52話
ベルセレ王国は大勢の兵士が湧き立ち、明日の戦争に向けて決起する。それを指揮する男は戦地に赴いていた国王に呼ばれ、豪華なテントへと向かっていた。
「来たかジュナよ」
国王にジュナはひざまづいた。
「準備は完璧にできております。あとは国王様の命を待つだけです」
「とうとうこの時が来たな……バーレーン王国め、厄介なあの賢者が死んだ事を隠していたとはこしゃくな」
「我々がその事に気付いたのは幸いでした」
「賢者が居なくなった国など赤子同然! 明日には我が物となり、世界統一の足がかりにしてくれよう!」
「そうですとも。あの国が所有している数々の魔法や技術が手に入ればもはや敵なしです」
「いけ! 全てを奪い尽くすのだ‼︎」
「は!」
「ワハハ‼︎」
ジュナは国王の甲高い笑い声を背に薄ら笑いを浮かべた。
「ジュナ様、準備が整いました」
テントを出たジュナに黒服の男が話しかける。
「分かった。くく……あのおめでたいジジイの命も明日までだというのに呑気なもんだ」
ジュナはテントを振り返ると表情のない冷たい視線を投げつけた。
「行くぞ……明日の朝にも出発だ。例の物はどうなっている?」
「もちろん用意できております。お見せしましょう」
ジュナは場所を移動した。
「ポートラで実験した魔物より更に強化しています」
ジュナは目の前にうごめく魔物の群れを見ると顔を歪ませる。
「くくく……」
ジュナは笑いが止まらない。
「バーレーンはコイツらとベルセレの猛攻でひとたまりもないだろう。逆にベルセレは本国に殆ど兵を残していない……そんな時にコイツらが暴れたら思うと楽しくなると思わないか?」
「ベルセレの者達が帰った時に滅んでいる自国をどんな目で見ているのか見ものです」
「ははは! ぜひ拝んでみたいものだ」
「とうとう我ら闇の戦士団が世界の支配者になる時がきました」
「そうだ……アンデラ族の邪魔者共は消え去り、ベルセレ王国とバーレーン王国をこの機に潰せば全てが俺達の思うままだ」
「誰も私達が暗躍しているとは気付いていないでしょう」
「それも今日までだ。今まで裏で動いていたが明日から歴史が変わる。世界に闇の戦士団の名が広まっていくのだ」
「ジュナ様の名も世界に轟くことでしょう!」
「コイツらをバーレーン王国とベルセレ王国に送るのだ!」
「はは!」
………………………
俺が美沙に起こされた時、窓からはオレンジ色の光が差し込んでいて、少し部屋は暗くなっていた。
「頑張ってね……」
美沙は準備を終えた俺に抱きつくと消え去りそうな声でそう言った。
「明日に全部終わらせて帰るんだ。皆んなの待つポートラに」
まだまだやりたい事がいっぱいあるんだ。
「うん、そしたらゆっくり過ごしたい」
俺は美沙の言葉に頷いた後、ふと今の状況になってしまった事を考えていた。
それにしてもなんでこうなっちゃったんだろ?
俺は当初生まれた村で平穏な暮らしをすると思っていたし、そう願っていた。でも、今は戦地という全く逆の位置にいる。
やっぱりこの力のせいだよな……
いつだったかアークリーに言われた事がある。様々な事件に巻き込まれるのは力を持つ者の宿命だと。
それでもこの力がなければ俺はあの村から出る事は無かっただろうし美沙とも出会えなかったはずだ。あの時した色々な妄想が今俺を……皆んなを守ってくれてるんだ。
「じゃあ行って来るね」
「待ってるからね」
名残惜しそうな美沙と別れ、俺は集合場所へと向かった。
日は沈み、城には明かりが灯り始めていた。
「セイナ殿、待っていた」
俺を出迎えたアーシェさんに連れられて城の中を歩く。
「話した通り城の裏は大きな山々がそびえ立っている。魔物がいるから人も入らない。言わば強固な防壁となっているわけだ」
歩きながらアーシェさんの話を聞いていると城の裏手へと出ていた。
「連れて行く人は決まったんですか?」
「ああ、もう先に待っている。各派閥から選んだ精鋭だから足を引っ張ることはないだろう。それに道案内役として頭のキレる男を付けておいた」
それなら安心できそうだ。
暗い森の中に入って少しすると視線の先に光が見えた。
「あそこが集合場所だ」
少し開けた場所に出ると4人の男女が立っていた。




