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呼称

第3話です。

翌朝になりぐっすり寝れたのか目覚めがとても良かった。

1日経っても、あの経験を鮮明に思い出すことができる。

こんな朝っぱらまだ7:00。

いつもは脳が機能していない状態のはずなのに、今朝は起きた瞬間から


今日もまた配信しないかな。

そんなことを切に願っていた。


大学のオリエンテーションが始まるまであと3日だったが、大学生活への不安そっちのけだった。

なんなら、あと何日かすら覚えてなかった。


正直、高校を卒業してから大学に入学するまでの間、長い期間あまりやることがない。

暇を持て余している。

さすが人生の夏休みと呼ばれるだけあるのかもしれない。


そんな今日もあまり最近の日常と変わらず、好きな野球ゲームをやって飽きたら好きな動画を見て、それも飽きたらサブスクリプションで、映画だのドラマだのをダラダラと鑑賞する。


明らかに怠惰な生活を最近は送っている。


ただ

こうゆう時間の浪費をできるのは、学生の時までなのだから今のうちに好きなことをしまくろうじゃないか。


と本当は考えなければいけないこと、やらなければならないことが他にあるはずなのに、目を背けるかのように自分に言い聞かせていた。


そんな先延ばし癖が付いたグータラな生活に、見かねた母親は心配と何処からか湧き出てるであろう妬みのようにも聞こえる言葉で僕に問いかける。


「アンタ、そんな感じで過ごしてて平気なの?もうすぐ大学生にもなるんだからちゃんとやることやってよね。」

「妹もいるんだからちゃんとお兄ちゃんとして模範になりなさいよね。」


そうだ。僕には妹がいる。

妹のためにもしっかりと模範にならなければ、自分が何か失敗を犯してはいけない。

そんなこと、そんなことはわかっているのだ。

心の片隅にいつもそう心得ている。わかっている。

わかっているから、余計口うるさく言ってくる親に対して腹立たしく感じてくる。


時々、僕はこう考えてしまう。


(早くオトナになって"自由"になりたい)


そしてまたその憂鬱な気分を晴らすかのように、自分の好きな娯楽に時間を費やす。

最近はそうやって、時間が忙しなく過ぎていく。

正しい時間の使い方だとは思ってはいない。

けれど、僕にはこの過ごし方しか思いつかなかった。


そんなこんなで、月が太陽の光に照らされて主役になる時間ーー


昨夜はこの時間帯に配信が始まったので、僕はそれとなく君が配信をしないかなと身構えつつソワソワし始めた。

ただ、待てども待てども


(配信を開始しました)


という通知は一切入ってこない。

昨日は21:00から始めていたけど、今日はきっと始めるのが遅れているのだ。

きっと、忙しいんだろう。


そう自分に言い聞かせながら、時計は午後11時になった。

段々と今日はやらないのだろうと薄々悟り始めた。


半ば諦め半分でベットに入るが、少しの可能性を信じてスマホをベットの隣に置いて、いつでも反応できるように待った。

もちろん寝ようと思っても寝れない。意識がスマホのに向いているから気が休まらないのだ。


すると、ようやくスマホがバイブレーションを起こした。

僕は一瞬にして目が冴え渡った。


(ようやくキタ!ようやく聞けるんだ今日も!)


期待に心膨らむ中、暗い部屋の中でやけに明るい画面に映し出されている通知の内容に目を通す。


次の瞬間僕は唖然とした。


「おい!陽暇だからドライブ行こうぜ!」

                午前1:09


いや、お前なんかい。

連絡をよこしてきたのは友人の龍馬だ。


この時期はやたらと暇で免許も取り立てのやつが多いからドライブに駆り出されることが多くなる。

友達だから申し訳ないが今じゃない!!こんな時間に送ってくんなよ!


