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ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→  作者: ぱちぱち


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第81話 それじゃあアキラが日本に帰ってしまうじゃないか!

 米国に渡ってからそろそろ1週間が過ぎようとしている。とはいえほぼ毎日ひばりのテレポートを使って日本に戻っているため、割とそんな感じはしないんだが。もちろん日本に戻っているのは遊んでいるわけじゃなく、魂羽織に『さやか』たちを入れ込む作業を行っているのだ。



『私も行きたかった……アメリカに!! 行きたかった!!!』


「暴れるなら自分のベッドで暴れろよ。俺のベッドでまたやらかしたら1か月外出禁止(物理)な」



 魂羽織に入るのを外出と言って良いかはさておき。現在、レンタルした人物を入れ込むための器である人形、『魂羽織』は『残夢』の度重なる改良によって大体半日ほどは稼働する事が出来るようになった。当初は8時間ほどだったのを考えると1.5倍になったと言えるが、まだ半日とも言える。


 魂羽織の稼働時間が終わったプレミアムレンタル権者はどういう原理か俺の頭の中?に戻ってくるため、また『魂羽織』に再度入れ込む必要がある。そのため米国に渡米したその日からこっち、毎日日本の朝の時間に合わせてトイレに入ったりして姿を隠し、『さやか』の部屋や『かすが』の部屋にテレポートして彼女たちを“起こして”いるのだ。


 ……こうやって文字にすると毎朝女の部屋に入り込んでる不審者みたいに見えるな。アキコさんにだけは絶対バレないようにしよう。変な誤解を受けても困るしね。


 さて、そんな雑用の話は兎も角。米国での仕事に関しては順調の一言で、マックス氏の傘下企業の担当者と自動翻訳機能の導入プランについてと、実際にどのように活かすのかという話し合いを毎日行い、フィードバックなども含めて当面の体制は整えることが出来た。後は実際に各社の扱う端末に合わせたプログラムの作成になるから、ここから先は我らが誇る『九十九あきら博士』に任せることになる。


 という訳で俺はお役御免――とはならない。『あきら』の足元くらいにしかならないが、自動翻訳のプログラムを触れるくらいには俺にも知識がある。『あきら』の行いたい事を補佐するという助手的な立ち位置でサポートするのがここから先の俺の仕事だ。


 まぁ、サポートと言っても実質は『あきら』と先方の担当者の間に入って『あきら』の言葉を要約して伝える人間翻訳機なんだけどね。



『私英語で喋ってるよ?』


「伝わらなきゃ意味がないでしょ」



 どういう事かというと『あきら』に慣れてない技術者は超高確率で会話の途中で『あきら』の言っている言葉の意味が分からなくなってくることだ。これ、知識がある人ほど陥りやすいみたいで、1~2世紀先の常識で話す『あきら』の言葉に最初はついていけるように思えても途中で分からない単語が増えすぎて完全に混乱しちゃうらしい。逆に知識がない人の方が『あきら』とは真っ当に話せたりするのだ。マックス氏とか。


 というわけで俺の役割は脱落した技術者に「今はこういう話をしてるのでこうやって欲しいんですが」と軌道修正を図る事だ。どちらの言いたい事も分かるから出来るけど、割と精神的に疲れる作業だ。



『あー。ミスター・クマコーはアキラのお兄さんという事でしたが。もしかして貴方もどこかの大学で工学を研究されていたのでしょうか?』


「いえ。お恥ずかしながら私は高卒です。プログラムについては『あきら』に教わりながらの独学になりますかね」


『なんと……これほどの知見の方が高等教育も受けていないとは。信じられない!』



 そしてそういう橋渡しのような事をしていると結構目立つらしく、学歴とかを尋ねられるんだがその度にこの話をすることになる。学歴社会のアメリカで高卒なんて人権ないぞって言われたらどうしようと思っていたら、聞いてきた人たちは誰もが目を見開いて驚いてやたらと好意的に接してくるようになった。


 どういうことなのか分からず、マックス氏の傍で暇そうに周囲を警戒していたクラウザーさんに尋ねてみたら、少し考えた後にこう答えが返ってくる。



『実力主義の会社だからでしょう。大学という教育機関も使わずに独学で磨き上げたという部分に敬意を持ったのです』


「なるほど……腑に落ちました。教えていただきありがとうございます」


『構いません。初日は、大変な失礼をいたしました。改めて謝罪を受け取っていただきたい』


「受け取ります。『あきら』を庇おうとしていた点は評価してますので」



 そう言葉を交わした後、どちらからともなく手を差し出して握手を交わす。契約も交わしたし彼とこれ以上揉めてもなんの得にもならないし、あれで彼みたいな危険に敏感な人物が今の俺にどういう反応をするかが分かった。割と本気で彼には感謝しているんだ。今回のように偉い人に話しかける機会がある際は注意しとかないといけないだろうな。





 さて、仕事の方は順調に推移しているため俺だけならそろそろ日本に帰っても良いんだが、マックス氏にとってはむしろ本番とも言えるイベントがあるためまだ帰国する事が出来ない。何かというと『あきら』の講演会である。



『僕の知り合いや友人みんなに声をかけたんだ! おかげでちょっとだけスケジュール調整が必要になったけど、アキラの話にはそれだけの価値があるからね!』


「なるほど。具体的にいつぐらいになりそうでしょうか」


『そうだね、今年の夏ごろには10万人規模の会場を押さえられそうだからそれを目途にしよう。もちろんその間の滞在費用はこちらが持つとも』


「わかりました。じゃあ今のプロジェクトが進み次第帰国しますので準備が整ったらまたお呼びください」


『ちょっと待ってくれ! それじゃあアキラが日本に帰ってしまうじゃないか!』


「帰さない気だったんです???」



 予想外の一言に思わず素でそう尋ねたが、相手のマックス氏は俺の追及にしどろもどろになりながら目を逸らしている。あ、これ割と本気だな。流石にうちの技術担当を引き抜きしようとするのは頂けないんですが、どういう落とし前をつけてくれますかね。


 彼女と人類の未来について語り合うのが最高過ぎてつい。一緒になにか仕事をしてみたいと思った。うん、ええと、ちょっと真っすぐにそう言われると困るな。どうしよう。


 あ、あきらがうんって言うならまぁ止めるつもりはないんですが、流石にうちの会社の要を持っていかれるのは困りますんで。はい、何か仕事があるなら今回みたいに誘ってくれます? 面白そうならアイツもうんって言うと思うで。はい。



山里一也(男)26歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『天災科学者』(料金:ひなちゃん家のご飯)

『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)

『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『もう一人の俺』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)

『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生』(料金:組織)

『魂羽織』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『至高の人形師』(料金:人形作成・開発費)

『拳創成期』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『無双女帝』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)

『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター』を獲得しました(料金:休日)



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