42話
リィーズさんは胸に光る魔法石を握ると俺は意識が薄れていった。
「ここは……」
目の前は真っ白な世界が広がりここがアークリーの話にあった精神世界だと分かった。
「本当に何もない世界なんだ……」
「そうじゃ」
「……もしかしてアークリー?」
目の前に現れた人の良さそうな老人だが目は知性に溢れていてなんでも見抜くような鋭さを感じる。初めて見るアークリーの姿は想像していたヨボヨボのおじいさんとは程遠い、しっかりとした体格だったのに驚いた。
「うむ、こうして会うのは初めてじゃな。会えて嬉しいぞ!」
「うん! 俺も!」
いつも頭から聞こえていた声が目の前の老人から聞こえてまだ違和感があるけど仕方ない。
「お父様……」
そんなアークリーとの初めての出会いを果たしていた時、リィーズさんが現れた。
「リィーズ……そんなにやつれて……セーリィが見たら悲しむぞ」
「そんな……またこうして会えるなんて……うぅ……」
リィーズさんはアークリーの側に来るとそのまま抱きついて号泣していた。それをアークリーは受け止めると優しい眼差しで娘を見ていた。
「そうですか……お父様が亡くなられた後、あなたの中に……」
「はい。アークリーにはいつも助けてもらって感謝しています」
リィーズさんが落ち着くと俺はこれまでの事を話していた。
「奇跡のような出来事ですがこんなに嬉しい事はありません」
「ワシも初めは信じられんかったが今は幸運だったと思ってこやつの人生を楽しんで見ておる」
それからリィーズさんはアークリーに話したい事が沢山あるのか、楽しそうに話し始め、時間は過ぎていった。
「そうだわ! 今日は皆を呼んでお父様の帰郷をお祝いしましょう!」
リィーズさんは魔法を解いた後、嬉しそうな笑顔を見せていてすっかり元気を取り戻したようだった。
「あなたはお父様を宿している大事な人、ベルダー家の一員としてお迎えいたします。これからはここを自分の家だと思ってくださいね」
リィーズさんは笑顔で俺にそう言ってくれた。
「あの! 友人を外に待たせているんです」
そういえば美沙を置いてきていた事を思い出すときっと長時間待たされて怒っているだろうと想像できて焦ってしまう。
「あら? では連れてきてください。歓迎します」
それから屋敷はお祝いの準備とやらで騒がしくなっていた。リィーズさんのあまりの元気な姿に周りの人達は一瞬唖然としていたがホッとしたような反応をしているところを見ると以前からリィーズさんの事を心配していたようだった。
俺は美沙を連れて来ると屋敷の豪華な部屋でもてなされていた。
「何んだか凄い事になってるわね」
美沙は屋敷の騒がしさを見ながら俺に話しかけてきた。
「うん、でもリィーズさんが元気になって屋敷の人達も嬉しそう」
周りのメイドさん達が忙しそうでも顔は笑顔なのが印象的だった。
「それで魔法石はどうなったの?」
「それを話したんだけど、何とかなりそうだよ」
さっきリィーズさんに魔法石を譲って欲しいと持ちかけた所、セーリィさんは3つの魔法石を残していたらしい。姉妹にひとつずつとセーリィさんのお墓にひとつ飾ってあるのでそれを譲ってくれると言ってくれたのだ。
(それなんだが、ひとつ試して欲しい事があるのだ)
頭からアークリーの声が聞こえた。
「ん? 何?」
(お主はとてつもない魔力を秘めておる。普通ならひとりに魔法をかけるのが精一杯なのだがお主なら多数の相手に同時にかける事ができるのではないかと思ったのじゃ)
「もしそれができたら便利だね。やってみるよ」
そんな話をしていると部屋のドアが開かれた。
「うわ〜 あの子綺麗〜 ねえ、アゼク! 見て見て!」
「ちょっと押すな! ……本当に綺麗だな」
同い年くらいの男女が部屋に入ってくると俺を見てキャッキャと騒ぎ始めた。
「あの! おじいちゃんがいるって本当⁉︎」
女の子はリィーズさんから話を聞いていたらしい。いきなり自己紹介を飛ばして俺に詰め寄るとそう話しかけてきた。
「おい、まずは自己紹介だろ?」
女の子の後ろから男の子がそう突っ込むと女の子は「あ!」と口に手を当てた。
「そっか〜 ごめんね! 私はマーリラって言うの。宜しくね」
「お前、貴族なんだからちゃんと挨拶しろよ……」
「別にお城の中じゃないからいいじゃん!」
ふたりは会話からも家族のように仲がいいように思えた。
「あのな、お前は偉大なベルダー家の看板を背負ってるんだぞ? 普段からちゃんと挨拶しないとボロがでるだろうが」
女の子はしょうがないというような態度をとると俺に向き直った。
「わたくしベルダー・マーリラといいます。宜しくお願いします」
「私はベルダー・アゼクスです」
ふたりがあらたまって挨拶をしてくれると俺と美沙もふたりに挨拶をした。
「お願いです。私をおじいちゃんと会わせて下さい!」
挨拶が終わるとマーリラが詰め寄るような気迫で俺にそう懇願してきた。
「魔法石があればできるんですが……」
「分かりました! お母様に借りてきます!」
駆け足でその場を離れるとあっという間に魔法石を手にして戻ってきたのだった。
「ではいきますね」
俺はアークリーに言われた通りこの場にいる美沙、アゼクさん、マーリラさんを意識すると魔法を使った。
「ここは……」
マーリラさんは初めて来た世界に驚いていた。他のアゼクさんと美沙も精神世界に来ていたのを見るとどうやら成功したみたいだ。
「お祖父様!」
アゼクさんがアークリーに気付くとマーリラさんはアークリーに飛びついていた。
「おじいちゃ〜ん! 会いたかったよ〜」
マーリラさんは幼い女の子のように泣きじゃくっていた。
「大きくなったな。マーリラ、それにアゼクも……」
アークリーの目が赤くなっていて、嬉しくてしょうがないといった顔をしている。
3人は楽しそうに話を始めた。俺は少し離れたところから美沙とその様子を見ていた。
「アークリーのおじいちゃんが凄く慕われていたのが分かるわね」
美沙はその様子を微笑みながら見ていた。
「うん、なんだかこっちまで嬉しくて泣けてくるよ」
実際に俺の目には涙が滲んでいる。
「私もお父さんに早く会いたいわ」
「明日探しに行こう。絶対に見つけてみせるから」
俺は美沙の手を握ると美沙が小さく頷いた。




