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嘘と約束の鎮魂歌  作者: 心音
涼香の章
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第140話『灼熱のビーチバレー ②』


「──さて、運命のチーム分けの結果はこうだね」


 友樹チーム

 ・友樹

 ・愛桜

 ・瑠璃


 和也チーム

 ・和也

 ・涼香

 ・結羽


 いい感じに戦力が分かれているし、和也と涼香が同じチームになってくれたおかげで二人の関係を進めるきっかけを作ることは出来るかもしれない。

 とはいえ、涼香の好意は依存。それを恋愛感情に変えるのは骨が折れるだろう、何より依存の対象が和也だけではなく俺が含まれているのも厄介な点だ。


「──友樹くん」


 他のみんなには聞こえないくらいの声で愛桜が耳打ちをしてくる。俺はなるべく自然な形で愛桜に近寄って耳を傾けた。


「和也くんに花を持たせてあげたい気持ちはあるんですけど、多分それじゃあ涼香ちゃんの心には響かないですよね? 何か考えているんですか?」


「何も」


 正直に答えると、愛桜は怪訝そうに眉を顰める。


「即答ですか。折角のチャンスを無下にする友樹くんではないと思っていたんですけど」


「距離は十分に縮まっているからね。涼香と和也の件について大切なのは──」


「距離? 勘違いしていますよ友樹くん。私が言いたいのは、依存を恋愛感情に変える手段です」


「……流石だね。気づいていたんだ」


「私ですからね」


「……それもそうか」


 その一言で納得が出来てしまう。

 何度でも言おう。星ノ宮愛桜を舐めてはいけない。


「とは言っても気づいたのはつい最近です。私が気づいていることに、涼香ちゃんとずっと昔から一緒にいた友樹くんが気づいていないはずがない」


 声のトーンがいつもよりも低い。ほんの少しだけだが愛桜は怒っているようだった。


「結羽ちゃんと瑠璃ちゃんにはどうして話さないんです? 友樹くんと和也くんの二人で解決しようとしているのであればさておき、私たちにも協力を仰いだ以上必要不可欠な情報だと私は思うんですけど」


 けど、今の愛桜を見ても誰も怒っているとは思わないだろう。

 何故なら、傍から見ればただただ会話を楽しんでいるようにしか見えないくらいの笑顔を愛桜は浮かべているからだ。


「確かに愛桜の言う通りだと思う」


 だから俺もそれに合わせる。話の内容とは真逆の笑顔のままで会話を続けた。


「話さなかったのは悪いとは思うけど、必要に応じて話すつもりではいたよ」


「そうですか。ならいいです。まぁでも、すぐに話さない理由は分かります。依存って人によっては忌み嫌うものですからね」


「俺は気にしないけどね。別に悪いことじゃないし」


「私もそこまで気にはしません。他人に迷惑をかける程じゃなければご自由にどうぞって感じです。それよりも──」


 何かを言いかけたその瞬間、俺と愛桜の目の前を藍色の影が過ぎる。


「──友樹さん、愛桜さん。作戦会議をしているのなら、私も混ぜてもらってもいいこと?」


 間に割り込んできたのはほんの少しだけ不機嫌そうな瑠璃。

 涼香のことを話していたのは聞こえていない様子。愛桜の言葉の続きが気になったが、必然的に会話は打ち切られる。


「ちょうど瑠璃ちゃんも呼ぼうと思っていたところですっ! 全力で勝利を掴みにいきましょう!」


 切り替えのスピードが早い。一瞬前までの不機嫌さは綺麗さっぱり霧散していた。


「作戦は至って単純に高得点を獲得していこうと思います」


「愛桜か瑠璃をアタッカーにするってことだね」


 3点をとにかく狙っていくスタイル。俺は逆に結羽たちのスパイクを全力で止めに掛かればいいだろう。そう思ったのだが、愛桜は首を横に振る。


「いいえ。私たちは5点を狙いに行くスタイルにしようと思います。向こうには涼香ちゃんが居ますからね。守りは苦手なはずです」


「それなら尚のこと私たちは攻めるべきでは?」


「涼香ちゃんの体力面を考慮すると向こうは短期決着を望むはずです。守りよりガンガン攻める結羽ちゃんがメインとなって立ち回ってくる。私たちは守りに徹して体力を減らす。そして後半に攻めれば問題ないです」


「うん。そうだね。じゃあ愛桜の作戦でいこう」


「後は結羽さん達の動きに合わせて臨機応変に動けばいいですわね」


「その通りですっ! 頑張りましょうね、友樹くん! 瑠璃ちゃん!」


 言いながら愛桜は握り拳を俺たちの前に突き出す。俺と瑠璃も愛桜に合わせて拳を突き出し、勝利を祈ってぶつけ合った。



to be continued

次回の更新は『2/21 21時』です。

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