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ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→  作者: ぱちぱち


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第99話 一也くんが連れてくる子みんなそんな感じだったでしょ

 米国支社に所属する新しい人材をスカウトしてきたと話すと、アキコさんは呆れたような表情を見せた。


「一也くん。また?」


「なにがまたなんでしょうか???」


「一也くんが連れてくる子みんなそんな感じだったでしょ」


「ぐう」



 痛い所を突かれたな。そういえばアキコさんに根回ししてスカウトした事って無かった気がする。あ、いやある。こういう奴が居るんでって言って『ひばり』とかは連れてきたはず……多分。きっとメイビー。


 まぁ、呆れられたけれどもアキコさんから権限は貰えたため、ケイトと彼女のお祖母さんを正式に米国支社で雇う事は出来るようになった。米国支社の代表者である『ひばり』に仲間が増えるよ! やったね! と伝えると『おひとり様勤務がぁぁ!』と断末魔を上げていたが、まぁ日本のスタッフと一瞬で仲良くなったこいつなら問題ないだろう。


 さて、その前にやる事はいくつもある。まず、ケイトのお祖母さん、レイチェル・テイラーさんを腕のいいお医者さんに見せる事だ。マックス氏に紹介して貰った大きな病院に彼女を連れて行く。イロリー・マックスの紹介は凄まじい効力を発揮し、病院側は最優先でレイチェルさんの診察をしてくれた。


 その結果、彼女の不調の原因が長年の栄養不足と過労によるものだとの診断が。どうもレイチェルさん、育ち盛りのケイトに多く食べさせるために自分の食事を削っていたらしい。


 その事が発覚してケイトが激怒。これに関してはレイチェルさんが悪いし、ケイトの怒りは尤もなものだ。今後はこのような事がないよう、ちゃんとした食事を手配すると雇用者の立場で伝えると、レイチェルさんは恐縮したように頭を下げる。


 一先ず病院で点滴を打って貰うと、見違えるようにレイチェルさんの顔色は良くなった。ただ、あくまでも一時的な物だからちゃんと栄養を取って療養するように医師からは通達を受けたため、暫くは家事手伝いなどをこちらで手配しておくべきだろう。


 そして、その前に重要な事がある。


 レイチェルさんのピアノの腕前を見せて貰わないといけないのだ。



『お見せするような腕前ではないのですが』


「貴女の指を見ればどれだけ貴女がピアノに打ち込んでいたかが分かります。私は貴女の指を見て判断を下した。もしこの判断が間違っていたとしても約束はちゃんと履行しますのでご安心ください」



 そう言って用意したピアノに彼女を座らせると、最初は戸惑っているように見えたレイチェルさんもピアノに手を置き、最初は遠慮がちに。音を確かめるようにしながら演奏を始めた。


 レイチェルさんは幼少期からずっとピアノを弾き続けていたらしい。賞がある大会などには出た事が無かったそうで、米陸軍の将校だったお祖父さんと結婚した後も、息子さんが生まれた後も、そして息子さんが奥さんを連れてきてケイトが生まれた後もずっと、彼女はそのピアノを家族のために弾き続けていたという。


 50年余りもの間、家族の為だけに。毎日休みなく、彼女はピアノの前に腰を下ろし演奏をしていたのだ。



「綺麗……」



 レイチェルさんのピアノの音を聞いた百山さんが、一言。ぽつりとそう口にする。それまで事の成り行きを見守っていた他の3期生たちが、その言葉に同意するように頷いているのが見えた。


 レイチェルさんの演奏は、自然だった。楽器を用いて人間が音を立てている。それだけの筈なのに、目を瞑れば自分が流れる川のほとりにたち、せせらぎの音を耳にしているかのような安心感があった。風景が垣間見えた。


 この曲を作った作曲家の意思が彼女の指とピアノを伝って俺たちに届いている。それが分かるのだ。


 俺も彼女たちに同意して頷くべきなのだろう。これが弛まぬ研鑽の結果だと、彼女たちの成長に繋がるよう教えを授けるべきなんだろう。それが正しいという事は頭では分かっている。


 ただ、体がどうにも動かない。


 彼女のピアノの音を聞いて、そう。ガラにもなく俺は、感動してしまっているのだ。俺だけではなく、マネージャーも含めて。野暮なことをしたくないと体がそう叫んでいるのだ。


 やがてレイチェルさんの演奏が終わり、疲れたような表情を浮かべた彼女がこちらに視線を向ける。自分の演奏はどうだったかと視線で問いかけている。その視線に応える術はただ一つだろう。


 パチパチパチパチと、拍手を送る。彼女の演奏は称賛されてしかるべき素晴らしいものである。



『素晴らしい。立場上僕も色々な演奏を耳にしてきたが、それらに勝るとも劣らない演奏だった! 音の向こうに、なんだろうな。川のせせらぎを感じると言ったら変かな?』


『イロリー。どこにも川なんて見当たりませんが』


『情景が思い描かれるって事さ。音楽を通して人ははるか遠くの事柄を想像する事が出来るんだよ、ヴァーイ。しかし、流石はカズヤがスカウトするだけはあるね』


「あと少し遅かったら他に取られていたでしょうね。危ない所でした」



 マックス氏が俺の手腕を褒めたたえるようにこちらを見たので、あくまでもレイチェルさんが素晴らしいと念を押すためにそう返答する。孫であるケイトも含めて見る目がある人ならすぐに彼女をスカウトしただろう。彼女の演奏するピアノの音色は、それだけの価値があるものだった。アキコさんも大満足のようだし、今回のスカウトも大成功と言えるだろう。



「凄く……凄い……ああ、でも……ううぅん」



 ただ、一つ問題があるとしたら実力的には一番レイチェルさんやケイトに近いはずの百山さんが、彼女たちの歌や演奏を耳にするたびに悩ましそうに頭を抱えている点だ。ケイトやレイチェルさんの加入を機に切磋琢磨してほしいと思っていたのだが、どうもそんな感じの様子には見えないんだよなぁ。実力差でやる気がなくなるとかそういうメンタルの子じゃないと思うんだが。


山里一也(男)26歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)

『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)

『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)

『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)

『魂羽織』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)

『拳創成期』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)

『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)



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