期待したが、損した気分になってしまった。

まぁこんなことを思っているが、龍馬はかけがえのない高校の頃からの親友で暇なのは間違い無いし、なんせこのやるせない気持ちをどうにかしたい。


モヤモヤする気持ちを晴らすために龍馬のドライブの誘いに乗ることにした。


            「わかった、いいよ。」

                   午前1:12

「ナイス、迎え行くわ」

 午前1:13



眠気もあるが、それよりもモヤモヤが上回る。

龍馬がくるのを待つ間も、明日はやってくれるだろうかと淡い期待を抱く。


しばらくして

龍馬が迎えに来たので、寝ている両親と妹を起こさないようにそっと家を出て鍵を閉める。


車に乗ると、免許取り立てほやほやで何かとドライブしたい龍馬が満面の笑みを浮かべて、こちらを見ている。

すると、僕が浮かばない表情をしていたのか龍馬は


「ういーす。お前、元気なくねどした?」

「え、まさか彼女と別れたん?」


僕はクスッと笑ってしまった。


「ちげーわ。」


すると笑った僕を見て龍馬は


「そりゃそうか、おまえ付き合ったことねーもんな。ましてや手つないだこ」


(そう僕は今の一度も付き合ったことがない。年齢イコール彼女いない年数なのだ。)


僕は話を遮り


「うるせーよ」


と笑いながら言い返した。


笑ってしまったのが少し悔しいが、龍馬の周囲を明るくさせる力に僕自身何度救われたことか。それと同時に少しその力があることを羨ましく思う。僕には備わってない力だから。

なんだか、ひと笑いしたら気持ちが少し晴れた気がする。


シートベルトをカチッと締めると車は発進して、海岸沿いを走る。

そのあと近くのラーメン屋で、夜中にいかにも体に悪そうなこってりラーメンを食べて、また海岸沿いを走りながら爆音で、音楽を流して大熱唱する。


これが青春というものなんだろうなと、噛みしめながらこの時間を楽しんでいた。

その最中、龍馬がなんとも学生の会話という話を切り出してきた。


「大学入ったらカワイイサークルの乳デカ先輩と付き合えたりしねーかな?で、で俺が3回生になったら今度は後輩と仲良くなって喰いまくったりとかさ。は~早く大学行って遊んでみて―!ハーレムを俺は作る!!」


僕は


「アニメみたいなこと言ってんじゃねーよ。ってかお前もういま彼女いるじゃん。何言ってんだよ。葵ちゃんかわいそうだろが。そんな事絶対嘘でも言ってやんなよ!」


龍馬には、高校時代から一学年下の後輩である、葵ちゃんと付き合っているのだ。


今まで交際経験、ましてやちゃんと会話したすら、片手に収まるくらいしか身に覚えがない。

僕としては、せっかく付き合っている好き同士なはずなのに、相手を悲しませることが出来るのか理解ができない。


世間一般的に見ても許容はされないだろうだが、同時に学生同士の付き合いは、この程度の恋愛が至極一般的なのだともわかってはいる。

僕が恋愛を美化しすぎていることも分かっている。


だが、やはり僕は恋人がいるありがたみが分かっていないと少しイライラしながら


「葵ちゃんがどんだけお前にやさしくしてくれてるのかわかってないのか?そんなこと思うならいっそ別れてやれ、葵ちゃんのために!!」


すると龍馬は少し驚いた表情をしてこう口を開いた。


「そんな怒るなって、冗談だろ?冗・談。そんなことわかってる。葵はいいやつだ。かわいいし。わかってる。。けど新しい環境に胸膨らますのは悪いことじゃないだろ?葵より好みの女いたらそうなるだろ?男なんだしましてや学生なんだ女とっかえひっかえするくらいがちょうどいいだろうよ。」


