第1話 青い春
それは何とも言いようの無い感情で、まるで真っ暗闇を何の頼りも無くさ迷っているような・・・そんな感情がこの3ケ月常に続いている。
原因は分かっている。
1年半前に離婚した元妻、奈津美のおかげだ。
とは言っても、彼女に100%責任があるわけではない。いや、90%以上僕のせいなのかもしれない。
とにかく、この複雑な情況は彼女を裏切った罰なのだと自分に言い聞かせる事でしか治まらないのだろう。
奈津美に初めて出会ったのは中学2年生の頃だ。
彼女は転入生で、まぁこう言っちゃあなんだが・・・普通の大人しい娘だった。
僕等の中学校は都会でもなく、田舎でもない、是も否もない中学校だ。
校舎の直ぐ横を都心へ向かう線路が通っていて、時たま通る電車の音が僕は何となく好きだった。
(今となってはきっとうるさいとしか感じられないだろうけど・・・)
そんな普通の中学に転入してきた普通の奈津美を対して意識もせずに、話すことも無く、アッと言う間に3年生になった。
奈津美とどうして友達になったかは正直覚えていない。
多分、男女入り交じった10人前後の友達グループにいつの間にか自分も奈津美も加わっていて自然と話すようになっていったのだろう。
そして、その頃には奈津美は何人からも告白されるような¨モテる¨女の子になっていた。
「俺、あいつの事・・・好きなんだ。」
グループの中でさえ2人も3人もそんな話が飛び交っていた。
例外なく僕も恋に落ちていた。
容姿だけではなく奈津美には何か特別な魅力があった。
フェロモンプンプンとかではなく、微笑みかたや喋り方に男を引き付ける何かがあった。
(そのせいで後にエライ苦労をすることになるのだが・・・)
ましてや中学生なんてお子様もいいとこ、コロッとやられてしまうのだ。
そして念願叶ってか、卒業も間近のある日の夜に告白し、寒空の下可愛いキスをくれたのだった。