤ。

 とてつもない嵐だ。そしてそれを全て無視して歩いている紅染も紅染だ。

 やれやれと思いながら、俺はまた昇降口に向かおうとする。するといきなりのこと。

「あら、カイトじゃない」

「げ……」

 そんなことを言って、俺のところに近づいてくる、台風の目。なぜだろう。ただ、クラスメートに話しかけられただけなのに、妙な殺気を感じる。

「あ、紅染……。俺になんか用か?」

「いえ別に。会ったら挨拶するのは普通じゃないの?」

 それはその通りなのだが……。お前、その対象が少ないだろ?

「わかった。おはよう、紅染。とにかく俺に近づかないでくれ」

 つーか、これ以上話してたら真面目に首が危ない。視線で人を殺せるのは嘘じゃないかもしれん……。

「何言ってるの。同じクラスなんだから、一緒に行ってもいいじゃないの。ほら行くわよ」

 そんなことを言って、俺の手を掴んで歩きだす。

「お、おい!」

 なるほど、と今日の夢は正夢だったのか。

 俺は今更ながら今朝見た未来の予言におそれおののいているのでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