48話
アーシェさんが迎えに来るまでの間、アークリーからこの国の内情を聞いていた。
話によるとこの国は大きく分けて3つの派閥に別れているらしい。
一つ目の派閥は生まれつき身体能力に長けた種族が集まってできたもので、日々体を鍛え、力こそが一番強い者の証だと主張する。
二つ目は生まれつき魔力が高い種族でできた派閥で、こちらも日々新たな魔法の研究や発掘などをしていて、魔法こそが一番強い力なのだと主張している。
三つ目の派閥は装備を作る事に長けた手先が器用な種族だ。高性能な武器や防具を開発する事で力を手に入れた。こちらも自分達が作る装備こそが最強だと主張している。
といったようにこれまで3つの派閥が対立している原因はお互いが信じている力の違いだけだ。どの派閥も他の派閥が信じる力を見下し、決して受け入れない事からいがみ合いが続いているらしい。
そこで疑問に思った。長年に渡っていがみ合っているなら抗争が起こってもおかしくないはずだ。力が拮抗しているのだろうか?
それをアークリーに訊くとこんな答えが返ってきたのだ。
(それぞれの派閥には3すくみが成り立っているのじゃ)
力が強い者は基本的には魔法を使う者に強いらしい。いくら強い魔法であっても接近戦に弱い為、あっという間に制圧してしまうというのだ。一方で強力な装備に身を包んだ者には勝てない。
それに対していくら高性能な装備で身を包もうが多彩な魔法を使う者には勝てないのだという。
だからか、長年に渡ってそれを覆そうと信じた力を高めてきた歴史があるという。
アークリーは最後にこう言った。もしも、3つの派閥が協力すればどんな敵にも勝てるだろうと……
俺がそれを思い出していた時、先程の3人が俺と戦わせる人を従えてやってきたのだった。
まず目に飛び込んできたのは力の派閥である老人が連れてきた男性だ。身長は2メートルはゆうに超えてそうな巨体で、筋肉のつき方が尋常じゃないくらい盛り上がっている。歳はまだ若く見えたがその目は自信に満ちていた。
次に見たのは魔法の派閥から選ばれたであろう女性だ。体中に魔法石を付けたアクセサリーを身につけて派手な服に見える。俺と目が合うとニヤリと笑顔を浮かべた。
最後に装備の派閥から選ばれた男性に目を向ける。全身にゴツい装備を身につけていて持っている武器は槍のような物だったが、その構造は複雑に見えた。もう片方の手には盾を持っていたがこれも単なる盾じゃないと思わせる形状をしていた。
「さて、誰からやる?」
「では、私の方から行かせていただきましょうか」
アーシェさんの問いに魔法派閥のインテリお兄さんが反応した。すると他の派閥は勝手にしろと言わんばかりにその場から離れていった。
「それでは始めよう。相手が降参するか気を失わせたら勝ちだ。いいな?」
アーシェさんの言葉に俺は頷き、相手の女性はニヤニヤしながら俺を見ていた。
「彼女は我が偉大なる種族の中でも一番魔力が高く、魔法のセンスも飛び抜けた存在だ。早い降参をお勧めするよ」
魔法派閥のインテリお兄さんはそう言うとクスクスと笑いながら去って行った。
「では、始め!」
始まりの合図と同時にまずは大きく間合いを取った。
(あの魔法使いは見ての通り体中に魔法石を持っているからどんな魔法を使ってくるのか見極めねばならん。あとは相手の魔力を尽きさせれば勝てるはずじゃ)
「りょーかい」
「貴方……ペットにしたいくらい愛らしいわ。その透き通る肌を傷つけるのは勿体ないけどしょうがないわよね……」
悲しそうな顔で話すその姿に先程の陰険そうな目は何だったんだと違和感を感じる。
「でも……貴方の苦痛に歪む顔はそそりそう! ああ……見たくなってきたわ!」
怖! 情緒不安定なんじゃないかこの人⁉︎
女性の持つ金色の棒の先端に付いた魔法石から炎がゆらめいた。
「これですぐに死なないでよ?」
ニヤッと笑う彼女は俺に棒の先端を向けた。
来る!
ゴウ! っと大きな音を立てて俺を楽に飲み込める程の大きな炎が迫りくると俺は瞬時に氷の壁を展開した。
最初は氷を溶かそうと勢いよく襲いかかってきた炎だったが、遂には溶かしきれずに消えていったのだった。
「へぇ……やるじゃない」
今の攻撃が防がれると思ってなかったのか、女性の顔に少し戸惑いの色が見えたが、その後怒りの色に変化した。
「じゃあ! これならどうかしら!」
今度は凍るような吹雪が俺に向かって吹きつけられた。
それならと俺は炎を纏って吹雪を退けてみせると女性は怒りの感情を爆発させた。
「もういいわ! とっておきを使ってお前を消し去ってやる‼︎」
あれはどう見てもキレてる。もう誰にも止められないくらいに暴走しているように思えた。
「ジュリア! 人にあれを使うのは禁止です! やめなさい!」
遠くからインテリお兄さんが血相を変えて叫んでいたが女性は見向きもしない。逆に笑みを浮かべ完全にやる気になっていた。
「ふふふふ……」
女性の体を闇が覆っていく。
(あれは闇の魔法じゃ)
「闇の魔法?」
(人の呪いや怨念を宿した魔法でな、あまりに危険な魔法だという事で城で厳重に管理されていたはずじゃ。それをあやつは何かしらの方法で手に入れたのだろう)
「そこまでして手にしたい程強力なんだね」
(人はどうしても力に惹かれてしまう。それがどんなに恐ろしいものであってもな)
女性の足元から黒い手が伸びていた。それが幾つも現れ始める。
「さあ! 闇の中に飲まれてしまうがいい‼︎」
次の瞬間俺の足元から無数の黒い手が現れ、脚を掴まれた。
「くっ!」
(恐る事はない。炎と光を混ぜて放つのじゃ!)
脚を凄い力で引っ張られ地面に埋まっていく中、俺は両手から光と炎を出すと、それを合わせて足元に放つ。すると眩い光と炎の熱で足元の闇を綺麗に消し去った。
「ば、馬鹿な⁉︎」
女性はその光景に驚き唖然としていた。
(今じゃ! あやつの闇も消し去るのだ!)
「分かった!」
俺は闇を纏っている女性に向けて光を放った。




