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47話

「ごめんなさい!」


 アゼクさんを回復させると俺は勢いよく頭を下げて謝っていた。


「いや〜 全然動きが見えなかったよ。強すぎて悔しささえ感じなかったよ」


 アゼクさんは頭を掻きながら爽やかに答えると元気よく立ち上がった。


「お父様が言った通りだ……いや、それ以上に君は強い。これなら作戦が上手くいくかもしれない!」


 アーシェさんは期待に満ちた顔で俺を見ている。


「アゼクさんのおかげでなんとかやれそうです」


 少しの間だったけどかなり勉強になった対戦だった。


「無関係な国の為にすまないな。礼に何かしたいと思ってその娘の父親らしき人物を探しておいた」


「本当ですか⁉︎」


「ああ、幸いな事にすぐに見つかった。彼は今この城で働いているんだ。会ってくるといい」


「はい……」


 美沙は泣きそうになりながらも嬉しそうに頷いた。


「行こうよ!」


 俺は美沙の手を掴むと、アーシェさんに言われた場所へ向かったのだった。


「お父さん!」


 ちょうどお昼を過ぎた頃だった。兵舎と呼ばれる建物に向かうとある人物を見て美沙が走り出した。


「フェルナ‼︎」


 その人物も美沙を見ると顔をくしゃくしゃにして走り出す。ふたりは抱き合い、喜び合った。


「すまなかったフェルナ……」


 フェルナのお父さんとの再会を果たした後、俺達は詳しい経緯を訊く為に場所を移した。


「お父さん……なんで帰って来てくれなかったの?」


 フェルナのお父さんが住んでいるという部屋に移動すると美沙が悲しそうな顔で話し始めた。


「……あれは一年前のことだ。俺は薬を求めてここへ向かったものの長旅でかなり消耗していて、ついには街に着く前に倒れてしまってな。偶然通りかかったこの城の兵士に助けられたんだ。それから身体が回復すると硬化病の事を詳しく調べた。そこでアリナの症状がもう助からないところまできていた事を知ってしまったんだ……その時は身体がボロボロで、戻るのは不可能だったんだ。だから完全に治るまでこの城でしばらく働く事にしたんだ」


「そうだっんだ……」


「すまなかった……アリナを失ったどころか大事な娘まで……」


「お母さんは生きてるよ」


「なんだって⁉︎」


「このセイナが治してくれたの……今は元気にしてる」


「なんという事だ……アリナが生きてる……」


 フェルナのお父さんはボロボロと大きな涙を流して泣いていた。


「ありがとう……色々お世話になったようだ」


 フェルナのお父さんは落ち着いた所で俺に感謝してきた。


「いえ、大事な人を助ける為ですから」


「お父さん一緒に帰ろう?」


「……そうしたいんだが今この国は危機に陥っているんだ。ここで帰ったら恩返しにならない」


「分かってるわ」


 俺はふたりの時間を取ってあげたいとその場を離れた。


「さて……時間だ」


 ピッタリとその時間になるとアーシェさんが迎えに来てくれた。


「この国の命運は君にかかっている……頼んだ」


 アーシェさんの言葉に頷くと先程の訓練場へ向かった。



 先程の広いと感じた広大な敷地は人で埋め尽くす窮屈な場所となっていた。ざわざわと多くの会話が雑音となって騒がしい。


 そんな中を歩くアーシェさんと俺に視線が集まる。


「やっとお出ましになられましたなアーシェ殿?」


 中央には3人の男がいた。俺達が近くとそのうちひとりの男が話しかけてきた。


「待たせたな」


「まさかこんな所に俺達を集めるとはな、他の種族がいるなんて聞いてませんが?」


 ローブに身を包んだ男性は髪が長く清楚なイメージを持った人だった。クールに装い、ナルシストのようにも見える。


「すまないが今は非常時なのだ」


「ワシらを集めた理由はなんとなく察しがつく。戦争に力を貸せと言うのだろう?」


 白髪と深いシワでかなりの年齢なはずなのに強靭な肉体が服を着ていても分かるほどムキムキな老人が鋭い眼光で俺とアーシェさんを睨んだ。


「そこまで知っているのなら話は早いな」


「ばかいえ! コイツらと手を組むなら俺達は勝手に動かせてもらう」


 頑固そうな中年の男性は身体中にゴツい装備を身につけていた。


「それはこっちのセリフだ! 力もねえ道具に頼る奴らや魔法に頼る弱い奴らと一緒に戦うなんてまっぴらだ」


「ふん! 力だけで頭が弱い奴らに負けはしないがな!」


「なんだと! 勝負するか?」


「いいだろう。ここで一番が誰かを分からせてやる!」


 もうこのやりとりだけでいかに仲が悪いかが分かってしまった。お互いに信じている力が違うだけなのに何故それを認められないのだろうか。


「もういい……」


 そう言ったアーシェさんは頭が痛そうだ。恐らく何度もこのいがみ合いを見てきたんだろう。


「貴公らも知っていると思うがこの国は今危機的な状況にある。力を合わせなければ勝てないだろう」


「俺達には無理な相談だな」


 中年の男性が即答すると他のふたりも同時に頷く。


「そこで提案がある。この者と貴公らが選んだ一番強い者が戦い、全てに勝利したらお互いが協力する。どうだ?」


「このお嬢ちゃんが? アーシェ殿は気でも狂ったのか?」


「狂ってはいない。昔貴公は言ってたな。俺達全員に勝ったら言う事を聞いてやると」


「覚えてるぜ。そんなに言うなら試してやる。だが、俺達が勝った場合は何かあるんだろうな?」


「ああ、なんでもひとつ願いを叶えよう」


「……言ったな。よし、そうなりゃ準備だ! 少しまってろ!」 


 3人はそれぞれ自分の仲間の元に戻っていった。かなりやる気になっているのがその後の大歓声で分かる。


「ふっ、奴らにはこれまで散々苦汁を飲まされたからな。くくく、これからが楽しみだ」


 アーシェさんの顔はこれまで見た事がない怖い顔をしていた。


(アーシェは根に持つタイプじゃからな。仕返しができると楽しみでしょうがないのじゃろう)


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