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ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→  作者: ぱちぱち


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第92話 お前も大変だな。うちに就職しないか?

 ゴールデンウィーク初日。マックス氏に手配して貰ったプライベートジェットにのってVVVのメンバー全員がアメリカの土を踏むこととなる。まぁ名目は研修旅行だが俺と『あきら』以外はちょろっとアメリカ支社を覗いたら残りは実質ただの旅行になるけど。あ、いや。アキコさんはマックス氏とお話くらいはしないといけないかな。


 飛行機に乗る際はちょっと警戒したが、流石に今回は特に大きなトラブルもなくテキサスの空港に到着。普通の旅客機だと直行便がない空港だが、プライベートジェットならそのままこっちに飛んでこれるから楽だ。まぁ、1フライトで数千万円のお金が飛んでいくけどね。それだけの価値が今回の渡米にはあるとマックス氏は考えているわけだ。


 さて、今回は大所帯なので当然荷物も多い。特に女性陣は1週間分くらいの着替えを持ち込んでるから全員がトランクを二つくらい持ってきている。まぁプライベートジェットだから荷物が出てくるのは早いんだが、それでも少し時間がかかる。全員が荷物を受け取るまで30分ほどかけ、空港の検査場で荷物を確認してもらいゲートをくぐって米国へ入国――する前に嫌な予感がしたので立体投射機を起動する。


 そしてゲートが開いた瞬間、フラッシュの雨が俺達を照らした。



「眩しっ」


「え、なになに?」


『始まったわね……私の時代が』


「それはないっすよ先輩」



 あっぶねぇ~。俺は兎も角他のスタッフの素顔バレは不味いし、間に合ってよかった。ゲートの向こうにで警備員と揉み合う取材陣を眺めながら、一旦ゲートの中に戻ろうかとアキコさんと相談していると、取材陣と警備員がモーゼのようにバッと左右に分かれていく。



『すまない! どこかから君たちがこの空港から入国すると漏れていたみたいでね!』



 慌てたような口調でそう言うマックス氏は、恐らく職場から急いできてくれたのだろう。普段着ている高級そうなスーツではなく、結構ラフな作業とかにも使えそうなジーンズとポロシャツという出で立ちだった。マックス氏に向けてフラッシュが焚かれるが、彼は慣れているのかそれらは一顧だにせずにアキコさんに右手を差し出した。



『初めまして、アキコ。電話では何度かお話したけど、こうやってお会いできて光栄だ』


「はじめまして、マックスさん。今回はよろしくお願いします」



 拙い英語でマックス氏にそう返答する3Dのアキコさんとマックス氏が握手を交わす。その瞬間、周囲に居たカメラマンたちが一斉にその瞬間をカメラに収め、そして続いて俺にカメラを向ける。



『ミスタークマコー! DETARAME NEWSのサギガーです! 一言お願いします』


『ベアナックルの大会に出場すると噂されていますが本当ですか!?』


『総合格闘技への転身はいつ頃になるんでしょうか!』


『クマコー!』


『ミスタークマコー!』



 日本に帰ろう。そう決意した時にはゲートは無情にも閉じられていた。






 マックス氏の用意した車両に乗り込み、VVVの米国支社へと向かう。乗り込む際に久しぶりにあったクラウザーさんとゴツンと拳をぶつけ合うと、3期生の不動くさりが「おっほぉぉぉ! 意外なカップリング!」と騒ぎ始めて同じく3期生の御園みつきに思い切りどつかれたりしていたが、まぁそんな事はさておき。



『ふぇ! ……ほ。本当に来た……私のおひとり様ぬくぬく勤務がぁ……』


「行くって言っただろうが。嘘だと思ってたのかお前」


『信じたくないことがこの世の中には多すぎるんですよぉ。生きたいように生きられないこんな世の中じゃ!』


「え。なにあいづ。師匠と距離感……近い。近ぐない?」


「あれ。ラブの匂い? 私が受験してる間になんかラブの波動が!?」


『えぇ……一也さんは、ないですぅ。100歩譲って近所のお兄ちゃんですねぇ』


「なんでいきなりフラれた???」



 滅多に乗らないような高級車に乗ってVVVの米国支社に赴くと、事前に連絡を入れていた筈の『ひばり』は出迎えの準備を一切しておらず事務所のソファにのんべんだらりと寝ころんでいたので、不動くさり用にみつきが持ち込んでいたハリセンを借りて頭をひっぱたく。もちろん事務所内なので配信されており、スマホで確認するとコメント欄は大盛り上がりである。『ひばり』を働かせろというコメントが最大多数か。凄い人気者だな、お前。


 この特殊な生態の生き物と日本のスタッフが仲良くなれるか少し心配だったが、ひなちゃんや3期生を中心に結構仲良くなれてるみたいだ。その過程で俺がいきなりフラれたのは少し、かなり物申したいが。まぁ、俺から見ても『ひばり』との仲を噂されるのは一緒に帰って友達に噂される高校生並に恥ずかしいので勘弁なんだが。


 あまり大きな事務所ではないので、流石にVVVのスタッフ全員で入るのは難しい。という訳で『ひばり』とこの機会に話したいという一部のスタッフを残して残りの面々はマックス氏の会社にお伺いする事となる。マックス氏のエスコートでスペースシャトルとかの実物を見せてもらうらしい。


 俺と『あきら』は別行動だけどね。



「先輩も一緒に来りゃあ良かやなかですか」


「君らと違って俺らは仕事があるんだよね……?」


「たべる、藪蛇や。旦那がピキっとる」



 ナチュラルに煽ってきた満腹たべるに満面のクマスマイルを見せると、残りの3期生が彼女を抑えてそそくさと退散していく。もちろんここまで配信には乗っているため、コメント欄はそこそこ盛り上がってるだろう。折角の旅行を完全にお休みにするのは勿体ないからね。俺と『あきら』以外のスタッフはアキコさんを筆頭にこうやって随所随所で配信作業は行う予定だ。



『お前も大変だな。うちに就職しないか? お前ならすぐに高給取りになれるぞ』


「いやー、好きでやってること何で」



 案内役のクラウザーさんに引き抜きをかけられるが、どんだけ待遇が良くてもこの職場を離れる気にはならない。なんせアキコさんと一緒に自分で作り上げた場所だからな。思い入れが違うよ、やっぱり。


山里一也(男)26歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)

『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)

『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)

『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)

『魂羽織』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)

『拳創成期』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)

『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)



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― 新着の感想 ―
満面のクマスマイル この時だけぬいぐるみクマフェイスじゃなくてリアル熊フェイスだったりしてw
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