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第27話 本物

「アキコさんとこは悪くねぇ。こんないちゃもんつけてくる奴が悪ぃに決まってんだわ。だが……警察にも相談したんだが、どうにも難しいみたいでなぁ」

「父さん。私、Vタレ辞めたくないよ」

「蛯名さんのご不安は当然です。ただ、こういう手合いは少しでも引いたら要求を通せると嵩に掛かってくるかもしれません。学校の中は私たちも手が出せませんが、学外ではうちが契約している警備の者を付けて貰おうと思います」

「それはありがてぇんだが……費用は」

「そちらはご安心ください。弊社で全て賄えますので」



 アキコさんと一緒にそば処「えびな」へ向かい、ご家族とひなちゃんを交えて今後についての話し合いを行う。蛯名さん達はひなちゃんの活動を好意的に受け止めてくれているが、今回の事態に関しては正直、どうしていいか分からないという状況らしい。


 Vタレというものについて彼らは顔出ししないテレビのタレントのようなものという認識らしいから、こういうことが起きるかもとは思っていたそうだ。ただ、実際に起こってみると、予想以上に面倒で参ってしまいそうだという。


 警察はこういう場合、余り役に立たない。基本的にストーカーというのは認定が難しいし、出来ても接近禁止命令を出したりする程度になる。しかも相手は未成年の為、口頭注意で終わる可能性が高い。また、相手が地元の子というのも問題である。地元に密着した飲食店である「えびな」にとって、地元民とのトラブルというのは出来る限り避けたいものなのだ。


 まぁ、相手側が完全に悪いので蛯名さんも事によっては相手の親御さんに怒鳴り込むつもりだと言っているが。そういうトラブルは出来れば避けた方がいいだろう。



「相手の親御さんにはこの話は……?」

「うちの店に来て騒いだ時に行った。そん時は謝られて、ちゃんと言い聞かせると言ってもらったんだがなぁ」



 相手の練間くんの家は隣町の内科病院の経営者らしい。地元の名士の一人でもあるため、その時は蛯名さんもその謝罪を受け取って引き下がったそうだが、注意すると言った翌日練間くんはひなちゃんの悪評を学校でばら撒いたそうだ。


 これで考えられる事は2パターン。練間くんのお父さんが彼への注意をしなかったか、練間くんがお父さんからの注意を一切顧みずに行動しているかのどちらかだ。前者も質が悪いが後者だった場合は目も当てられない。ストッパーがない暴走機関車みたいな存在って事になるからな。


 ……本当に、送り迎えだけでも警備を付けた方が良いかもしれない。“本物”は善悪関係ない。全ての基準は自分になるし、問題は全て自分以外に責任があると考える人間ってのは世の中いくらでもいるんだ。俺なんて相手の自爆なのにナイフでめった刺しにされたしなぁ。


 ただ、この警備の話しはひなちゃん自身が難色を示した。送り迎えに警備員がつくなんて、それこそ本当の意味で良いわけが出来なくなるからだ。練間くんとやらの行動を考えると、火に油を注ぐのは目に見えている。ただ、一人で行動させることは絶対に許容できない。


 となると、傍目には警備だと分からない人物によっての護衛が一番望ましいわけだな。その結論に達した瞬間、頭の中で『さやか』が『はいはいはいはい私! 可愛くて美少女な赤神さやかちゃんなら万事全く問題なっしんぐ!!!』と騒ぎ始めたが、他の面々から集中砲火を浴びて黙り込んだ。どうせお前手加減できないだろ、とか相手を殺さずに無力化できるんかお前、だとかそんな感じだ。


 いやね。確かにひなちゃんを守るって意味なら『さやか』は十分に仕事を全うできるんだけどね。普通の人間相手に手加減して殺さずに無力化できるかっていうと難しそうなんだよ。何度かレンタルして分かったけど、こいつ手加減クソ下手糞なんだ。魔法を使わないと普通の女の子並みのパワーしかでないから護衛なんてできないのに、魔法を使うとその瞬間パワーが100倍くらいになるから相手を制圧しようとしたら多分そのまま熊を撲殺できるパンチで殴り殺しちゃうんだよね。



