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45話

「ふぇ⁉︎ ど、どうしたの⁉︎」


 朝の眠りから覚めた時、目の前に映る美沙の顔に思わず変な声を出してしまい、驚き過ぎてすっかり眠気が吹き飛んでしまった。


「どうしたのって、寝顔が見たくて来ちゃった」


 同じベッドの上で頬杖をつきながら美沙は笑みを浮かべている。ずっと俺を見ていたらしい。


「そ、そうなんだ」


 俺だって朝から可愛い美沙の笑顔が見れて幸せだ。でも、それを口には絶対出せない。残念ながらそれが今の俺だった。ここで美沙を喜ばせる一言でもかけられたらどんなに素晴らしい事か。


「見た目が女の子だけどなんかムラムラしてくるわ……」


 何か今の美沙の妖艶な微笑みがいやらしい顔つきに見えて俺の胸はドキドキとうるさいくらいに鳴ってきた。


「ふふっ!」


「わ!」


 美沙はいきなり俺に覆い被さってきた。


 いい匂いがする……


 美沙の柔らかい体といい香りが俺の心を癒してくれる。抱き合う形でいると美沙の小さな声が聞こえた。


「あんたはエッチな事したいとか思わないの?」


「え⁉︎」


 俺は美沙の言葉に動揺が止まらない。一瞬頭が真っ白になってしまう。


「な、な、何いきなり⁉︎」


 まだ精神的に中2までしか成長してない童貞には刺激が強く、情けないことに顔が熱くてしょうがないくらい動揺していた。


「あんたの年齢だとそういうのに興味が出てくる頃なんでしょ?」


「ま、まあ興味がないって言ったら嘘になるかな……」


 美沙が顔を覗き込んできたのを恥ずかしいからと、さっと横を向いてしまう俺。


「してみる?」


「ええ‼︎」


 部屋の外にも聞こえそうな大きな声を出してしまった。


「まだ時間もあるし……」


「あ! ちょ、ちょっと⁉︎」


 服を脱ごうとする美沙を見て思わず目を背けてしまった。


「ぷっ、あはは! 冗談よ。朝からそんな事するわけないじゃん!」


「あ! からかったな!」


 腹を抱えて笑う美沙に顔を真っ赤にしながら抗議した。


「ん⁉︎」


 しかし、そんな俺に美沙は再び覆い被さると唇を奪われた。


「……でも、いつかはあんたから襲われたい……かな」


 唇を離した後、すぐ目の前にいる少し顔を赤くした美沙がそう言った。


 襲われたい……その意味はなんだろう? それはきっと何かを俺に求めているのかも。もしかしたら恋人同士になったのにそれらしいことをしてあげられてないのかもしれない。


「……ごめん。美沙のことが好きなのは本当だよ。今まで女性と付き合った事がないからどうしたら良いか分からなくて」


 思えば付き合う前からそれほど美沙との距離が縮まったとは感じていなかった。まだ友達から抜け出せていないと、美沙はそれが少し気になっていたのかもしれない。


「私も謝るわ。別に急かしているわけじゃないの。ただ、私はあなたの全てが欲しい……私が特別だっていう証拠が欲しいの……ごめんね、私ってめんどくさい女ね」


 少し悲しい顔を見せる美沙に俺は堪らなくなって彼女を引き寄せると今度は自分からキスをした。


「不安にさせてごめん、全然めんどくさくないよ。美沙の為だったら俺……」


 彼女の目が「きて……」と言っている気がした。俺は覚悟を決めると彼女の服に手を伸ばした。


 ガチャ!


「あ……」


 まさに絶妙なタイミングでマーリラが部屋のドアを開け、そして俺達を見た。その後、みるみる顔が真っ赤に染まると後退りを始める。


「ご、ごめんなさい‼︎」


 勢いよく閉まるドアに俺はやってしまったと思った。


「……」


「ふふっ、見られちゃったわね」


「……いいよもう。どんな目で見られても構わないから」


 俺は少し変わらなきゃいけないと思った。もう数年もすれば大人になるんだからいつまでも子供みたいな考えはやめよう。


「続きは今度ね」


「そうだね……」


 美沙はベッドからドアに移動すると俺を見て言った。


「さっきは結構男らしかったわよ? 私、ドキッとしたもん」


 美沙は嬉しそうに部屋から出て行ったのだった。

 


 俺はアーシェさんと約束していた時間になると迎えの馬車に乗り込んだ。


「これから城に案内する。昨日話した通り時間がない、各種族達にはうまく城に来るようけしかけたから今頃息巻いて向かっているだろう」


 アーシェさんは馬車の中でふふっと、してやったりの顔で話した。


(ふっ、アーシェに余裕が出て来ているな……これなら心配ないだろう)


 アークリーの嬉しそうな顔が目に浮かぶような言葉が頭から聞こえた。


「それで……城に着く前に渡しておくものがある」


 アーシェさんは持っていた袋から3つの宝石を取り出すと俺に差し出してきた。


「昨日言っていた魔法石ですか?」


 それを受け取りながら言った俺の言葉にアーシェさんが頷く。


「説明すると赤い魔法石が力を上げ、黄色い魔法石が瞬発力を上げ、青い魔法石が身体の強度を上げるものとなっている」


 俺は説明を聞きながら魔法石を眺めた。


「本来ならそれを一つしか発揮できないのだが、君なら全てを使えるとみている。城に着いたら早速訓練場で試して欲しい」


(これは実に楽しみじゃのう)


「分かりました。やってみます」


 そしてしばらくした時、美沙のお父さんについて聞いてみる事にしたのだ。


「すいません、実はこの子のお父さんがポートラからこの地に来ているはずなのですが心当たりはありませんか? ポートラでは戦士団に入っていたのでもしかしたらここでも戦いに身を置いているかもしれません」


 俺の質問にアーシェさんは考える素振りをしながらしばらく時間が経つと何か思い出したのかパッと目を開いた。


「そういえば城の部隊にそういった者がいると聞いた事がある」


「本当ですか⁉︎」


 美沙は嬉しそうな顔で喜んでいる。俺も当然嬉しかった。


 馬車から降りると、目の前に映る城を見て期待を胸に歩き出した。


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