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la lune

5話の続きです。

オリエンテーションも終わって、履修登録など慣れない作業を新しく出来た友達と一緒に試行錯誤しながらも完成させた。

そして、ついに大学一年生の春学期が始まったのだ。今までとは違う人々、景色、授業形態などすべてが僕の目に新しくそして、鮮やかに。


それは、君がいる配信アプリもそのひとつ。

基本的に君は大学が終わった後、決まった夜の時間帯に配信をしてくれているから、学生の僕にとっては聞き逃さなくて良いのでありがたい。


今夜も配信をするんだろう、なんとなく見当がつく。


(最近は、毎日のようにやっている。暇なのか?)


4限まで講義を受けて、電車に乗って最寄りまで向かいそこから市営のバスに乗り換えて家に帰る。

夜ご飯を食べて、お風呂に入って自分の部屋に向かう。

少し窮屈になったキャスター付きの椅子に腰を掛ける。

ここまでのスケジューリングは完璧。

椅子に座ってから息をつく間もないほどに通知が来る。

もちろんここまでの完璧な行動は、配信を聞くためだ。


「こんばんは~。今日は寒いね。」


YoU こんばんは


「お、ユー君じゃん。あれ違うんだったっけ?ようやく名前覚えたよ。」


「私すぐ忘れちゃうからさ。」


YoU そうなんですか?覚えてくれてありがとうございます。


「そうそう私なんでもす~ぐ忘れちゃうから。鍵もエアポッツも無くすし。」


YoU 無くし易いもの上位な気がするけど


プレストン やっほ


「よ。プレ」「今日は何食べたの?」


(プレストンさん。前々からコメントしてるとこたまに見るけどなんか仲良さそうだよなー)


YoU 前、名前の読み方聞いたけど、由来とかあるんですか?


プレストン あ、それ気になる


「ん?由来?ん~え、教えない。恥ずかしいから。」


プレストン なんだなんだ?言えない理由があるのか。


YoU プレさんなんでしょうね、これは


プレストン 当てるぞユー


たまたまコメント欄で絡んだら案外ノリが良くて一緒になって「名前の由来」を当てていこうとした。

案の定、二人からの質問攻めにあった君はのらりくらり。

結論には至らなかった。


当てることにふたりして夢中になっていたら、視聴数が少なくなってコメントの履歴には二人のログしか残っていなかった。


配信が終わった後ーーー


僕は少し反省していた。

というのもこれは「君の配信」なのであって決して僕たちが目立っていいわけじゃないし、他のリスナーとも交流したいのだろうから、初心者とは言えども今回はリスナーとしてあるまじき行為だったのではないかと。


(誰かに相談できないかな)


おもむろにSNSを開く。


「☾」のフォロワー欄から「プレストン」の名前を探しフォロー申請した。

すると、思いの外すぐに承認されて、フォローしてくれた。

すぐにDMを送った。


               見ず知らずの人間なのにフォローしてくれてありがとうございます。

                                 午後22:00


いや、全然w

寧ろネットなんて「見ず」の人しかいないよ。

それに、さっきの配信楽しかったし。

午後22:00


                          そうなんですね。。

                          さっきコメントしすぎちゃいましたね。。

                          僕たち以外が入るスキ無くしてしまって

                          ☾さんに申し訳なかった。

                          午後22:01


それな。

ちょっとやりすぎたな。

次枠からコメント減らすか。

午後22:02

                         

                          そうですね。

                          ちょっとそれについて作戦会議しませんか?

                          午後22:03


いいよ

じゃあ「ルーム」で話そう

午後22:03

                       

                      ルーム?なんですかそれは違うアプリか何かですか?

                      午後22:03



違う違うw

機能の中にオープンではあるんだけど話せるの

まあ公開電話みたいな感じ。

午後22:03


                          へえ、そんなものが、便利ですね。

                          やりましょう。

                          午後22:04


僕はおそらく作戦会議は体のいい誘い文句で、本当はただ単にSNS上で初めて「友達」が欲しかっただけなのだろう。


(ちなみに、読み方を君に聞い時何でも良いと冷たく言われてしまった。良いのが思い浮かばず結局は

そのまま月さんになってしまった。)