――という訳でお前は却下ね。余計な騒動は起こせないから


『ふん! 仕方ないわね! 今度パフェ食べに行かせなさいよ!!!』



 なんてやり取りを脳内で交わした後、じゃあどうするかという話になるんだが。つい最近、こういう事態に備えるためにプレミアムレンタル権を取得したばかりの人材が我が『NEET NOW』アプリには登録されているんだよね。



――という訳でお願いできるかな


『任された。安心してくれ、ご婦人やご令嬢の警備は何度も熟している。大船に乗ったつもりで見ていてくれ』


――相手の少年は殺害するなよ?


『む。正当防衛を狙っていたのだが、まぁ、仕方あるまい』



 つい最近、プレミアムレンタル権を得たばかりの『雨宮かすが』は前世が傭兵隊長の女子高生というキャラクターであり、前世では世界最強とも呼ばれる傭兵隊を率いた伝説の兵士だった。当然、こういった護衛任務も傭兵隊長時代に熟しているし、しかも見た目はひなちゃんと同年代の女の子。俺がレンタル出来る人物の中では間違いなく最適の人材だろう。


 ひなちゃんの要望を踏まえた上で送り迎えの人材を用意する、と蛯名さんたちに約束をして次の日。


 予定通り『雨宮かすが』をレンタルしてひなちゃんを迎えに行くと、『雨宮かすが』を見た瞬間に何故かひなちゃんが大興奮で「か、か、か、かわいい!!? え、何この子本当に警備の人? うっわぁお人形さんみたい! ねね、名前は!? 私、蛯名ひな!」とマシンガンのように話だしたり、それに『雨宮かすがだ。よろしくな』と『かすが』がひなちゃんの超テンションを全く意にも介さずに応答したりと傍から見てるとなんだこれ面白ぇとなるやり取りをしたりとちょっと俺の予想とは違うファーストコンタクトがあったりしたが、無事にひなちゃんも『かすが』の送り迎えを受け入れてくれた。


 これでよっぽどの事がなければ、学校外での安全は確保できる。そう俺たちは判断していたのだが。



『事態が想定を上回る事はままあるが、まさかここまで下回る方面で予想を外されるとは思わなかった』


「クソっ! お前、いい加減その手を離せ! 僕が何をしたって言うんだ!」


『いや。まぁ、盗撮だよな?』



 呆れたように呟く『雨宮かすが』が腕を捻り上げた人物の手から、ポロリと小さなペンが滑り落ちる。ペン先に小さなカメラがついた、ペンカメラと呼ばれる隠しカメラだ。


 『かすが』に抑えられた人物の名は、練間 和人。つい先日からひなちゃんを脅し、ストーカー行為を働き、そして自分の思い通りにひなちゃんが動かないと悟った瞬間に彼女を誹謗中傷しはじめたひなちゃんの同級生で、『かすが』が警護につく元凶となった人物だ。


 朝の登校時間に突如起きた大立ち回りに野次馬が集まり始め、その状況に『かすが』が小さくため息を吐く。まさか、警戒されてる相手に馴れ馴れしく近づいてきてそのままスカートの中を盗撮しようとしてくるなんて、俺も『かすが』も想定すらしてなかった事態だ。ついつい取り押さえてしまったが、いや。これは『かすが』が動いてもしょうがないだろう。普通に警察沙汰だしな。


 とはいえ昨日、蛯名さんに「絶対大丈夫な頼れる護衛をつけます!」って言っちゃったのに早速大事になってしまったのはなぁ。流石に頭が痛いよ。

山里一也(男)25歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『天災科学者』(料金:ひなちゃん家のご飯)

『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『未来を知る者』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)

『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『もう一人の俺』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)

『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生』のレンタル権を獲得しました(料金:組織)


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