54話
まだ日がのぼり始める前だった為、森は暗く不気味見えた。これから戦争が始まる中で俺の頭には嫌な予感というのだろうか、気分がよくなかった。開けた場所に出ると皆は適当に座り込んで数メートルを照らすほのかな灯りをじっと見ていた。
「私の勘だとベルセレ王国は明日の朝にも出陣するでしょう。せっかく来た国王も後ろでふんぞり返って見ているはず」
早速マレクさんが作戦の話を始める。
「突入はどのタイミングでやるんだ?」
「実はベルセレ王国の軍には傭兵なども加わっているため、我が国の者を紛れ込ませているんです。頃合いを見て合図があるはずです」
「じゃあそれまで何処で待っていればいいのね?」
「はい。見張りにはうってつけの場所を探してあるのでこれから歩いて向かいましょう」
俺達は頷き合い立ち上がった。
「待ってくれ、皆に渡したいものがある」
歩き出そうとした俺達を止めたのはウォードさんだった。
「この時の為に俺が開発した装備だ。使ってみて欲しい」
ウォードさんが袋を広げて中を取り出したのは小包の数々で、ホルトスさんとマリアンさんにはそれを放って渡し、俺は手渡しで受け取った。
「開けてみてくれ」
これは……
俺が受け取ったのは美しい装飾が施された青い剣だった。鞘から剣を抜くとあまりの美しさにしばらく魅入ってしまった。
(これは……見た事がある)
アークリーが呟いた。さっき作戦の話があると聞いてから呼んでいたのだ。
「知ってるの?」
(うむ、これは魔剣じゃ)
「魔剣?」
「よく知っているな。その通りその剣は魔剣と呼ばれるものだ」
ウォードさんは俺に話しかけてきた。
「魔剣はかなり希少でな。魔力が高い程効果を発揮する。しかも俺はその剣に色々と改造を施していてな。最高傑作と言っていいだろう一品だ」
そう言われてから改めて剣を眺めた。確かに柄の部分とか鞘には機械的な細工が見られた。
「俺はその剣を作ったものの相応しい奴が現れるとは思っていなかった。だが、お頭から話を聞いてもしやと思っていたがさっきお前が見せた魔力を見た時確信したよ。ついにこの時が来たとな」
ウォードさんは無口で表情を表さない人だと思ったが、熱く語る顔は嬉しさを存分に表していた。
「おい、俺の派閥はお前ん所の武器を使ってはいけないという掟がある」
「私の所もよ。悪いけど受け取れないわ」
「ああ、それなら問題ありません。各代表に許可は得てますので。それにこれからは派閥など無くしてひとつになっていくのですから」
マレクさんの言葉を聞いたホルトスさんは貰った物を装着していた。
「ホルトス、それは見ての通りアンタらがよく使う拳にはめる武器だが、あんな柔な金属でできただけの物じゃない……素材は特殊な金属を使い破壊力は何倍にもなる」
「確かにすげえ硬さだ。それに軽いから疲れない」
ホルトスさんはシャドーボクシングの様にパンチを繰り出すと驚いた表情をしていた。
「更にそれには特殊な技法で魔法石を混ぜてある。上手く慣れれば大地を割る事さえできるようになる。もちろんアンタらの様に魔力が少なくても十分に効果を発揮できるはずだ」
「そりゃすげえ!」
「私のは?」
興奮するホルトスさんの横でマリアンさんは持っていた物の説明をウォードさんに促していた。見たところロッドの様な物だが……
「アンタのは魔法使いの弱点を補う事に重点を置いた装備だ。分かっていると思うが魔法使いは防御面が弱い。距離を詰められたらひとたまりもないだろ? それらを解決した代物だ」
「これが? いつも私達が使っている魔法石が付いただけの棒じゃない」
「その魔法石には特殊な効果があるんだ。魔力を流してみろ」
マリアンさんは半信半疑のような何とも言えない顔をして言われた通りに魔力を流し始めた。
「これは⁉︎」
ロッドの先にある魔法石が光った瞬間マリアンさんの前に透明で巨大な盾が出現したのだ。
「凄いだろ?」
「確かにね……」
「だが、それだけじゃないぞ」
「え?」
「実はその武器自体も特殊な金属でできていてな。下の方にボタンがあるだろ? それを押してみろ」
「これかしら……」
マリアンさんがロッドのボタンを押すと棒状のものが変形して傘のような形状になったのだ。
「何これ⁉︎」
「そいつには風の魔法石が中に仕込んであってな。魔力を流すと瞬時に移動できるんだ」
マリアンさんが魔力を流すとロッドから強い風が発生した。突風のような風に乗ってマリアンさんは空に飛んだ。
「凄いわ! これなら距離を詰められても逃げられる!」
やがて地上に降りたマリアンさんは楽しそうにロッドを試していた。
「では行きましょうか。この先からは魔物がでますので注意してください」
強力な装備を貰い、自信に満ちた顔をするホルトスさんマリアンさんはやる気満々に頷いた。
「そんな物これでぶっ飛ばしてやるさ!」
「私も早く試したいわ!」
ふたりは先頭を仲良く歩いて行ったのだった。




