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嘘と約束の鎮魂歌  作者: 心音
涼香の章
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第123話『協力関係』


「──という訳でみんな、和也の恋を叶える手伝いをして欲しいんだ」


 フラワーガーデンでの和也との会話のあと、みんなの待つ部屋に戻った俺はドアを開けると同時に開口一番そう告げた。


「ぶふぅ!? げほ、ごほっ!!」


 あまりにも唐突で突拍子もない俺の発言に、紅茶を飲んでいた瑠璃は盛大に霧吹きをした後にむせ始める。


「いや、ともちん? いきなり何言ってんのさ?」


 少し前までの不穏な空気はどこにいったの? と言わんばかりに大量の疑問符を頭に浮かべている結羽。そして愛桜に至っては好奇心が爆発しているらしく、テーブルから前屈みに身を乗り出して『詳しく詳しく』と顔をキラキラとさせていた。


「おーいおいおいおい!? 友樹!? お前一体何考えてんの!?」


「え? 和也の恋を成就させようとしているんだけど」


 真面目に答えると、和也は『いやいやいや』と言いながら全力で手を振った。


「あのちょっと感動的な場面は何だったんだよ!? 完全に俺と友樹でどうにかする流れじゃなかった!?」


「協力するとは言ったけど、俺一人で協力するなんて一言も言っていないよ」


「屁理屈だろ!? 何の相談も無しに公言するやつがいるか!?」


「俺は気にしない」


「俺が気にするんだわ!! 当事者を置いてけぼりにするんじゃねーよ!?」


 ぜぇぜぇとツッコミの連続で荒い息を吐く和也。そろそろ周りが──愛桜を除く二人が話についていけていない様子。場も盛り上がってきたところだし、一度ちゃんと説明をするべきだろうと俺は思考を切り替える。


「和也。確かにこの問題は俺たち幼馴染の間で解決するべき案件かもしれない。でも、ここにいる皆は頼もしい味方だと思わないかな? 一人より二人。二人よりもみんな。そう思わない?」


「……はぁ」


 そんな俺の言葉に和也は諦めたようにため息を吐く。

 しかし、その目にはみんなに告げようという意思が見えている──


「──げほっ、ごほっ!! がハッ」


 ──が、瑠璃が未だにむせ返ったままでいるせいで、折角俺の言葉で和也が決心したというのに台無しだった。


「……せめてもうちょっとお嬢様らしく咳き込んだらどうかな」


「誰の……! ごほッ、せいだと思っているんでゲホッ!」


「でゲホッは草」


「笑わせるためにやっているんじゃないんですの!!」


「はいはい、とりあえずるりりんは落ち着こう」


 見兼ねた結羽が瑠璃の背中を摩り始める。恨めしげに俺を睨みつける瑠璃から目を逸らすと、新しいおもちゃを買って貰えた子どものようにキラキラとした眼差しを和也に向ける愛桜の姿があった。


「禁断の恋……和也くん、良いライバルでいましょうね」


「待て、お前は何を盛大に勘違いしているんだ。断じてそっち系の趣味はねぇよ?」


「ふふっ。緊張でカチカチになっている和也くんの為のお茶目なジョークですよ♪」


 なんというか、あんなことがあったのに愛桜は平常運転だった。

 これはもう和也が何を告げようとしているのか、持ち前の観察眼で見抜いているのだろう。いつも通りの愛桜で居てくれるのは助かるし、きっと喜んで力を貸してくれるはずだ。


「ええと……とりあえずみんな、何となく察しているかもしれないんだが、俺の話を聞いてくれないか?」


 そうして瑠璃が落ち着いたタイミングを見計らって和也は話を切り出した。

 俺を含め、みんなの視線が和也に集まる。大きく深呼吸をした和也はそのままずっと胸に秘めていた想いをみんなに告げた。


「俺は──涼香のことが好きだ」


 恋を叶える手伝いをして欲しいとわざわざ前置きをしたんだ。誰なのかというところまである程度予想はついていたのだろう。みんなの反応は大きなものではない。


「けど、ちょっと込み入った事情があって自分の気持ちを涼香に伝えられないでいるんだ」


「なるほど。とりあえず、和也くんの想いを涼香ちゃんに伝えるための手伝いを私たちにして欲しいってことですね」


「そういうことになる」


 分かりました。と、愛桜はにっこりと頷いた。そして笑顔のまま和也の瞳を見据える。


「ところで、その事情というのは教えてくれるんです?」


「必要になったら、だな。今はまだ言えない。それでもいいか?」


「構いません。誰にだって簡単には言えないことくらいありますからね。瑠璃ちゃんも結羽ちゃんも別に構いませんよね?」


 愛桜が同意を求めると瑠璃と結羽もすぐに頷いた。


「ありがとう、みんな。恩に着るぜ」


「いえいえ。友達の為ですから、ね?」


 そうして愛桜は俺にだけ見えるように軽くウインクをした。

 ライバルが減ってくれるのは歓迎です♪ とでも言いたいのだろう。


 何やともあれ、みんなの協力を得られることになったのは大きい。

 涼香の裏の顔を見せずに解決するのが一番ではあるが……それはきっと無理だろう。だから涼香の裏がバレた時にどう対応するか考えておくのが、俺の今一番の課題になる。


「まぁ、まだ夏は始まったばかりだ。ゆっくり焦らず対応していこうかな」



to be continued

次回の更新は『1/1 21時』です。

今年も一年ありがとうございました。

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