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56話

 バーレーン王国の街は突如現れた魔物の襲撃を受けていた。その中で各派閥からなる義勇軍を結成したアーシェは前線に立ち、自ら指揮をとっていた。


「これは一体どういう事だ?」


 アーシェの元には各派閥の代表が集まっていた。その中で力の派閥を率いるガイアスは今の事態に困惑する。


「恐らくこの襲撃は仕組まれた物だと予想される」


 アーシェの答えにガイアスは驚く。


「魔物を飼っているとでも言うのか!」


「分からないが、そうとしか思えない」


 そこへ武具の派閥のトップであるエストが会話に入る。


「恐らく手懐けてはいないはずだ。それができていれば一緒に攻めてきているはずだからな」


 しかし、この緊急事態でも各派閥の代表達は笑みを隠せなかった。


「奴ら、今頃俺達が必死になって戦っているとでも思ってるんだろうな」


「ふふ、アーシェ殿の言う通りに街のあちこちに煙を焚いてあります。それを見て意気揚々と攻めてくるでしょう」


「俺達の罠があると知らずにな……くくっ! 奴らの慌てふためく姿が楽しみだ!」


 実は魔物はすでに倒されており、ベルセレ王国が攻めてくるのを待っていたのだ。


「それにしてもエスト殿。よくあれだけの装備を用意していたな。まるでこの戦いが起こるのが分かっているような罠まで用意して……」


 ガイアスの疑問にエストが答える。


「アークリーの旦那だ。旦那は死ぬ直前までこの国の行く末を考えていた。いつかベルセレ王国が攻めてくる事も知っていたんだろう。だから俺達に装備を用意させた上に罠の設計図まで渡してきたんだからな。全くどれだけ世話を焼くんだか」


「なるほどな……あやつめ! 裏でコソコソしおって!」


「先生には全てお見通しだったのですね……」


「お父様が……」


「この戦い……旦那の為にも絶対に勝つぞ」


 皆がエストの強い意志に同調するように頷いた。


「しかし、相手の策は逆効果でしたね。魔物との戦いで力の派閥と魔力の派閥の絆を深めさせてしまった」


 サーディスは少し吹き出しそうな形で口を開いた。

 

「ああ、いい合同訓練だったな。魔物はなかなか手強かったが装備が強すぎてちょうど死人がでない程度の難易度だった。だがもしも装備が無く、尚且つ派閥が協力していなければ今頃この街は破壊されていただろうな」


 部屋に一瞬沈黙が流れた。その部屋にいる誰もが最悪の展開があった可能性を考えたのだ。


「奇跡と言うしかないな。この絶妙なタイミングで現れた少女がお父様をその身に宿し、平和に導くか……」


「まるでおとぎ話のようだな」


「この戦いの勝利はあの娘にかかっていると言っていいだろうな」


「大丈夫だ。お父様が一緒だからな」


「それに加えて彼女自身も恐ろしい程の力を持っているときた。一緒に行ったウォードがとっておきの武器を用意していたからな。もしかしたら一人で王国を滅ぼすくらいの力になっているかもしれん」


「あのアンデラ族の魔力に先生の知恵が加わればもはや無敵ですからね」


 もはやこの部屋にいる誰もが勝利を確信していたのだった。


 ダダダダ!


「ん? 何だ?」


 慌しい足音が部屋に響くとアーシェはフッと笑い、椅子から立ち上がった。


「ベルセレ王国が進軍してきたようだな」


 各派閥の代表達も余裕ある笑みと共に立ち上がった。


「この国を攻めた事を後悔させてやるわ!」


「俺達が開発した武器の実験台になって貰おう」


「私達の生まれた場所を守りましょう!」


「……」


 こんな事が起こるのだな……


 アーシェは代表達が笑い合っている光景に感動して視界が涙で霞んでいた。不可能だと諦めていた各派閥の和解……それが果たされた瞬間だった。


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