まったく龍馬の言葉が理解できない。

怒りがふつふつ湧いてくるが、少し深呼吸を挟んで考えてみた。

確かに龍馬は顔が整っていて、身長も183もあるから女の子は引く手あまた。

龍馬は女の子に困ることがないから、この考え方に至っているのだと。

僕とは持っているモノも考え方も違うんだ。


「おまえそういえばそうゆうやつだったわ。」


僕は少しあきれた顔で言った。


ふと、朝焼けの海岸とその先に広がる水平線を途方もなく眺めていると、なんだか眠気も配信のことなどとてもちっぽけで忘れてしまえるようだった。


そんなこんなで無事僕の家の前まで着くと、龍馬が


「またすぐドライブしような!お前も早く免許取れよ!」


と言ってきた。

ドライブ自体は好きなのでいくらでも行きたい。

免許に関しては、龍馬はスポーツ推薦で大学が決まったため車の免許を取りに行けたが、僕は大学受験が3月初旬まであったから、なかなか行ける機会がなかったのだ。

今年の夏までには、行きたいと思っている。


僕は


「ありがと、またね。」


と言うと、車内に鳴り響く音とともに車はどんどん小さくなっていく。


家に帰ると、父が仕事の支度と朝食を食べるためにすでに起きていた。

もう朝の6:30なのだ。


今までだったら、朝帰りなど到底許された所業ではないのだが、今回はなぜか怒られなかった。

すこし不思議に思ったが、大学生になったから大人になったとみなされなたのであろうか、こうゆうところで妙に大人になった自覚が芽生える。


シャワーを浴びて寝る準備をする。

取り敢えず寝よう。


目が覚めると、辺りはすっかり暗くなっていた。

時計を見ると、午後19:31を指している。


すごく時間を無駄にしたなとショックに思いつつ、無意識に体にルーティン化していて、横にあるスマホへ手を伸ばして画面に目をやると、20分前に通知がきていた。

今度は2日連続、ドライブの誘いでもなく、公式からの通知でもほかの友達からのラインでもなく君の配信が開始した通知だった。


やっとだ。と思いつつ、20分も前から始まっていてがっかりした。

どうしてもっと早く起きないんだ、スッと起きろよと自分を責めた。


取り敢えず、一刻も早く配信に入ろう。

すぐにアプリを開き、聞き耳を立てた。

声が聴こえる。なんでかとても安心する。

まだ数回しか聞いたことがないはずなのに、とても心地よい。

そう思った。


「今日さ、スタバに行ってさ新作のやつ飲んだんだけど甘すぎたー」

「最近雨の日多いよねー、桜咲いたらすぐ散っちゃうよね。」


僕はもうコメントすることに何の躊躇いもなく、次々にコメントを送信する。


YoU まだその新作飲めてないから飲みに行きたい


YoU お花見したいから散って欲しくないなー


君がしゃべるたびに、コメントを送信していった。

すると


「んー?これ名前なんて読むのかわからないんだけど

ユーさん?でいいのかな。間違ってたらごめんだけどユーさん前もコメントしてくれてたよね!」


あぁ、何とゆうことだ。なんと君が僕のことを認知してくれているなんて。

感無量以外の言葉が見つからない。

こんな一人のリスナー、前回の配信が初コメントだったのに。


(ユーザーネームの読み方違うけど、、)


また思わず、コメントしてしまう。


YoU 僕のことおぼえてくれてるんですね!!嬉しいです!あと、名前の読み方はヨウです笑


そうコメントすると君が


「あー!ごめんね!!名前の読み方間違えちゃって。この前の配信でいっぱいコメントで反応してくれるから覚えてたんだ〜。」


僕は心の中で


(あーー全然許します!!覚えてくれてるなんて!もう今日から僕の名前はユーでもなんでもいいです!!)


コメントにも


YoU「もう名前の読み方今日付けでユーに変更です!!まだリスナーになって日が浅いけど、これからもコメントとか反応すると思うので宜しくお願いします!」


すると君が


「アハハハッ!君面白いね!これからも応援してね!」


初めて君が自分のコメントで笑ってくれた。

しかもなんだか新しい名前を命名してもらって、名付け親になってもらったようで嬉しかった。


そう。

YoU (ユー)が誕生したのだ。

そんな感情に浸っている間に、今回も気付いたら終わってしまった。


なんか今回のことだけで何故だかより距離が近くなったような気がする。

何とも言えない感情で、嬉しいのは嬉しいのだが何となく、いつものとはまた違う感情のように思う。

スクリーンショットしとけばよかったか?などとも思うほど、記念すべきことだった。


君もまだ始めたてで、まだ登録者が249人だけど、249分の1の確率で認知されていたことは学校内では認知されるとも違う感覚だ。

ネットの世界でどこかの誰かに認知されることが、なにか僕を有名人のような気分にさせた。


アプリをブラウザバックしようと思った時に、ふと気になったことがある。

それは、君のユーザーネームの呼称の仕方だ。


僕にもユーザーネームがあるように当然君にもあるのだけれど、読み方なんて皆目見当がつかなかった。


そんな君のユーザーネームは、絵文字で登録されているからだ。

今度聞いてみよう。


閲覧いただきありがとうございます。皆様にとって興味を持っていただける作品に昇華できているのかはなはだ疑問ではありますがこれからも書いていこうと思うので次回以降も閲覧していただけると幸いです。

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