僕はプレストンに「ルーム」の概要ややり方を教えてもらった。

どうやら「ルーム」というものは枠を作ってそこにリスナーやスピーカーが入るという機能で、誰でも入れるようだが基本フォロワーしか入ってこないらしい。

さながら配信とあまり遜色はないように感じる。


そして、教えられた手筈の通り「ルーム」を展開する。

そのあと、プレストンを招待する。


するとプレストンが参加した。


「おー、ユー初めましてだね。」


「あ、初めまして。プレストンさんですか?」


「そうだよ。プレストンさんて呼ばれるのなんか変な感じするからプレでいいよ。」


「わかりました。でプレさんさっきの配信のことなんですけど。。」


「あーちょっとやりすぎたかもね。こっちも周り見えてなかった。」


「☾さんに申し訳ないです。次はもう思い切ってコメント送らないようにしようかな。」


「さすがにやりすぎじゃない?!けど少し俺らも他のリスナーにも絡んでほしいし自重するか。」


「ですね。反省です。ファンが増えてほしいし、☾さんが楽しんでくれるのが一番ですからね。」


「だね。」


こうして次の配信では、二人して自重した。

と言ってもコメントを送ることを完全には止められなかった。

ただ、それが功を奏したのかその回の配信はかなりにぎわっていた。


その日の夜もプレと「作戦会議」で話し合う。


「いや今回はうまくいったんじゃない?」


「確かに。かなりにぎわってたし、何より☾さんが楽しそうだったからよかった。」


「ほんとだね。これからもそうしていこうか。」


「なんか僕たち邪魔してたような気がしますね。」


「それな。あんまり他の人は良くは思わないよな。」


「なーに楽しそうなことしてんの?」


突然聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「ん?」


「誰か喋った?」


「いや僕じゃないですよ。プレさんじゃないんですか?」


「いや俺じゃないけど。。」


「私だよ。私。なんか面白いことしてんじゃん入れてよ。」


そうその声の正体は「☾」だったのだ。

突然のことに驚きを隠せない。こんな「ルーム」に顔を見せるなんて。

確かに、ルームはだれでも入れる仕様だけどまさか、話の中心にいた張本人が直々に訪れたのだ。


「え、☾さん??なんで」


「びっくりしたは。流石に」


「そうでしょう、そうでしょう」


「だって珍しいことやってるからさ、そりゃ入りたくもなるじゃん?」


「そうは言っても、こんないちリスナーの集まりに来ないですよ。。」


「ま、いいじゃん。細かいことは。気にしない。」


「いや、俺も初めて会話するは。」


「え、プレさんも初めてなんですか?ちょっと意外かもしれない、仲良さそうだったから。」


「DMでは何回かあるけど実際は初めてだわ。」


「そうね。私基本、電話とかしないからDMも返すのめんどくさいし。」


「あ、そうなんですね。」


なんでか、心が安堵している自分がいる。


「ん~けどもう眠いな、またやるんでしょ?そん時またお邪魔させて。それじゃ」


☾さんは去っていった。ただその後も僕たちの高揚は収まらない。


「え、いやまじかよ。。来ると思わないじゃん。。よ。な?」


「ホントですよ。何喋ればいいかわかんなかった。」


「またって言ってたな、また今度やったら来るのか?」


「そう、言ってましたけど。。と、とりあえず僕たちもお開きにします?」


「そうだな。じゃまた今度。やる理由できちゃったね。」


「はい。。。」


そうしてルームは終了した。

次やる理由としては、この上ない理由が出来上がってしまった。


ある日の夜、プレとお互いに連絡を取りあって予定を合わせて、「ルーム」をすることになった。


「ほんとに来てくれるんですかね?」


「ん~、向こうの予定聞いてないからわかんない。」


「そうですよね。少し待ってみますか。」


「そうだね。来るのもほんとかどうかわからないしね。」


「今忙しいかもですもんね。タイミング合わせるの大変だ。」


「どうだかね。来てくれたら御の字くらいで気長に待ってよう。」


「あ、やってるじゃん。」


「あ、きた。」


「あ、きた。」


「なんだよ、二人して。」


「だって本当に来ると思わなかったから。」


「そっちだって、いつやるかわかんないんだもん。教えてよ。やるなら」


「DMするのなんか緊張するんですもん。。」


「え、何それかわいい。」


(僕の心がドキッとした。)


「じゃあさ、こうしよう私がそれ用にアカウント作るからさ。フォローして」


「マジ?」


「ほんとですか?」


「うん、じゃあこれ終わったら作っとくからフォローリクエスト送っといて」


「おっけー」


「わかりました。」


「それにしてもなんか新鮮だね。リスナーとしゃべるなんて」


「僕たちコメントだけですもんね。」


「そうそう。こういうのも悪くないのかもね。」


「てことは、これからもやってくれるってことだよな?」


「うーん、そうね。今んとこはそのつもりだけど。」


「おお、いったな?」


「聞いたか?ユー」


「ばっちりです!もう脳内再生も余裕ですよ。」


「あはは、ほんとにおもしろいね。ユー」


「ユー、面白いやつだよな。これからラリュもハマると思うよ。」


「なに、ラリュって」


「月だからだよ。」


「うん。全然言っている意味わかんない。」


「僕も理解できないです。。」


「ま、なんでもいいよ。」


「けど、その呼び方僕気に入りました。」


「じゃあ俺らの共通の呼び名にしようぜ。」


「いいですね、今まで呼び方決まってなかったし。」


「なんか活舌悪い人みたいでいやだけど、好きに呼んで。」


「やったー、じゃあ決まりですね。」


「愛称みたいな感じでな。親近感湧くしな。我ながらよくできた呼び名だ。」


「自画自賛してるよこの人。」


「ほんとだよ。。意味わかんない名前なのに。」


「理解する方が無駄かもです。。」


「ほっとこ、ほっとこ。」


「おいおい、別にいいだろ?一応補足するけど、フランス語な。」


「へーどうでもい。」


「もっと興味もってよ。」


「プレかわいそうすぎる。」


「助けてくれユー、ラリュが冷たいぜ。」


今回の「ルーム」おかげで一気に二人との距離が縮まったように思える。


そんな時間はすぐに時間が過ぎる。


(僕たちはラリュさんがたまたま来てくれたからやりたいと思うけど、なんでラリュさんは来てくれるようになったんだろう。)


