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40話

 バーレーン王国とはこの世界で一二を争う文明の栄えた国で、魔法は勿論薬や武器なんかも研究が進んでいるらしく、その技術を得ようと世界中から多くの人が訪れるらしい。そうバーレーン王国に向かう途中アークリーから話を訊いていた。


(そのせいか国には色々な人種が住んでいてな、内部争いが絶えないのじゃ)


「治める王様も大変そうだね」


(そうじゃな、王から何度相談された事か)


「アークリーは城に住んでいたの?」


(いや、どうも城の雰囲気が合わなくてな。近くの屋敷に住んでいた)


 そうなるとアークリーの家族を探すのは簡単そうだ。


「じゃあまずは屋敷に行って奥さんに会いに行こう」


 俺は美沙に今の内容を説明する。


「分かったわ。それより大丈夫? 結構飛んでるけど疲れてない?」


 そういえばアークリーと話してて結構時間が経っていた。流石に少し疲れてきたのもあって休憩をすることにした。


「ふぅ……なんだかんだで数時間も飛んでたんだね。疲れるわけだ」


 近くに川があったのを見て降りると岩に腰を下ろした。


「はい、水よ」


「ありがとう」


 美沙から水を受け取ると一口飲み、ひと息ついた。


「あとどれくらいなんだろう?」


(半分といった所じゃな)


「え⁉︎ まだ半分なの⁉︎」


 これまで山を二つ越えたし、大きな川も越えたのに……


「もしも馬車とかで行くとしたらとんでもない時間がかかるんじゃ……」


「お父さんが中々帰ってこれないのも頷けるわね」


 美沙の言う通りだ。俺みたいに真っ直ぐ行ける訳じゃない。山や川を越えるか迂回するかなんて考えただけでも気が遠くなりそうだ。それに魔物だって道中注意しなきゃいけない危険な旅だ。想像を絶する旅を美沙のお父さんはしていたんだと思った時、胸が熱くなった。


「早くお父さんを安心させてあげたいね」


「うん、無事でいてくれるといいんだけど……」


 美沙もここまでの道を見てきたからか、不安そうな顔をしていた。


「無事を信じよう。今頃バーレーン王国にいるはずだよ」


 美沙はコクっと頷いた。手をギュッと強く握っているのはきっと泣きそうになるのを堪えているんだろう。俺はその手を自分の手でそっと覆うと美沙に目で大丈夫だと言った。すると美沙は赤くした目を擦り小さく頷いた。



 あれから休憩が終わると再びバーレーン王国に向けて飛んだ。あの会話をした後だからか、前よりも少し早く飛んでいる俺がいた。早く着きたい思いで夢中で飛んでいるとやがて前方に大きな城と街が姿を現したのだった。


(おお……またこの風景が見られるとは思わなかったぞ)


 アークリーの嬉しい気持ちが伝わってくる。確か俺に乗り移ったのが5歳の時だから10年ぶりの故郷を目の当たりにして感傷的になっているんだろう。


「結構人がいるね。皆んなあのお城に向かっているんだ」


 空から下を見ていると次々に馬車が列をなして俺達が行く場所に向かっている。


「流石にここで降りたら大騒ぎになるから少し離れた場所にいきましょ?」


 俺に抱き抱えられている美沙の言葉に頷くと辺りを見回した。すると森が見える。


「あそこなら大丈夫そうだ」


 降りた先の森は日が落ちる前ということもあり少し暗い。風で草木が擦れる音が耳に入ってくると微かに魔物か動物の鳴き声のようなものが混じっていた。


「お疲れ様。よく頑張ったね」


 美沙が労いの言葉をかけてくれると不思議と体の疲れが吹き飛んでしまう。


(お主はやはり規格外じゃ、まさか1日でここまで来てしまうとはな。底がしれん)


 アークリーの呆れたような声を聞きつつ歩き出した。


「地上から見ると本当に大きい街だね。お城はポートラとそんなに変わらないけど」


 段々街に近づくにつれてその大きさはポートラを遥かに凌いでいた。


「とりあえず今日は宿に泊まる? 流石にもう暗いから屋敷は閉まっているかもよ?」


「うん、疲れたからこれから行けって言われても無理そう」


 明日にしようと決まればゆっくり休める場所に行きたい。そして柔らかいベッドにダイブしたい。


「ねえアークリー、いい宿知ってる?」


(勿論じゃ! とっておきの宿を紹介しよう)


 アークリーはいつもよりテンションが高くて楽しそうだ。色々見たいはずだからこの国にいる間はずっと起きていてもらおう。



「やあ、君のような美しい女性は初めてだよ。ぜひ僕とご飯を……」


 街に入った瞬間だった。いきなりのナンパに嫌な思い出が甦る。


「結構です」


 しかし、今の俺はそんな事にはもう動じない鉄の心をもっているのだ。


 美沙の手を引いてその場をやり過ごすと周りの反応が初めてポートラの街を歩いた時と同じものだった事に気付く。


「見て見て! あの人!」


 興奮しながら俺に指を差してくる若い女性。


「うっとりするくらい綺麗ね〜 それにあの銀髪って珍しい種族じゃなかったっけ?」


 ん? 何それ? どういう事?


 いきなり興味深い事を耳にすると足が止まった。


 そういえば今まで気にしていなかったけど本当に銀髪の人って見ない。そうなると俺の種族が段々知りたくなってくる。


「アークリーさ、もしかして俺の村の事何か知ってるの?」


(ん? まあ少しはな)


 何で教えてくれなかったんだと言いたい気持ちを抑えてまずはここを抜け出す事を優先する事にした。


「やっぱりあんたずるい!」


 美沙は何か思うことがあるらしく宿に着くなり俺に詰め寄ってきた。


「え?」


「え? じゃなーい! 自分だけそんなに可愛くてさ!」


 俺から見ればぷくっと顔を膨らます美沙がもっと可愛いいけど。


「美沙も十分可愛いじゃん」


「も、もう! 嬉しいけどちがうの!」


 顔を赤くして抗議する美沙を見ながらもしも逆の立場だったら俺は少し妬いてしまうかもしれないと、美沙には悪いけど良かったと思ってしまった。


「でも、俺男だから別に妬かないでしょ?」


「それは安心してるけど……」


 まだ納得する様子がない美沙を連れて宿を取ると部屋に急いだ。


「一番いい部屋にしちゃった」


 お金は腐るほどあるからこういう時は奮発するべきだと思い切っていわゆるスイートルームってやつを選んだ。


「すごーい! 広いし眺めも最高!」


 美沙はさっきの事を忘れてはしゃぎ始めると窓から見える街並みをアークリーに見せるように眺めた。


(懐かしいのう……あれから何も変わっとらんな)


「想像していたよりも凄い街並みだよ。一体何人住んでるのか分からないくらい」


 これからどんな出会いが待っているのか、美しい街並みを見ながら楽しみで仕方がなかった。

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