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46話

 お城の中は街の賑やかさとはかけ離れ、静けさが漂っていた。メイドさんのような格好をした女性や鎧をきた男性達の顔は不安に駆られたような厳しい顔をして仕事をしている。


「皆恐いのだ……いつ奴らが責めてくるか分からないからな」


 悲しげな表情を浮かべながら話すアーシェさんに連れていかれた場所は誰も居ない広大な敷地だった。よく見るとその一角には槍や剣などが並んでいる。


「後ほどここに各種族の代表達が集まってくる予定だ……その前に君の力を試させてくれ。今アゼクを呼んでくるからその間にでもお父様に訊いて魔法石を使ってみてくれ」


 アーシェさんの言葉を聞いたのか頭からアークリーの声が聞こえた。


(では、魔法石をリィーズから受け取った指輪に)


 アークリーに言われた通りにアーシェさんから受け取った魔法石を事前にリィーズさんから貰っていた魔法石用の指輪に付けるとそれを指にはめてみた。


「準備オッケーだよ」


 右手の指にはめた3つの指輪を見せた。


(では、魔力を指輪に込めるのじゃ。ひとつずつゆっくりでいいからな)


「分かった」


 一呼吸して精神を落ち着かせると指輪の魔法石に意識を集中させたのだった。


 そして……


「できた!」


 何か難しいイメージだったけどそんな事はなかった。難なく成功させるとアークリーからそれは魔力が底知れないからだと呆れながら言われた。


「見た目にはあんまり変わらないのね」


 美沙は色んな方向から俺をじろじろ見ると感想を口にした。


「凄いよ、身体が軽くて重力を感じないみたいな感覚なんだ」


 試しにジャンプしたり走ってみたりと色々な動きを試したところ美沙から「早すぎて見えないんだけど」と文句を言われる程の効果に自分でも驚くものだった。


「……なんかズルしてるみたいで嫌だな」


 俺はこれまでの人生を振り返ると必死になって努力をしてきたつもりはなく、多少の勉強はしたが普通に人生を歩んできたのだ。この力で戦いに勝ったとしても嬉しいよりも申し訳ない方が優ってしまうだろう。


「あんたねぇ……国の明暗がかかってるんだから変な事考えないの! 別に悪いことをしてる訳じゃないのよ。あんたは皆んなの為にやるんでしょ?」


(まあ気持ちは分かる。世の中には努力を重ねて生きてきた者はいる。ワシもそうしてきたつもりじゃ。しかしな、お主がその力を自分の為に使っているわけではないのをワシはよく知っておる。それをできるのも立派なことじゃよ)


 ふたりにそう言われると少しばかり罪悪感が薄れた。


「俺、この力は人を助ける為に使うよ」


(最近お主に力を授けた者はきっとお主だから授けたのだと思うようになった。それはこれまでお主の行動を見てきたからだ)


「それはちょっと褒め過ぎじゃない?」


 嬉しいけど褒め過ぎな気もする。


「あんたにはまだ自信が足りないのよ。そんなの大人じゃないんだからあったり前じゃない。逆にあんたの優等生みたいな性格のほうが凄いと思うわ」


「何それ!」


「あら? 褒めてるのよ? 私があんたに惹かれたのはその性格だからってのもあるから」


 何だよ二人とも……恥ずかしくなってきたじゃないか。


「待たせたな」


 そんなとき、アーシェさんがアゼクさんを連れてやってきたのだった。



「ふたりとも準備はいいか?」


「よっと! 準備はいいぜ!」


 アゼクさんは準備運動をするとやる気満々に答えた。


「いつでもいいですよ」


 俺もさっき動いたから大丈夫だ。アーシェさんから受け取った木剣を何回か振って感触を確かめるとアゼクさんと向き合った。


「俺、これでも学校1の腕前なんだよ。母さんの命令だから本気でやるけど、怪我したらごめんな」


 アゼクさんの白い歯を見せてニカっと笑う顔はこの人モテんだろうなと思ってしまう程のイケメンだった。


「本気で来てください」


 剣を構えて模擬戦が始まるとアゼクさんの目が真剣な眼差しに変わった。


 あれ? ……ふと思ったけど剣なんて人生で初めて持ったような俺が勝てるのか?


 運動神経はいい方だけどそんな事で迫りくる剣を捌けるのか、そんな不安に駆られ、踏み出せずにいた。


「来ないならこちらから行くぜ!」


 アゼクさんは俺の不安を感じ取ったのか、威勢よく攻撃を仕掛けてきた。


(落ち着くのじゃ、一流の相手となると感情を読まれる。動揺していては体が硬くなって動きに精彩を欠くぞ) 


「でも、どうすれば……」


 アゼクさんは20メートルくらい離れた場所から一気に距離を詰めてすぐ近くに来ている。


(難しく考えるな。まずは来た攻撃を剣で防ぐ事に集中するのだ。魔法石の力を得たお主の身体能力ならばそれも容易いはずだ)


 アークリーの言葉を信じてアゼクさんの動きを観察した。


「隙だらけだぜ!」


 すぐ横で潜り込むように屈んだアゼクさんが見えると攻撃が来ると察した瞬間アゼクさんの腕から剣が伸びて俺の横っ腹を捉えようとしていた。


 早いよ⁉︎ 無理!


 カン!


「「え⁉︎」」


 俺とアゼクさんの驚く声が重なった。


 絶対に間に合わないと思ったのにも関わらず横っ腹から数十センチの所まで迫っていた剣に俺の剣が間に合ってしまったのだ。


「驚いた! まさか今のが防がれると思わなかったぜ。これは面白くなってきた!」


 それから火がついたアゼクさんの猛攻を防御に徹しているとだいぶ戦闘にも慣れてきた気がする。


(だいぶ慣れてきたようじゃな。そろそろ攻撃に移るとしよう)


「どう仕掛けよう……」


(アゼクの攻撃を見てきたであろう? あの攻撃は非常に勉強になったはずじゃ)


 確かにアゼクさんの攻撃方法は考えられたものだった。様々な角度から責めてきたり、防ぎにくい場所を狙ったりと嫌らしさを感じたものだ。


 やってみるか……


 先程の攻撃をイメージしながら俺は地面を思いっきり蹴って飛び出した。


「うお⁉︎ 早え⁉︎」


「は!」


 素早くアゼクさんの視線から消えると背後に回り、背中に向かって剣を振るった。


 ガ! っとヒットした感触が手に伝わった瞬間やったと心の中でガッツポーズをした。


 ズザザザー!


 あ……


 吹っ飛んでいくアゼクさんを見て血の気が引いた。


(バカモン! やりすぎじゃ!)


 アークリーの大きな言葉が頭に響くと急いで回復薬を持ってアゼクさんに駆けつけていた。



 


 




 


 






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