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ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→  作者: ぱちぱち


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110/132

第110話 まんしぃ正社員大好き

 新会社の名前はVSという名前になった。VSと書いてヴァーサスと読む。一般的にはこの新会社の中で各事務所の精鋭が新しい取り組みに挑戦するという意味合いだが、実のところはヴァーチャルサナトリウムの略である。電脳保養所って意味な。


 元の事務所での働き詰め状態に心身疲れ果てたVタレさんが元気になってくれれば。そういう意味合いの隠しネームであり、所属Vタレさんもその事は知らない。誰だって保養所送りとか言われたらいやな気分になるだろうしね。


 さて、そのVSが立ち上がって俺は晴れて子会社の社長となったのだがやること自体はVVVの一マネージャーだった頃と何も変わらない。なんなら各取引先へのご機嫌伺いが無くなったから仕事が無くなったまである。


 なんせVVV内部での仕事は優秀な事務職員に成長したスタッフたちがやってくれるため、基本的に俺を指名しての各企業とのやり取り以外に仕事はない。その仕事も子会社の社長になった時に鹿谷くんに引き継いだから本当にやる事が無くなってしまったのだ。これまでは俺との関係維持のために何かにつけて呼び出したり打ち合わせをしたりしていたのが、子会社の社長になった以上はそれも必要ないとカダー社さんやアニカラさんが判断したため、らしい。



『どやぁ』


――暇なんだが???



 やる事がなくなったと脳内で告げると、新会社設立に対応していた『勇作』が渾身のどや顔イメージを送り付けてきた。『勇作』からは確かに暇になるって聞いていたんだがマジで暇になった。やる事がアキコさんとお茶しながら「次はどういう事やろっか」と相談を受けるだけになったんだが。ここまで暇になるなら事前に教えてくれよと脳内で伝えると、そんなことしたらお前無理やり仕事作るだろうがと叱責された。



『お前、やれる事と権限の割に立場が軽すぎたんだよ。しかもほいほい他社に呼び出されたら動く腰の軽さもダメだ。そういうのは何言われてもまずは部下を動かすもんだぞ。向こうもお前との関係維持のために呼んでたのは分かってたろ?』



 そうお叱りを受けたのだが、流石にそれは理不尽過ぎる気がする。俺はただ、社会性の維持のために仕事を適度にしたいだけなのに。ぽつんと事務所の机に座ってるだけの生活なんて死ぬよりも辛いぞ、恐らく。



『お前は際限なく自分でやり過ぎる。もっと人を使う事を覚えろ』


――今、それ、やってるだろうが……!


『なら今、覚えれば良い。人に指示を出してその結果を受け止めて責任を取るのが上司の仕事だ。何でもかんでも自分で動いちゃ下が育たないんだぞ?』


――ぐぅ



 ぐうの音も出ない正論に、せめてもの抵抗としてぐぅと声を上げる。


 まぁ、仕事がないのは仕方がない。新会社も立ち上がったし、そちらの運営に触りが無いように準備でもするか。何か問題が起きた時のトラブルシューティングとかを考えて……これもヴァーイに投げたら他社の効率的なQ&Aとか持ってくるからすぐ終わるんだよなぁ。


 そんな風に仕事がない事に苦悩するという2年前の俺なら想像もつかない苦境に立たされながら日々を送っていたある日、新会社に所属するVタレさんからスタッフ雇用についての相談が入ってきた。


 なんでも現職を退職してVSにスタッフとして雇用されたいとの事だ。折角配信に専念できる環境なんだからそれを優先して欲しいと告げると、現職でいるよりもVSに就職する方が100倍待遇が良く時間も取れるのだとか。100倍は流石に吹かし過ぎだろと思ったが、まぁ、ブラック寄りの会社だと確かに働くだけでもやる気が削れるしVVVと同待遇というのがとんでもないホワイトに見えてもおかしくはないか。


 ただ、そうなると出向という形がどうなるか。明らかに比重がVSの方に傾くんだが。それにVSがさっさと潰れたらどうするんだと思っていたら「そうしたらアキコ社長なら絶対拾ってくれると思って!」との返答が。容易にその場面が想像できるし多分そうなるだろうな。


 じゃあ今の会社とお話合いをして夏頃。VVVエキスポ前に入社するという形で話を進めると、他の移籍組からも同じようにVSの社員になりたいという声が上がってきた。というかはちじくじさんからの移籍組は全員である。



「どういう事です?」


「いや……VVVさんの社員さんとお話ししたんですけど」


「死ぬほど待遇が良くて……自分の会社と比べたら天と地の差で……」


「私は専任Vやってたけど、この会社なら兼業の方が絶対やりやすいと思ったから。フレックスタイムで昼ー夜のシフトも良いんでしょ? なら雇ってよ。ちゃんと働くから」


「まぁ、はい。弊社の条件に問題がないなら雇うのは可能ですよ」



 群青らいむさんの質問に頷きを返すと、はちじくじ組から歓声が上がった。


 基本的にVSの事務所には現金を置かないし、鍵も顔認証で通れるから必要ない。一日中居られると迷惑ってのは仕事してる他の人に迷惑がかかるって話で大人しく仕事する分にはいくら居て貰っても構わないのだ。ただ、その様子は配信するからと伝えると「むしろそれが良いんじゃない!」とのお言葉。企画したりしなくてもただ仕事する様が配信になるのはVVVの卑怯な所トップ5に入るので羨ましかったのだとか。卑怯トップ5ってなんだよ。


 食事は食堂で昼と晩は取れるしキッチンもちゃんとあるから自炊も可能。時間にルーズな人でも働きやすい職場というのは間違いあるまい。


 まぁ、実際に働いてみて想像と違う、となったらそのまま辞めてもらっても良い。その辺は自己責任ですよと伝えて一先ずはちじくじ組は夏ころにVSのスタッフとして正式に雇用する。ただしVタレとしての立場は元の事務所からの出向という形を取る事になった。


 まぁ両事務所からはこの件で文句を言われたりすることは無かったんだが、意外な所から抗議の声が上がってくる。


 ホログライブ組のVタレ二人である。



「我々はー不当な労働待遇の格差に抗議するー」


「そうだそうだー」


「正社員雇用ってなんだよ羨ましいわ私たちも雇用しろー」


「そうだそうだー」


「いや。貴女方専任の方が明らかに儲かるでしょ」


「ね、クマコー社長。どれだけお金が入ってもイベント企画MV作成やらでどんどんお金が飛んでいくのに、扱いは個人事業主で失敗の責任は自分が丸被りと。平日に超快適なオフィスで他のVタレとお仕事してるだけで頭割のお金も入ってきて夜は自由に配信できてその時の経費も会社持ちな正社員。どっちが安定すると思う?」


「正社員。なんて良い響きですか……まんしぃ正社員大好き」



 VS社正式発足前に起きたこの労働組合による抗議活動は成果を上げ、結局移籍組は全員VSの正社員となる。自由な配信がしたくて移籍してきたはずなのに妙だな、と思ったがまぁ移籍組の6人が楽しそうに今後の配信計画を立ててるし、バーチャルサナトリウムとしてはこれが良いのかもしれない。面白くなれば良いか。ただ、やっぱり仕事が無くてヒマなのは辛い。一緒にゲームでもするかなぁ。


山里一也(男)26歳



視聴履歴

『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)

『煉獄列島』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)

『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)

『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)

『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)

『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)

『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)

『魂羽織』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)

『拳創成期』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)

『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)

『プロレスラーに明日はない!』(レンタル終了)

プレミアムレンタル権『炎の経営者 純情仮面(本名:間藤勇作)』(料金:良き闘い)



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