終わった後、そんなことが気になった。


当然、僕たちともともと仲がいいわけでもないし、わざわざ一介のリスナーの集まりに顔を見せるなんて何か理由があったのだろうか。

もしくは、いつものただのきまぐれなのか僕には彼女を知るすべはない。


終わった後に専用アカウントを作ってくれて、なにか特別感があって嬉しかった。

アカウント名は白地で「★」だった。

やっぱり意図はわからない。


(夜空が好きなのかな。)


ひょんなことから話すようになった、僕たちはその日から少なくとも3日に一篇はするような間柄になった。

時には僕が開いたり、プレが開いたり、片や君が直々に開いてくれたり。

僕達と話すことが日課になって、僕たちと話すことを楽しみだと思ってくれてるととても心が満たされるようだった。


特にうれしかったのが配信そっちのけで、時々僕たちとのルームを開いてくれて話をしてくれるところでより一層ほかのリスナーより、特別な存在になり得ているのではないかと思えた。


それはきっと、プレも同じ気持ちだろう。


ある日のルーム


急にラリュが


「みんなどこ住んでんの?」


急にそんなことを言い始める。

彼女の言動には勝てない。


(どこ住みかなんて、知らない人に言えるわけないじゃないか。危ないことになったらどうするんだ。。)


すると、プレはいとも簡単に自分の住んでいる県を言うものだから僕は肝を冷やした。


「ん、俺は長野だよ。」


どうして、、あんなにもすんなりと言えるのか。


(これがネット歴の差なのか?

県ぐらいなら言ってもなんともないものなのか?

僕も言うべきなのか?いわないとだめなのかな?)


僕の中で葛藤が起きる。


(ここは、嘘でも言った方がいいのか。)


意を決して勢いに任せた。


「ぼ、僕はや、山梨県です。。」


自分でも驚いた。

噓をつこうと思っていたのに、本当に住んでいる地域を言ってしまった。

何か言わなければという焦りもあったが、やっぱり噓をつくというのは性に合わない。

今まで二人と話をしてきたから、悪い人達だとは思わないけど少し素性を明かすのは恐怖がある。


「へえ、そうなんだ。みんな違う場所に住んでるね。」


「そういう、ラリュは何処住みなんだよ。」


「私は教えなーい。」


「なんなんだよ、人には聞いといて。」


ホントだ。

人には聞くくせに何も言わないのは、とんだ言い損をした気分になる。

同時に僕も


(くそ、僕もその解答すればよかったのか。てかそれありだったのかよ。。)


一本食わされたような気分にもなる。


「じゃあ、何歳なのよ?」


今度はプレが質問をした。


(ここはすぐに言わないぞ、二人の出方を待とう。)


「俺は22歳。」


(な。また簡単に。いや、年齢くらいだったらべつにいいのか?それはばれたとこで何の支障もないし)


実際、これまで話していて使う言葉や声質から、お互い年が離れているようには感じなかった。

だからか余計に、波長が合うように感じる気がする。


それがより言いやすくなる要因だった。


「僕は19です。」


結局言ってしまった。

二人のを聞いた後に言おうと思ったのに。

言わなくてもよかったはずなのに。


「私は・・・


(おーさすがにこれは言ってくれるのか、けど女性だとちょっと言いにくい部分だったりしないか心配になった。)


「女の子に年齢を聞くのは野暮なんじゃない?言いにくいだろうし・・・」


思わず口から出てしまった。


・・・恥ずかしいのでこれも教えません。」


「んだよためといて結局言わないんかーい。」


普段は真面目そうなプレが、笑いながら突っ込みを入れる。


僕も思わず吹いて笑ってしまう。


思わず、僕以外いない自分の部屋で漫才ツッコミ担当のように頭を小突いてしまいそうになった。

きっと、君が隣にいたのならそうしてしまっただろう。


君は楽しくしてくれる不思議な力を持っている。

それは、配信やルームでも喋っていて感じられる。


僕には備わっていない能力だと思ったし、君がすごいなと心の底から思えて尊敬の念さえも芽生えた。

君のことについて知っていることは、正直0に近い。


それでも、一つ分かったことがある。

君は僕にとって太陽みたいに眩い存在なのだと。

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