57話
草原を駆け抜けると国境の入り口を塞いでいる兵士を薙ぎ倒し、マレクさんの誘導に従いながら敵の本陣へ突撃した。
「雑魚は俺達に任せて国王の元へ急げ! 増援が来る前に片をつけるぞ!」
「失敗したら許さないからね!」
「お願いします! 絶対に死なないでくださいね!」
俺達の行手を阻む兵士達を引き受けてくれたホルトスさんとマリアンさんを残してマレクさんとウォードさんの3人で襲いかかってくる兵士の間を掻い潜りながら走り抜けて行った。
「セイナ殿! あのテントに国王がいるはずです!」
マレクさんが言うテントというよりは立派な建物を目指ざした。そして後数百メートルというところで騒ぎに驚いたのか王冠を乗せた男が慌てるように飛び出していたのを目にした。
見つけた!
(国王で間違いない! 奴を捕えるのじゃ!)
同じタイミングでアークリーが叫ぶ。
「国王を守れ!」
兵士達が逃げる国王を隠すように集まりだすと大きな大砲のような筒を両手で抱えたウォードさんが前に出て叫んだ。
「これでも食らえ!」
ドォン! と大きな音と煙を吐きながら筒の先からキラキラした玉が放たれた。
「「「グアァー!」」」
その破壊力は凄まじく、一箇所に固まっていた兵士達が吹っ飛んでいった。
「行け! 奴を逃すな!」
俺は頷きながら全力で後を追った。後ろを振り返るとウォードさんとマレクさんが残りの兵士達の前に立ち塞がって先に行けないようにしてくれていた。
死なないで……
そう願いながら全力で逃げた国王の後を追った。
「ヒィー‼︎」
必死に逃げる国王を追って森に入っていた俺は転んでも這いつくばるように逃げようとする国王に剣を突きつけた。
「待ってくれ! 殺さないでくれー」
(とりあえずこやつを捕らえて人質にすればバーレーン王国から手を引かざるを得ないだろう)
情けない声でうるさいほどに命乞いをする国王に黙ってもらおうとした瞬間だった。何処からか魔法による攻撃が俺の方に目掛けて飛んで来たのだ。
「ぎゃあ〜!」
しかし、その目標は俺じゃなく国王だった。その攻撃であっけなく沈黙した国王を憐れんだ。
「情けない奴だ」
低い男の声が聞こえると薄暗い森の奥から黒い鎧やローブを来た男達がゾロゾロと現れる。
(闇の戦士団じゃ)
「闇の戦士団……」
俺の声が聞こえたのか一人の男が眉をひそめた。
「ほう……俺達のことを知っているのか。貴様何者だ」
「何で国王を……」
「もうコイツには用がないからな。ベルセレ王国もバーレーン王国も俺達が放った魔物によって今頃火の海だろう。くくく……こいつは楽に死ねて運がいい。自分の国が無くなっているのを見ないで済んだのだからな」
不気味な笑みを浮かべる男に嫌悪感を抱いた。
「なんて酷いことを……」
(どうやらこやつらが黒幕のようじゃな……)
「その髪色……アンデラ族か……まさか生き残りがいたとはな」
別の男が話し始める。警戒心を剥き出しにして俺を睨んでいた。
「ちょうどいい! おい、お前の出番が来たぞ」
後ろにいた黒いローブを来た人物が前に出てくる。周りの男の腰くらいの背丈にフードを深く被っていて顔が分からず、男か女かも分からない状態だった。
「お前を追い出したバーレーン王国の者だぞ。喜べ、復讐をする時が来たのだ」
パサっとフードを取ったその人物を見た瞬間ドキッとした。その人物は俺と同じ髪の色をしていたのだ。
(こんな事が……)
頭に前に聞いたアークリーの話が甦る。
確か昔アンデラ族狩りの時にバーレーン王国から追い出された人がいたって言ってたけどなんで……
俺は驚きを隠せなかった。その人物がまだ幼かったからだ。それも幼稚園児くらいの女の子だった。
「うぅ……」
うめき声を上げる女の子の目に知性の光が見えなかった。
「よく分からないって顔だな。教えてやろう。コイツはバーレーン王国から追い出されたアンデラ族の女の子供だ。そいつは大きな力を持っていたからな、捕らえて闇の戦士団で働いてもらったってわけだ」
(噂によると闇の戦士団に囚われた者は過酷な労働を強いられ、強い者は強制的に働かされるという……)
「そいつは働きすぎて死んでしまったが、ありがたいことにコイツを残してくれたんだ。バーレーン王国を憎む戦士としてよく育ってくれたぞ」
心の奥から怒りが湧き上がった。
「まだこんなに小さいのに……なんて奴らだ」
俺の中で目の前の男達が人に見えなかった。まるで醜い魔物のようだ。
「お前は数少ない同じ仲間を殺せるのか?」
そんなの決まってる。
「助ける……絶対に助ける!」
魔剣を手に俺は叫んでいた。
「行け! 目の前の女は敵だ! お前の母親を殺した相手だ!」
「ウワァーーー‼︎」
女の子は奇声をあげて俺に魔法で攻撃を仕掛けてきた。その威力は今まで見た中でもダントツで上だった。
「アークリー! どうすればいい⁉︎」
地面に大きな穴ができるほどのエネルギーを避けながらアークリーに助けを求めた。
(こやつの目は何かに操られている症状に似ている! 操っている者が奴らの中にいるはずじゃ!)
それを聞いて4人の男に目をやった。皆、ニヤニヤしていて反吐が出そうだ。
「誰⁉︎」
(魔法を使っている奴じゃ!)
魔力が体から流れている奴を探した所、ひとりだけ溢れんばかりの魔力を発している人物を見つけた。
「アイツだ!」
俺は夢中でその男に向かっていた。一瞬の出来事で、すぐそばにその男の驚く顔が視界に入ると迷わず魔剣を振るった。
「ガッ⁉︎」
男は防御する姿勢を取ったが魔剣をまともに食らうと後ろの木まで吹っ飛び、大きな音を立てて木にめり込んでいた。
「は、速い⁉︎」
さっきまでヘラヘラしていた男達の顔が今は恐怖に慄いている。
「ここは退くぞ!」
ひとりの男がそう叫ぶと俺の周りにいる男達が一斉に散らばった。
逃すかよ!
ここで逃したらまた苦しむ人が生まれると思うと逃すわけにはいかなかった。
「逃げられない⁉︎ グアァ⁉︎」
近くにいた逃げようとする鎧を着た男を背後から強烈な一撃を加えて倒れるのを確認すると。少し遠くにいたローブを着た男を魔法で追撃して倒した。
「あとひとり!」
すでに遠くに逃げたらしい最後の男を追った。




