♥11♥
目覚めると私はベッドを綺麗に整え、ブラインドを開けた。外はまだ薄暗い。日が昇る前だ。
寝室の2つの鍵を開け、短い廊下を抜けて洗面所に向かう。寝間着を全て洗濯機に放りこむと、浴室に入り、暖かいシャワーを浴びた。全身を隅々まで清潔にし終えると、浴室を出て、ふかふかの白いバスタオルで水分を拭った。備えつけのクローゼットを開き、着替えをする。下着は全て同じ種類のものだ。上着とズボンは微妙に変えているが、ほぼ同じシルエットのものとなっている。
鏡の前で温かい湯を用いてカミソリとシェービングクリームでヒゲを剃った。歯を丁寧に磨き、今一度顔を洗うと、またタオルで顔を拭いた。
寝室に戻り、鍵のついたサイドテーブルの引き出しから大きな緑色をした革の手帳を取り出すと、ダイニングキッチンへ向かった
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、栓抜きで蓋を開け、テーブルの前に座った。中身を飲みながら、手帳をめくる。そこには幾つか注意するべきことが書かれてあり、成果と失敗があり、今日の予定があった。私は本棚から地図を取り出し、今日の目的地付近を確かめた。
私は部屋の窓という窓の鍵を確認し、ブラインドを下ろした。寝室の床下からパックパックを取り出して中身を一つ一つ確認する。
いつものようにすべての用意が済むと私は考えることをせずに習慣的なカオスな痕跡を残した。(わずかに玄関マットの位置をずらした)そのままコートかけにあった幾つかのモッズコートから一つを選び、それを身につけ、バックパックを背負うとドアを開け外に出た。
私の部屋は角部屋にあった。玄関を出て廊下に出ると誰もいなかった。早朝の静けさが辺りを覆っている。小鳥の囀りのすらも聞こえない。
空は未だ濃い群青色を保っていた。私はポケットに手を突っ込みながら足早に歩いた。エレベーターを通り過ぎ、ポケットから手を出して大回りで角を曲がり、階段を4階分降りた。地下駐車場で車庫を開け、車の周りを2度回った。1回目は上部、2回目は下部の確認だ。運転席のドアを開け、中へは入らずエンジンをかける。そのままたっぷり3分見守ってから、中に乗り込んだ。 助手席にバックパックを置き、サイドブレーキを下ろし、クラッチをあげてゆっくりと出発した。一度、ブレーキを試してみる。正常だった。それから私は、そのまま近所を1周してギアが全て正常であることを確かめ、出発した。