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ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→  作者: ぱちぱち


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115/134

第115話 修行見てください師匠!!

 霊障対策課の人とミキちゃんが戻ってくるのは大体同じタイミングだったらしい。ミキちゃんはどうやら顔見知りらしく、一緒にマンションに入ってきたので玄関で二人を出迎える。



「お久しぶりです師匠! アキコさんといちゃいちゃしてばっかの師匠! 修行見てください師匠!!」


『あ、うん。すまんね。ええと、そちらの兄さんが』


「初めまして。内閣府霊障対策課に勤めております秋村と申します。坂東様のお話は田井中さんからよく伺っていました。お会いできて光栄です」


『こちらこそ』



 秋村さんはバリキャリって印象の女の人だ。右手を差し出してきたので握手をすると試しの様に霊圧が込められたので、丁度同じ分量で返す。霊力が均衡状態になり、互いの手が触れ合わず壁を挟んだようになるのだ。この現象に秋村さんは驚いたような表情を浮かべた。



「これは……そういった能力で?」


『いや。霊力の均衡状態ですよ。あれ、ご存じない?』


「はい。ええ、これなに……?」


「あたしも知らないんですけど! 師匠なにそれ! やりたい! やりたいです!!」



 どうやらこの技術はこっちの世界の霊能者の間では余り知られていないようだ。『煉獄列島』ではこの状態を意図的に作って相手の攻撃を不発にしたりする、ゲームで言うジャストガードみたいな技として便利に扱われてるんだがなぁ。


 俄かに起こった握手会めいたやりとりを数回した後、はっと我に返った秋村さんがこほんと咳ばらいを一つした。遊び過ぎたと思ったのだろう。



「失礼しました。この技術については後程詳しくお聞きしたいのですが、今は先に問題を片付けましょう。田井中さんはどちらに」


『そうですね。こちらにどうぞ』



 二人を伴って俺の部屋に入ると、ベッドで眠っていた田井中さんが体を起こしているのが見えた。ああ、まだふらふらしてるんだから寝てなきゃ駄目なのに。



「……お、おお。これは秋村さんとミキちゃん。おまけにメンチくんじゃないですか」


『俺はオマケです?』


「女性を優先するのが男でしょうっと。申し訳ない、秋村さん。しくじりました」


「いえ。田井中さんは出来る限りを全うしてくれました。最初から複数人チームで動くべき案件だったんです。今回のこれはこちらの状況判断ミスですから、治療費と病院の手配はこちらで行います」


「お、助かります。いやぁ、メンチくんは腕のいい裏のお医者さんを連れてきてくれたみたいで。結構お金かかるでしょ? あの人」


『まぁ、1手術最低100万単位ですね』


「ですよねぇ。お礼を言いたいんですが、しばらく後になるかな」



 乾いた笑いを浮かべる田井中さんが、名残惜しそうに右手のギブスに視線を送る。どうやら『めぐみ』の超出来る女医ごっこ演技はばっちりと田井中さんに刺さっているみたいだな。



「メンチくん。退院したらあの人、紹介してくださいね」


『構いませんが会えるかはわからないですよ? まぁ気まぐれな人なんで』


「構いませんよぉ。さて」



 軽く談笑を交わした後、田井中さんが秋村さんに視線を向ける。お仕事の時間という事だ。



「お伺いしていた件ですが、ゾンビだけじゃなく下位の吸血鬼が居ました。残念なことにコロニーがもう出来上がってますねぇ」


「そうですか……入管は本当に、仕事をしないっ」


「僕の方で5体は処理したんですが、まだまだ居るでしょうねぇ。あ、メンチくん。残ってた連中はどうしてる?」


『俺の部屋で拘束してますよ』



 話を振られたのでそう答えると、田井中さんは自由になる左手の親指を立ててこちらに向けた。



「さっすがぁ仕事が出来る。秋村さん、生きたって言っていいか分かりませんが貴重な情報源ですので引き取りお願いしますねぇ。あと、コロニー潰しにはこっちのメンチくんに頼んだ方が良いですよぉ。下位であの強さなら渡ってきた上位は相当ヤバそうだ。メンチくんは僕が知る限り最強の霊能力者ですから、万全を期すなら」


「そうですね……捕らえた吸血鬼はこちらで処理しましょう。坂東さん、後程詳しいお話を……」


『ええ、まぁ。なんかヤバそうですしお仕事としてならお受けしますよ。連絡は田井中さんかミキちゃんにお願いしてもいいです? 俺スマホは持たない主義なんで』


「え、私です!?」



 いきなり話を振られたミキちゃんが声を上げるが、しょうがないことなんで受け入れて欲しい。『メンチ』の魂羽織は俺の精神衛生上の理由で作るつもりがないから、専用のスマホって奴を作る事ができないのだ。レンタルしていないときは俺が預かってれば良いだろって言われそうだが、一時期俺のスマホにアキコさんから延々「メンチくんどこにいる?」「一也くぅん。連絡とって(はぁと)」とメッセージが送られてきて脳みそが破壊されそうになったからなぁ。あの地獄はもう味わいたくない。


 渋るミキちゃんに『これ終わったら稽古つけるから』と約束してなんとか頷いてもらい、一先ず連絡手段は確保。まぁミキちゃんからは俺経由でメンチに伝えれば良いって教えてあるしこれでとりあえずの連絡網は確立したわけだな。



「この箱の中に吸血鬼が?」


『ええ。開けてみますね』



 次に、捕まえた吸血鬼を引き渡すために秋村さんを伴って『メンチ』の部屋へ。と言っても今じゃ実質アキコさんの部屋なんだけどね。そこに積まれた4つの棺桶みたいな箱の一つを開けると、全身を酒精と霊力で出来た綱でがんじがらめにされた血色の悪い黒スーツの男がもがいているのが目に入る。この綱は『メンチ』が解除するか込められた霊力が尽きるまでそのまま残って拘束し続ける、一種の封印処理のようなものが施されている。



「これが坂東さんの術ですか……凄まじい。このままでどのくらい持つんでしょうか」


『1週間くらいは大丈夫じゃないですかね』


「…………いっしゅ…………」



 俺の言葉に絶句した秋村さんは、数秒経ってからはっと気を取り直して一緒に来た回収部隊に連絡を入れた。電話口で困惑しているらしい向こうの担当者に「封印処理!? いらないわよ! そうらしいんだから仕方ないわよ!」と若干半ギレで伝えてたのはなんだったんだろうな。


山里一也(男)26歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)

『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)

『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)

『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)

『魂羽織』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)

『拳創成期』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)

『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)

『プロレスラーに明日はない!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『炎の経営者 純情仮面(本名:間藤勇作)』(料金:良き闘い)

『ライアードクター』(レンタル残り1日)




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