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58話

 クソ! あの女の力は一体なんなんだ⁉︎


 仲間の悲鳴にも構わず男は森を抜け、必死になって走っていた。


「ふぅ……これは一度立て直さなければ……ぐっ⁉︎」


 逃げ切れたと思った瞬間男は背筋が凍る……目の前に剣を持った女が自分を睨んでいたのを目にして恐怖に震えた。


 か、体が動かない……


 男は女から溢れ出る魔力の威圧に身動きができなかったのだ。


「た……たす……」


 男は必死に声を出そうとしたがそれさえもできずにこの世を去っていった。



(大丈夫か?)


 項垂れる俺にアークリーから声がかかった。でも、自分がやった行為に恐怖し、答える事ができなかった。


(極悪人といえど人を殺めてしまったことに罪悪感があるのだろうな……)


「戦争に行くって決めてから覚悟はしていたんだ……でも……」


 初めて自分の力が怖くなった。人を簡単に殺してしまう巨大な力を持っていることを今回嫌という程分からされたからだ。


(戦争とはこういうものだ。この戦いで何人もの人が死んだはずじゃ。だからそれを仕組んだ闇の戦士団を滅ぼさなければまた多くの命が失われてしまう。お主にそれを背負わせてすまないと思っている……しかしこれだけは知っておいてくれ、誰もが代われるものなら代わりたいと思っているのだ。まだ若いお主にこんな役目を押し付けてアーシェも苦しんでいた。許してくれ……)


「分かってるよ……決めたのは俺だから。でも、もう戦争は二度としちゃいけないって思った」


(そうじゃな……平和が一番じゃ。ベルセレ王国がどうなっているか分からんがこれを教訓に世界に戦争の愚かさを伝えていかねばなるまい)


「それを大人達に頑張ってもらわないとね」


(うむ、では帰るか)


「そうだね……あ、そうだ⁉︎」


 俺は一目散に森に引き返すと倒れていたあの女の子を抱きあげた。


(魔法で洗脳されていたのじゃろう……かわいそうに)


 女の子の顔を見る。恐らく10歳もいっていないだろうそのあどけない顔に胸が締め付けられた。


「まだこんなに小さいのに……」


(そのうち目を覚ますはずじゃ。この子には色々と事情を聞かないといかんだろうしな)


「……帰ろう」


 国境近くに戻るとマレクさんとウォードさんが迎えてくれた。更にホルトスさんとマリアンさんの姿もあり、勝利を喜び合うとバーレーン王国に帰還したのだった。



 バーレーン王国の街は俺達を歓声で迎えてくれた。感謝の声があちこちから聞こえてくるとそのまま馬車で城に向かう。


「一躍英雄になりましたねセイナ殿」


 走る馬車の中で歓声を受けているとマレクさんにそう声をかけられた。


「はっはっは! 短い間だったがこのメンツで戦えたことを誇りに思う」


「私もよ。コイツなんか最初話したくもなかったけどね」


 ホルトスさんが上機嫌に話すと隣に座るマリアンさんがすかさずそう突っ込んだ。


「おい! 俺がいなかったらお前は死んでいたんだぞ!」


「わ、分かってるわよ……だから感謝してるって言ったでしょ?」


 なんだか戦闘中に別れた後、このふたりの間で何かあったみたいだ。あれだけ離れて座っていた距離が近いし。


「非常に仲がよろしいことで」


「「誰が⁉︎」」


 ニヤニヤするマレクさんに反論するふたりの息がピッタリに見えて面白い。なかなか相性がいいように思えた。

 

「これはこの先楽しみだな」


「ち、違う!」


「違うから!」


 今度はウォードさんに反論する。ふたりの顔が赤く染まっているのは何故だろう?


 そんな疑問を抱きながら馬車は城の中へと入っていった。


「それでは国王へ報告に行きましょう」


 それからは忙しくあちこちを動き回り、やっと解放された俺は今一番会いたい愛する人の元へ急いだ。


「フェルナ!」


「セイナ!」


 城の兵士から美沙がいると言われた病室へ向かった。そこで美沙の姿を見た瞬間思わず名前を叫んでいた。すると美沙はビクッと反応した後俺を見て泣いていた。


「帰ったよ……」


「良かった……」


 もう人がいようと構わなかった。俺達は抱き合いながら喜んでいた。


「そう……大変だったのね」


 俺の部屋にふたりで移動すると俺は今までのことを話した。すると美沙はそれを真剣に聞いてくれた。そして話終わった後優しく抱きしめてくれた。


「辛かったよね……人なんて殺したくなかったよね……」


 美沙は涙を流していた。俺が辛いのをよく理解してくれていたのだ。あたたかい温もりと優しい言葉に、気付くと頬に涙が伝っていた。



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