55話
森の中には魔物がうごめいていたが強力な武器を得た俺達にあっけなく倒されていった。
「すげえぜ! この武器はよぉー!」
「ほんと最高! 楽しくて仕方ないわ!」
魔物との戦いに俺の出る幕はなかった。ふたりのやる気が凄くてあっという間に倒してしまうからだ。
「休憩にしましょう」
マレクさんの声に薬草の採取を止める。俺はふたりに戦闘を任せて薬草を集めていた。そして休憩中に回復薬を作っているといやに静かになっていたので顔を上げると周りの視線が俺の手元に釘付けになっていた。
「凄い手際の良さですね……思わず見惚れてしまいましたよ」
マレクさんの言葉に皆が頷いた。
「ほんと参っちゃうわ! あなた何でも出来過ぎじゃない? しかもその容姿なんて嫉妬する気にもならないわ」
「俺達が想像できないような努力をして来たんだろうな。若いのに尊敬するぞ」
マリアンさんとホルトスさんが参ったと降参するような仕草をしながら俺に話しかけてきた。
「回復薬です。皆さん使ってください」
俺は出来た回復薬を皆に渡した。
「私には分かります。凄いですよこの回復薬は! 色からみても相当な物だ」
まず、マレクさんが回復薬に驚くとウォードさんが興味深々に回復薬を眺めていた。
「俺は薬の類いにそこまで詳しくないが今まで見てきた中でも一番品質がいいのが分かる」
物作りの達人であるウォードさんに褒められ嬉しい。まあアークリーのおかげだけど。
「そうだな! 俺も今まで回復薬に世話になっているがここまで透き通ったのは初めてみる!」
ホルトスさんにも感謝されると久しぶりに薬を作ったから腕が落ちてないのが分かって安心した。
「では、ここから森が終わります。目的地はここからそう遠くないので警戒していきましょう」
休憩が終わり、マレクさんの後に続いて木々の間から差す光の方向へ歩き出した。
(恐らくバーレーン王国では戦いが始まっているだろうな)
歩いている途中でアークリーの呟くような声が聞こえて一瞬足が止まってしまった。
「……大丈夫だよね?」
バーレーン王国に置いてきた美沙の顔が浮かんで不安と寂しさが俺を襲った。
(心配するな。派閥が協力すればすぐには落ちんよ。それにわしがいない間に各派閥はしっかり発展していたようじゃ)
「そっか……」
それを聞いて少し安心する。
やがて着いたのは瓦礫にまみれた場所だった。
「ここは昔村があった場所なんです。ここなら隠れる場所にはいいと思います」
確かに高台にあって見晴らしが良い場所だ。周りには見渡す限りの平原が広がっている。
「相手の大将は今何処にいるんだ?」
「恐らく国境を越えた場所で戦況を見ている事でしょう。ちなみに国境はあそこです」
マレクさんの指の先には遠くから見ても大きな壁が続いていた。
「合図は空に放たれた魔法の色で分かります。私が見張っているので皆さんは休んでいてください」
………………
作戦前の静けさに少し緊張してしまう。落ち着かない俺は他の仲間に目を向けた。
ホルトスさんはさすがだな……
ホルトスさんは瞑想しているようだ。目を閉じて微動だにせずあぐらをかいて座っている。
マリアンさんは……余裕だな。
マリアンさんは休憩中と変わらずに本をスラスラと読んでいた。
ウォードさんは……
ウォードさんは自分の装備の手入れをして時間を潰しているようだった。
(こういう時はな、なるべく心を落ち着かせる事が重要じゃ)
そう言われてもどうしてもソワソワしてしまう。
「何かいい方法はない?」
(そうじゃな……例えば草むらに寝転んで空を見ていると心を落ち着かせられるぞ?)
アークリーの言う通りに近くの草むらで横になった。
「気持ちいい……」
今日は快晴だ。作戦のことで頭がいっぱいで天気なんて気にする余裕が無かったな……
真上に広がる青い空を眺め、朝の心地いい日差しを浴びると自然と落ち着けた。
この穏やかな空を見ているとこれから激しい戦いが始まるなんて思えないな……
それでも今頃バーレーン王国では殺し合いが行われていると思うと歯痒くなってくる。1秒でも早く戦争を終わらせたい気持ちが強くなっていった。
あれ……
空に何かが見えた。
「皆さん合図です! すぐに向かいましょう!」
それと同時にマレクさんの大きな声が響き渡り、急いで立ち上がった。




