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隣にいるみたいに

第一話 「出愛 (プロローグ)」の続きです。



配信に入ると、君が喋っている。

録音されたものではなく、リアルタイムでだ。

他のリスナーからのコメントに対して、楽しそうに談笑していた。


僕にとってそれはとても新鮮だった。

というのも、今まで僕はこういった配信を見ることもましてや、配信など今の一度も経験したことも興味もなかった。


だが、今は違う。

僕にとって何もかもが新しく、心が躍った。

意識を配信に戻すと、君は依然楽しそうに談笑していた。


話を聞き続けていると、どうやら君も配信をするのが初めてらしい。

少し驚いた。


でもその割には、配信の勝手を知っているように思えた。

他の配信者をよく見たりするから慣れているのだろうか。


他のリスナーからのコメントに対してテンポ良く回答していったり、自分に最近起こった出来事など他愛もないを話している。

不慣れのような素振りは全く感じられない。


投稿には感じられなかった、素の君が見られているような気がして、配信という機能を僕はとても気に入った。

暫く視聴していると、僕もこの配信の会話に混ざりたいという気持ちが芽生えてきた。


取り敢えず、何かコメントしてみるか。

そう思い、コメントを送信しようとするとどうやらアカウントを作成して、ログインをしなければならないらしい。

今の時代において、インターネットサイトを使用する時、何かとアカウントを作成しログインしなければいけない。


着々とアカウント作成に必要な情報を入力していくと、最後にアカウント名を決めなければならないようだ。


どうしたものか。。

僕には、こういった時用のアカウント名のテンプレートのようなものは持っていない。


(無記名でやって名無しになるのは印象が薄いしなぁ。

なにか印象に残るユーザーネームがいいよな。)


暫くユーザーネームに熟考していた。


野球をやってるから「グラブ」とか?「バント」とか?

安直すぎるか。。

変な記号使って雰囲気とか出そうかな?と色々と考えたがどれもしっくりこず、印象に残らないだろうと思った。

どうしようか。。


またしばらくして


ようやく考えついた。その名前は本名の(アキラ)から読み方を変えて英語表記にして


(YoU)


に決めた。

この時は我ながら上出来なユーザーネームなのでは?などと思っていた。

顔みたいになってるし。


(今思い出すと、インパクトのかけらもないし本名からアイデアを出すなんて、なかなかリスクがあることをしていると思い恥ずかしくなる)


ひとまず、ユーザーネームを設定してアカウントを作成した。

そうこうしているうちに配信の終了時間が迫っていた。


なんと配信には制限時間があるのだ。

僕は戸惑った。


「全然話も聞けてないし、もうすぐ終わっちゃうじゃん」


実はアカウント登録をする際に、配信は聞けなかったのだ。

もっと早くアカウントを作成しておけばよかったと後悔した。


あっという間に終了の時刻になってしまい僕は途方にくれた。

次はいつ頃してくれるんだろう。。

もうしなくなっちゃうかもしれない。コメントして会話してみたかった。


なんて、ブルーな気持ちになっていた。


「またすぐやってくれないかな〜」


そうボソッと呟く。

その時、またスマホが振動する。

まさかと、思いつつ画面の表示を見ると君の配信の通知だった。


まるで、僕のぼやきを聞いてたかのように、君は配信するのだからどこか自分の近くにいるのではないかと、自室にいるにも関わらず周囲を思わず見渡してしまった。

僕の願いが君に届いたような気がして嬉しかった。


配信が始まると、一目散にコメントをしようと思った。

が。いざコメントしようとすると、どうやって話しかければいいかわからなくなってしまった。


ましてや、さっきも冒頭までしか聞けていなかったので、話の内容がわからなかった。

またコメントし倦ねていると、他のリスナーたちとまた楽しそうに話し始めている。

このまま聞くだけに専念していても良いのだが、やはり会話してみたいという思いが募っていく。


まるで僕抜きで話が進んでいるように感じて、他のリスナーと会話して君の楽しそうな声が聞こえるのを僕は少しずるいと感じた。


程なくして、他のリスナーとの好きな食べ物の話題の途中で君が


「みんなは何が好きなの?」


と質問を投げかけた。


(これはコメントするチャンスだ!!)


YoU オムらいす、!


焦りすぎて少し誤字ってしまったが、ついに初コメントをすることができた。

すると君がこのコメントに反応してくれた。


「オムライスか。私も好きだよ!美味しいよね!」


そう言ってくれた。

僕の初コメントに反応してくれたと同時に即座に反応してくれてまるで実際に会話している気分になる。


これは楽しいぞ

最近はVtuberとかが、流行っている理由が分かった気がした。


YoU オムライスいいですよね!!


すぐさま間髪入れずに、コメントを送り返す。

こんな感じで、会話が成り立って行くのか。

ネットに今まで興味がなかった僕にとって、新しいトビラが開いたように感じた。

実際に相対さなくても、間接的に会話を重ねていくネットでのやり取りができるようになったこの時代に感謝した。


この後もコメントして、そのたび君は反応してくれて舞い上がって、ついコメントしてしまう。


そんなことを繰り返していたら、あっという間に終了時刻に近づいていた。

すると君が


「あーー、もう終わっちゃうね。悲しいな。

みんな、今日も楽しかったありがとう!!」

「でもまた今度すぐやるからその時もよかったら来てねー!」


と言っていた。


(君も楽しんでくれたのかな?次もやってくれるのか嬉しいな)


そう思っていると、あくびがフワワとでた。

机のデジタル時計を見ると、午後11:05だった。


(もうこんな時間なのか!楽しすぎて全然気づかなかった。夜遅いけどまだ終わってほしくないな。)


この楽しい時間がこのまま続けば良いのにと思ったが、時間は刻々と過ぎて行った。


「じゃあ、またね。みんなおやすみなさい。」


そう君は言うと、配信は終了した。

僕は名残惜しい気持ちもありながら、人生初コメントを送り、

さらには会話ができたことの嬉しさもありつつ、ネットでの交流の経験ができたことの楽しさなど

何もかも初めての体験だった。

僕は色々な感情が入り乱れていた。


なかなか興奮冷めやらない中、深呼吸をして少し心を落ち着かせ、寝床についた。


(今日は楽しかったなぁ、ホントにすぐ隣で話してるみたいな感覚になる

不思議だ。)


などと思い返していた。


「今日はよく眠れそう」


そう呟くと、瞼が重くなって気づかぬうちに眠りに落ちていた。

ご閲覧頂き誠にありがとうございました。

今後、主人公である僕のユーザーネームはYoUになります。また本名はあきらです。

つきましては主人公がネット上でコメントする際はYoU表記になります。


こんなにSNSやったことないやついるかとお思いの方もいるかもしれませんが

陽は野球一筋で今まであまりネットコンテンツに触れてない設定なのです。(それが良いことなのか悪いことなのかは難しいところですね。)

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