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第48話 これもう案内するなんてレベルじゃないのでは?

「わ、私たちが案内ですか!」

「そ。どうせだしうちのウリは技術だけじゃないって事も見せたいからね。バイト代もちゃんと弾むわよ!」

「やった……ジャンボパフェジャンボ食べ放題」

「蝶子ちゃんはご両親に預ける形ね」

「がーん」



 イギリスのブリカス仕草によって始まった一連の騒動は、じゃあリアルイベントやれば解決だよね! という力業で解決の見通しがたった。あとは無難にイベントを運営すればいいのだが、ここで大きな声で「待った!」と叫んだ人が居る。


 我らが社長、アキコさんである。



「どうせVVV名義で発表会? みたいなことをやるんでしょ。だったら技術発表だけじゃなくてVVV全体のイベントにした方が良いんじゃないかな」


『お。良いねー! うちのVタレみんなで合唱曲でも歌っちゃおっか!?』


「オリジナル楽曲! そういうのもありね!」


「誰もオリジナルとは言ってませんよ社長」


「知り合いの作曲家に声をかけましょうか」


「その電話を止めようか鹿谷くん」


「あたし三線なら弾けます!」


「そういう話でもないんだよみきちゃん」



 うちの会社は基本的にアキコさんがやると言ったら全員がノリノリでやる方に動くワンマン会社だ。船頭が一人しか居ないというと良く見えるかもしれないが、アキコさんがやると言ったらストッパーが居なくなるという意味合いでもあるためやり過ぎには注意が必要だ。


 え、俺が止める? ないない。アキコさんがやりたい事をやるって決めて作った会社なんだから一緒に会社を立ち上げた俺がストッパーになるわけがないだろ。アキコさんのやりたいに便乗させてもらってるんだから、一緒になって全力で楽しむに決まってる。



「とはいえこれはちとやりすぎたかもしれんな……」


「うちなーのマジムン(魔物)より怖かったねぇ……」


「俺らついつい夢中になって作っちゃいましたから……」



 立体投射機についての技術発表会になるのだから来場者を楽しませるのも立体投射機じゃないとね! というアキコさんの言葉に感化された俺達スタッフはじゃあ超絶リアルなお化け屋敷作ろうぜ! だとかアニメの中に取り込まれてみるのもありじゃ? とか色々と立体投射機で遊げふんげふん。色々なシチュエーションで動かせないかを試して、それらのアトラクションを実際に体験してもらう場を作る事にした。


 あーでもないこーでもないと話し合った結果、最終的に一つのホールを丸々使ってホラー映画のワンシーンやヒーローアニメのワンシーンなどに入り込むような形のアトラクションを作り上げることになる。機材持ち込みや転倒防止の保護など設営作業はメンチの飲み友達であるおっちゃん(建設会社重役)の伝手で信頼できる業者さんに頼み、数日ぶっ通しの作業で会場は無事に完成。


 さて、じゃあ試運転を。という事で早速スタッフ一同で作成したホラーハウスに突撃したのだが、ユタの修行で耐性があるみきちゃんと俺、それにホラーが大好きだという猪上くん以外はギブアップするという大惨事となったのだ。



「一也くん。これ、これ無理。メンチくんにお祓い頼も?」


「メンチ監修なんでお祓いは必要ないんですよね」



 腰が抜けたらしいアキコさんの可愛いお願いに、残念ながら答えることが出来ず首を横に振る。アキコさんがやりたいって言ったから、メンチの奴もちょっと張り切って『煉獄列島』本編で自分が経験した地獄の光景とか対戦相手の情景を付け足していった結果、立体投射ホラーハウスは一般人だと耐えがたいほどのクオリティになってしまった。これ心臓が悪い人はお断りのレベルだな。


 しかたない。ここはちょっとダウングレードを挟もう。あと、映像中に護衛役とかを付けて多少でも安心感を持たせる方がいいかな?


 まぁ、出来が良すぎるという嬉しい誤算もあったが、そのほかのアトラクションは特に問題なくどころかアキコさん大満足の出来栄えに。VVVに所属するVタレで総合案内を交代で回す段取りも整え、全体のスタッフとして雇ったバイトを鹿谷くんが統率。警備には雨宮セキュリティーが入り、イベントの準備は万端と言える状況だ。



『私ならここであきらを襲うんだがな』


――裏社会のドンのお言葉だ。皆、警戒しよう


『裏社会のドンじゃないわい! 仕掛け人はかすがだろう』


『私は裏に回って嗤うのは性に合わない。叩き潰した相手は目の前で嗤ってやるのが勝者の義務だろう』


――そんな義務ないから



 『リリーベル』と『かすが』という裏社会にも精通した二人組の言葉に多少の警戒感を持ちながら家に帰り、念のために防衛体制も敷いておくが特に何事もなく一夜が明ける。流石に考えすぎだったか。まぁ、大体的に告知したイベント前になにかが起きたら大事になるからなぁ、なんて考えながら準備をしていたアキコさんたちと合流。社員一同で大きなバスに乗って会場に向かい、そして会場前にすでにできている長蛇の列に戦々恐々としながら会場入りをする。


 念のために交通整備の手続きを行って正解だったかもしれん。噂に聞くコミケ並みに長蛇の列になってるんじゃないだろうか、これ。


 技術の発表会なのにこんな規模になるなんて。『九十九あきら』の持つ技術力が並外れてるのは知っているが、流石にちょっと予想以上だったなぁとか思いながら『あきら』になったり『リリーベル』になったり『かすが』になったりしながら会場内の最終調整を行う。人形はまだ長時間稼働が難しいから出来るだけ『あきら』と『リリーベル』に同時に仕事が入らないように注意してスケジュールは組んである。


 もちろんなにか事が起きた時は控室に持ち込んでいる魂羽織を使う事になるだろうが、今回に関してはいざって時の安全マージンだな。



『VVVエキスポはただいまから始めまーす! 来場者の皆様ー! 走らないでねー!』



 準備をしているとあっという間に時間は流れていくものだ。アキコさんのちょっと気が抜けた開始の言葉と共に、津波のような人波が入り口から会場内へ入ってくる。



『ヤバ』


「ヤバ」


「……やば」



 開幕の総合案内兼ひなちゃんと蝶子ちゃんのお目付け役としてアキコさんに頼まれ、その人津波を間近に見た俺達の言葉からは語彙力が消し飛んでいった。これもう案内するなんてレベルじゃないのでは? 



山里一也(男)25歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『天災科学者』(料金:ひなちゃん家のご飯)

『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)

『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『もう一人の俺』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)

『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生』(料金:組織)

『魂羽織』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『至高の人形師』(料金:人形作成・開発費)


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